2025年4月26日土曜日

映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

2019年 監督:片渕須直
製作国:日本
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冒頭からなんかやばくて、駄菓子屋前でヨーヨーしている弟にそうそう上手上手って言っている姉でぐっときて、緻密で複雑な人々の動きからウイスパーボイスの歌声が聞こえてきたらもう涙腺崩壊しそうになった。

戦争映画かなとなんとなく思っていたけど、この時代を懸命に生きたすずさんという少女の物語だった。
広島が舞台で、呉への空襲、そして原爆、っていうのは確かに大きな要素ではあるのだけど、焦点はあくまでこの時代を生きているすずさんの物語。
すずさんはとてもほんわかした子で、心優しくそして働き者。
怒った姿なんて想像もできないくらい。
ちょっと聖人もしくは阿呆すぎやしないかという気もするが、それが物語が進むにつれ、ストレスで禿げができていたりとか、感情が爆発したりとか、人間らしい側面が見えてきてどんどん魅力的になっていく。

すずさんを演じたのはのん。まんまのんだった。
最初こそ違和感があったけど、だんだんと馴染んできて他の声では考えられなくなる。
感情高ぶったところのシーンとか凄い。

今少し見返すと本当どのシーン見てもぐっとくるものがある。
登場人物達はシンプルな顔立ちなのに物凄く表情が豊かで、所作の一つ一つも緻密で美しい。

なんか公開時よりシーンが追加された版みたいで168分あった。通常長い映画って耐え難いのだけどこれは終始面白かった。

2025年4月19日土曜日

映画『ルックバック』

2024年 監督:押山清高
製作国:日本
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その辺の映画より何倍も映画っぽく、かつ最高のアニメだった。
冒頭の4コマ描いている後ろ姿の細かさ。貧乏ゆすりや手鏡に映る横顔とか、細かい動き(変化)の全てが繊細に洗練されている。
そんな作画が最後まで続くから凄い。
雨の中藤野ちゃんが興奮して走っているシーンなんか名シーンすぎる。
走っている姿が基本的にどれもいいよな。京本ちゃんの走っているシーンとか二人で走っているシーンとか。
ドアという境界線を挟んでつながる時空。
喪失と再生の物語をこれほど完結に感動的に描いた作品ってそうそう無いと思う。

藤野ちゃんの声がよかったんだけど、河合優実だった。この子なんでもできるな。
京本ちゃんの声も女優さんで吉田美月喜という人。この人もすごかった。

2025年4月12日土曜日

映画『ある用務員』

2020年 監督:阪元裕吾
製作国:日本
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なかなか面白いアクション映画。
野間口徹が開始0秒で退場w
映画中盤には早々と物語が一区切りつく。
あとは漫画的なバトルアクションへ。

般若ってラッパーの人なんだね。
大げさな演技がうざいどころかうまい。
目ひん剥いた輩感が怖いんだけど、深見を説得する際の話術で知的な面も違和感なく見せているから凄いわ。
前半の主役は間違いなく般若だよね。
で、後半は前野朋哉が圧倒的な主人公感で一気に映画を乗っ取っていく。

主人公はたぶん福士誠治君演じる深見。
でもあまり存在感が無い。
アクションもだいぶスタント使っているように見えるし。
映画のキャラ的にも役者的にも食われまくっているのが少し残念。

準主役で芋生悠演じるJK真島唯とその幼馴染役の伊能昌幸がいる。
この二人のやり取りがなんかキモイ。
失礼な言い方すると、美男美女でやっても少しキモイやりとりがこの二人でやると。。
伊能君はなんか体鍛えていそうだけどカースト最下層にいそうなモブの風貌なのにくそでかいピアスつけていたりとそのアンパランスさが異様な雰囲気でもある。
伊能君は坂元監督の『最強殺し屋伝説国岡』では主演しているっぽい。
国岡の予告編見るとなんかかっこいいな。髪型が違うからか。

ラスト10分くらいは尺合わせなのだろうか。全く無駄な時間。。

『ベイビーわるきゅーれ』の二人もほぼそのまんまで登場。
ちさとの方はど素人設定かな。
ちさとはまひるについて何となく殺し屋になったみたいな話がどこかであったっけ。

2025年4月6日日曜日

映画『リバー、流れないでよ』

2023年 監督:山口淳太
製作国:日本
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SFほのぼのコメディ。タイムリープもの。
京都の貴船って所が舞台で、貴船の中でも大半が老舗料理旅“ふじや”の中(少し外)で完結する。
小川をスタート地点として2分毎に舞い戻るから同じことの繰り返しで飽きそうだけど、スタート地点からいろんなルートで老舗旅館の中と外を見せてくれてるので、同じことなのに小さく時に大きく変化するそのバリエーションが面白い。
しかも景色もループのたびに晴れていたり大雪だったりっていう変化も面白い。
「世界線がずれている」ってとってつけたような説明だけど、実際は撮影の都合で雪が降ったり止んだりしていたんだろうな。結果オーライ。

役者は近藤芳正と本上まなみ以外は初めて見る人たちだった。
主役の藤谷理子はなかなかのコメディエンヌぶり。特徴的な声が面白い。
脇役陣はなんかベテランの風格がある人たち。映画役者というよりかなり舞台役者よりな気がする。
そういえばストーリー的にも演技的にもこじんまりした範囲の舞台的にも、この映画は映画というより舞台っぽかったな。
ストーリーは人の生き死に要素は無い方がもっとほのぼのできた気がする。
ループの終了がめっちゃハードル高くなるじゃん。死んでるターンなら取り返しがつかないし。
ループのオチはちょっと微妙。造形もお遊戯のような。。

映画見た、って感じは全くしなかったがこういうのもたまにはいいか。

これ貴船の観光映画かなんかなのかと思って調べてみると、別にそういうわけではなさそうだった。
それより劇団ヨーロッパ企画っていう有名なところが手掛けた映画らしい。
ベテランの風格の舞台役者っぽかった脇役陣はやっぱりこのヨーロッパ企画の人たち。
あと、撮影は10年に一度の大寒波に見舞われたから雪が積もっていたりしたらしい。
主演の藤谷理子の経歴が面白くて、英国ロイヤルバレエなどに短期留学するくらいバレエに熱中した後に俳優になっている。