2025年5月31日土曜日

映画『愛なのに』

2021年 監督:城定秀夫
製作国:日本
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河合優実見たさに鑑賞。
これ城定監督なのかとびっくりするくらい今まで見た二作とテイストが違う。
脚本のせいなのかな、それにしても是枝監督並みの自然な日常会話の面白みが全面に出ていて思いのほか面白かった。

河合優実の役どころは30のおっさんに突然求婚するJKっていう役で、演じる子によってはただのやばい子になったりしそう。
いや、河合優実が演じてもやばい子に変わりはないんだけど、なんというか盲目な純粋さとかかわいらしさや芯の強さがさりげなく現れていて、やばいんだけど惹かれる、みたいな絶妙な感じになっている。
凄い子だわ。
セリフで面白いのは「(親なんて)関係あります?私たちに」。全国の親が泣く。恋に盲目な若者の発想なんだけどなんかみずみずしい。「私たち」の片割れがおっさんという異物なのも面白い。
というかこの映画はやばい人だらけだな。
なかでも一番やばいのは正雄君(丈太郎)で、若いとかそういうレベルの話じゃなくてサイコパスに近く人として壊れているw (不倫がましに思える)

「城定と今泉が互いに脚本を提供しあってR15+指定のラブストーリー映画を製作するコラボレーション企画「L/R15」の1本」らしい。
ということは脚本は今泉力哉か。

以下、少しネタバレ


「下手ですよね」のくだりのホテルでの亮介(中島歩)と美樹(向里祐香)の長回しの会話は日本映画史上に残るシーンだった。
会話も仕草も間も完璧で笑えるうえにゾっともする。群を抜いてw
亮介を演じた中島歩は面長のひょろっとした人で、登場時こそうさん臭さをまきちらしたただの脇役かと思ったんだけど、役どころは主役級の一人だった。
喋り方がDAIGOみたいで、それがうさん臭さに拍車をかけていたのに、段々とあの喋り方が癒しになってくる。なんか憎めない奴。
不倫中のプレイボーイ然としているのに「下手ですよね」は結構衝撃的。
一人の女性を想い続ける奥手風な多田(瀬戸康史)こそ、前戯もそこそこ&がん突きの下手の代名詞みたいな感じだったのに(映画の尺の都合もあるが)この逆転現象を誰が予想しようか。
あ、中島歩ってふてほどの安森先生か!

2025年5月24日土曜日

映画『キネマ純情』

2016年 監督:井口昇
製作国:日本
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20数年前に『クルシメさん』を見たきりの井口映画でも見てみるかと適当に選んで再生。
冒頭1分でもう大混乱。
これは厳しいかもと思って挫折しかけたが、怖いのもの見たさで鑑賞を続けて最後まで観た。

廃部寸前の演劇部のJK達が、部員の姉のつてで女子大生ナオミが監督する自主映画に出演することになる。
で、ストーリーはキスは世界を救うみたいな話かな。
少女達の百合であり、唐突にホラーでもあり、ゾンビ映画でもあり、バイオレンスもあり、なコメディー。

ナオミ(中村朝佳)のいかにも芸術家気取りの凡才といった感じがよく出ていて面白いのだが、この目力強くてオーラのあるナオミが後半ではスカートめくられてイヤーンとか言っているのを誰が想像できるだろうか。
展開がぶっ飛びすぎていて、常人の発想じゃないw
自分でけしかけたバイト達をぶん殴っているのは笑った。
あとヨシエが「やっぱ嫌いやこいつ」とアカリをはたくシーンは効果音もあって笑える。

自主映画に初めて参加する際の劇中劇への移行の仕方は上手い。普通に騙されたし。

アカリ役 荒川実里
ヨシエ役 洪潤梨
ケイコ役 上埜すみれ
アキ役  柳杏奈
ナオミ役 中村朝佳

我々はクラスの半分以上が美少女という異常な空間が平然と提示される映画に慣れすぎたのかもしれない。
この映画の登場人物達は中心人物含めてなんと普通なんだろう、というか普通より、、
どの子も個性的というかインパクトのある子達で、それがだんだんとクセになってくる。
上埜すみれが結構いい。客観的に見てたぶん一番かわいくないのだが、コメディエンヌとして見ると一番魅力的。
ヨシエとナオミの最後のシーンなんかよくこの脚本でそこまで感情のせて演技できるなと感心する。

この5人のノーメイクスという名前のアイドル、実際に存在して4年間ほどアイドル活動していたらしい。
「埋もれている才能を持った若手女優を発掘し、映画の主演をさせて少しでも運命を変えさせたい」
ってことで井口昇プロデュースで集められた5人らしい。
たぶんノーメイクスの結成がこの映画より先なのかな。
つまりこの映画は紛れもないアイドル映画だったのか!ちょっと衝撃。
それにしてもラストそんな狭いところで躍らすなよっていうセンスw
はい敬礼!
冒頭の衝撃にも関わらず、最後にはこの5人が好きになっているという

2025年5月18日日曜日

映画『新・少林寺伝説』

1994年 監督:バリー・ウォン
製作国:香港
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洪家拳の始祖洪熙官による子連れ狼。
リー・リンチェイ主演。ヒロインチンミー・ヤウ。

なかなかいろいろとぶっ飛んでいて楽しい。
特に人形の使い方が何かを諦めているかのよう。
冒頭の襲われた村の悲惨なシーンに続く、火櫓に遺体を放り投げるシーンなんか吹き出してしまった。
もう人形なんて隠す気もなくて、重さが一切ない人形が回転しながらスポーンと火に飛び込んでいく様はギャグ以外の何物でもない。
背負った赤子の人形が気になりすぎて戦闘シーンより注視してしまったりw
酸のプールの上につるされているシーンなんかは人形というかもはやただの布切れだったw

死体(と思われている)のおばちゃんの上に平気で腰掛けたり壁に投げつけたりサバ折りしたり、子供たちは自由だなぁ。

毘沙門天像みたいな止めポーズがいちいちかっこいい。
マンティン君もちゃんとカンフーやっていて凄いわ。今どうしてるんだろう。

2025年5月10日土曜日

映画『シャイニング』

1980年 監督:スタンリー・キューブリック
製作国:イギリス
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ステディカムで有名というくらいしか知らなくて、サスペンスかなと思っていたらホラーだった。
しっかしまあ怖い。私がホラー映画に耐性があまりないとか関係なしに終始怖い。映像だったり音楽だったり意味の分からないストーリーとか映像の違和感とか一つ一つが全部怖い。
ホラー映画にありがちな、突然現れるとかどぎつい効果音でびびらせるとかそういうのが全く無く、ひたひたと静かに恐怖を積み重ねる感じ。すごく上品。映像美が凄いからできる芸当。

山間の道路を走る車の様々な角度からの荘厳な空撮で始まる。
タイトルクレジットが邪魔に思えるくらい荘厳。
音楽は幻想交響曲のあのチューバのメロディ。なんだけどどうも幻想交響曲ではない感じ。
調べるとシャイニングのテーマってなっている。えっ?
グレゴリオ聖歌「怒りの日」を編曲したものらしく、幻想交響曲のあのメロディも「怒りの日」の引用らしい。知らんかった。。

撮りたい映像や撮りたい音があってそこに脚本が付いてくるのか、それとも逆か、っていうのを冒頭の空撮やダニーの三輪車のシーン、血の洪水の美しいしぶきとか見ていて思った。

原作はスティーヴン・キングで、原作を改変しまくっているからキングはこの映画版が大嫌いだそうな。
ジャックはアル中で癇癪持ちっていう設定があったのか。
映画見ているとジャックが狂った理由ははっきりと分からないのだが(分からなくても別にいい)、小説だとその辺の説明がしっかりされている様子。
映画と小説では登場人物たちの人物造形が全く異なり、ラストも全然違うらしい。
近年の漫画のドラマ化時の改変とかかわいく見えてくる。

144分くらいの長い版もあるらしい。

有名な映画だから考察している人もたくさんいて、ネットで少し調べるとまあよくそんなん気づいたなっていう話がぽろぽろ出てきてそれはそれで面白い。