2012年11月18日日曜日

映画『オレンジと太陽』

2010年 監督:ジム・ローチ
製作国:イギリス
at ギンレイホール




1986年イギリスのノッティンガムで、ソーシャルワーカーのマーガレット(エミリー・ワトソン)は、ある女性から母親探しを依頼される。
女性の話では、自分は4歳の頃他の子供たちと一緒にオーストラリアに連れてこられたと。
子供たちだけで渡航するなどありえないと不審がるマーガレットだったが、後日似たような境遇の話を別の人間から聞いたことで本格的に調査を始める。
調べていくと、オーストラリアへの強制児童移民は、イギリス、オーストラリアの両国が国家レベルで関与していた事件だった。

実話らしい。
1970年までの間にオーストラリアに渡った子供の数は13万人というから驚きだ。
公式ページによると
「撮影中の2009年にオーストラリア首相が、2010年にはイギリス首相が、<児童移民>の事実を認め正式に謝罪」しているらしい。

映画の方は、サスペンス風ではあるけど、どちらかというと人間ドラマになっている。
主人公が被害者じゃなくて、スタート地点は事件と全く関わり合いの無かったソーシャルワーカーっていうところが話をこれ見よがしに重くさせずに済ませている。

監督ジム・ローチ。
名前から想像できるようにケン・ローチの息子。

エミリー・ワトソンはおばさんになったなぁ。

映画『少年と自転車』

2011年 監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ,リュック・ダルデンヌ
製作国:ベルギー/フランス/イタリア
at ギンレイホール




もうすぐ12歳になる少年シリル(トマス・ドレ)は、唯一の肉親である父親(ジェレミー・レニエ)により施設に預けられる。
シリルはいつか父親が迎えに来るはずだと信じているが、父親はもうシリルを捨てた気でいて、行方不明になる。
施設を抜け出し父親を探す途中でつながりのできた女性サマンサ(セシル・ドゥ・フランス)に週末だけの里親を頼むことで、施設を抜け出さなくても父親探しをできるようになったシリルだが、見つけた父親は。。

愛情と居場所を求めてせわしなく自転車を漕ぐシリルと、いつのまにかこんな大きな少年に母性を発揮して恋人より大事になってしまうサマンサの姿が淡々と描かれる。
監督は『息子のまなざし』を撮ったダルデンヌ兄弟か。
確かにラストの方、ああ、この展開はやばい、と信じ込ませておいて、しれっとすかしていくやり方はこの兄弟っぽい。

話の題材はよくある話だけど、お互い切れやすい糸での繋がりを頼りに綱の上を歩いているような危うい関係性の緊張感がなかなか面白かった。

2012年11月4日日曜日

映画『屋根裏部屋のマリアたち』

2010年 監督:フィリップ・ル・ゲ
製作国:フランス
at ギンレイホール




1960年代のパリ。
証券会社を経営する資産家のジャン=ルイ(ファブリス・ルキーニ)の家には、先代から仕えるフランス人メイドがいたが、妻のシュザンヌ(サンドリーヌ・キベルラン)に反発して辞めてしまう。
新たにやってきたのは若く美しいスペイン人マリア(ナタリア・ベルベケ)。
ただの主人とメイドという関係だったが、アパルトマンの屋根裏で共同生活を営むマリアを含めたたくさんのメイド達の生活に、ジャン=ルイは次第に興味を抱いていく。
興味というかちょっと親切にしたらえらく喜ばれて神のように扱われて有頂天になったという感じ。

やがてジャン=ルイはマリアに恋するようになるのだが、ただのメイドを見る視線が劇的に変化する瞬間がある。
それはバスルームでシャワーをあびるマリアを偶然覗き見してしまう瞬間。
肉感的で抜群のプロポーションをしたマリアの後姿を覗き見て何も感じない男はいない。
理性ではメイドに対してそんな思いを抱いてはいけないと思いつつも、心は完全にこの瞬間にマリアに向いた。
男の恋愛なんてほとんどが性欲ありきだ。
特定の女性によって性欲を大きく刺激させられたら簡単に恋してしまう。
しかも覗き見ってところがまたいいよね。
いや、別に僕に覗き趣味があるわけじゃなくて、映画自体覗き見みたいなもんだから映画的だっていう。。

既婚者が別の女性に惹かれていくっていうのは大抵妻役が嫌な女だけど、妻のシュザンヌはそんなに嫌な人ではない。
えせブルジョワ風で高慢に見えるところもあるけど、1960年代っていう時代柄では性格の良し悪し以前に普通の価値観なのだろう。
純朴な少女のような心を持った田舎娘なのにねぇ。
ただ長いマッチ棒のような女性より肉感的な美女の方がいいよなぁってだけで捨てられたら可哀想でもある。

主演はファブリス・ルキーニ。
今、最も好きな俳優。
役にもぴったり。
この人は優しいのか冷たいのか、無表情なのか表情豊かなのか、変態なのか真人間なのかよくわからない不思議な魅力がある。
「冷たさと優しさを同時に湛えた読めないあの瞳に引き込まれていく」
っていう先日樹木希林について書いた言葉がそのまま当てはまりそうだ。
ということはファブリス・ルキーニはフランスの樹木希林と呼んでもいいかもしれない。
いや、役者としてはファブリス・ルキーニの方がすきだから樹木希林が日本のファブリス・ルキーニかな。

映画『ミッドナイト・イン・パリ』

2011年 監督:ウディ・アレン
製作国:スペイン/アメリカ
at ギンレイホール




ウディ・アレンの中で歴代最高のヒット作だったらしい。

脚本家のギル(オーウェン・ウィルソン)は婚約者のイネズ(レイチェル・マクアダムス)とパリにやってくる。
パリに多大な憧れを抱いているギルは、ひょんなことから毎夜華の1920年代にタイムスリップできるようになる。
フィッツジェラルド夫妻、ヘミングウェイ、ピカソ、ダリ、ガートルード・スタイン等々、伝説の人物と知り合いになり、そしてピカソの愛人アドリアナと惹かれあっていく。

ウディ・アレンの映画の登場人物というと、夢見がちで駄々っ子のような幼児性、孤独に対する尋常じゃない恐怖心を振り払うかのようにどもりながらまくし立てる言葉、等が思い浮かぶけど、そういうキャラクターが一番合う土地はやっぱりニューヨークなんだなと思う。
他の土地だとせせこましさだけが浮かび上がってくるような印象がある。

ストーリーは単純明快で面白かった。
過去に憧れても、その過去はさらに過去に憧れている。
現代には現代のよさがあるんだから、過去を見るのもいいけどもっと現代も見ようよ、っていう。

主演はウェス・アンダーソン作品や『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』でお馴染みのオーウェン・ウィルソン。
ギルの婚約者役イネズは、アラーキーが「魅惑のレイチェル・マクアダムス、抱きたい。」と言ったレイチェル・マクアダムス。
大人になったな。あれっ、同い年だった。
アドリアナ役は『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』のマリオン・コティヤール。
他、キャシー・ベイツやエイドリアン・ブロディも出ている。
エイドリアン・ブロディは口髭がついていたからか全然気づかなかった。