2015年 監督:橋口亮輔
製作国:日本
at ギンレイホール
これは、名作すぎる。
特にある登場人物がうんこ座りでたばこふかしながら野ションして、たばこの火をおもむろに地面に持っていって消した「ジュッ」っていう音でこの映画は僕の中で殿堂入りした。
過去の傷を引きずったり、家庭に縛られて鬱屈していったり、と悩みをかかえながら毎日を生きる人たちの群像劇。
もう、なんというか日常的すぎるというか、リアルすぎるというか、そのリアルってやつがリアルっぽいどころか嫌悪感まで抱きそうなほどの真に迫ったリアルで、他の映画がすべて上辺を綺麗に取り繕った偽者にすら思えてくる。
予告編にもあるけど、常にいらいらして高圧的に当り散らす弁当屋のおかみとかさ。
このおかみは物語の最初の方にしか出てこないくせにここで一気に引き込むよね。
おかみだけじゃなくてそれをにこにこなだめる夫、そしておかみに理不尽にどなられる業者の男なんかもリアルすぎて怖い。
この業者の男藤田(光石研)は愚鈍そうな人物として登場したくせにかなりのアウトローだったりする。
主要な話の軸は主に二つで、一つは通り魔に妻を殺された男篠塚(篠原篤)を中心とした話。
橋梁点検をする職に付いているが、いまだに立ち直れずに日々を生きている。
生活は厳しく健康保険もろくに払えない。
医者の高圧的な一言「払いなさいよ」。こんな口の利き方する医者がいたらぶんなぐりそうになるよな。
もう一つは夫と姑の3人で暮らす主婦の高橋(成嶋瞳子)を中心とした話。
もう台所のごちゃっとした雰囲気(決して汚いわけじゃない)に嫌悪感を抱いてしまったが、そんなもんは序の口。
この高橋という役柄とそれを演じた成嶋瞳子がとにかく凄い。
いい具合の不細工加減からにじみ出る熟して朽ちかけはじめそうな体臭がこちらまで漂ってきそうだ。
(あれっ、ほめているつもりが恐ろしい悪口になっている気がする・・)
家庭的で夫に尽くし、小説や漫画を書くささやかな趣味を持ち、騙されやすく人のいい、乙女のような心を持った主婦。
にわとりを捕まえようと藤田と一緒にきゃっきゃきゃっきゃやっている様子とか、敬語の使いっぷりとか、凄まじいまでの攻撃力だ。
この二つの他には弁護士四ノ宮(池田良)を中心とした話もある。
この細身で情の薄そうな四ノ宮が、見た目どおりの嫌なやつなんだな。
こんな嫌な奴だけどこいつもまた偏見からくる理不尽に打ちのめされる。
生きるのはつらいね。
脇役でいえば黒田大輔演じるその名も黒田大輔が印象深い。
「あなたともっと話したいと思うよ」
隻腕という役柄。
保険課の職員を演じた山中崇も嫌な感じ。
そういえばこの職員が出てくるシーンで
「それじゃああなたの胸先三寸で決まるということですか?」
「そうです」
みたいな篠塚とのやりとりがあって、篠塚って一応学が無い設定だから胸先三寸っていう誤用を使っているのかと思いながらもそもそも学が無いのであればこの言葉すら知らないんじゃないかとも思うし、そういうさじ加減がなんか絶妙だなと思う。
篠塚の会社の後輩も強烈だった。
「っすよ」という敬語の使い方をするけどちゃらい系じゃない短髪の小男で、いかにもお調子ものといった感じ。
こういう後輩苦手だわ~。
2016年3月27日日曜日
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