2017年5月21日日曜日

映画『湯を沸かすほどの熱い愛 』

2016年 監督:中野量太
製作国:日本
at ギンレイホール




母っていうモチーフがこれでもかと出てくるのと、途中ロードムービーっぽいところとか、日本版『オール・アバウト・マイ・マザー』だ!って言いたい。
ああ、それで言いたいこと言い尽くした感が。。

最近映画見て泣いた記憶が無いし、感動物で泣いた記憶なんかさらに無いのだけど、病院のベッドでの宮沢りえの表情とそれを見た杉咲花のクシャッとした顔見たら号泣するしかない。

肝っ玉母さん幸野双葉役に宮沢りえ。
母親役?肝っ玉母さん??と思うが、凛とした肝っ玉母さんが非常にかっこいい。

娘役に杉咲花。
この子朝ドラ見ていたときは細身色白なイメージだったけど、色黒でむっちりしていたんだな。
というのは置いておいて、この子本当凄いわ。
演技の自然さ、表現力、存在感、この歳でもうトップクラスの女優さんになっている。

りりィが少し出ていた。

これが監督の商業デビュー作らしい。
『オール・アバウト・マイ・マザー』には敵わないながらもかなり面白かった。

映画『永い言い訳』

2016年 監督:西川美和
製作国:日本
at ギンレイホール




小説家衣笠幸夫(本木雅弘)の妻(深津絵里)がバスの事故で亡くなった。
亡くなった日、幸夫は不倫相手(黒木華)と一夜を過ごしていた。
妻と同時に亡くなった妻の親友の夫、大宮陽一(竹原ピストル)と連絡を取り合うようになり、その後大宮の二人の子供の面倒を見るようになる幸夫。
そんなお話。

初めから夫婦仲は壊れかけていたので、妻が亡くなった悲しみから前を向き始める物語とかじゃない。
妻が死んだ。
これっぽっちも泣けなかった。
そこから愛しはじめた。
だからね。

人物造形も演出もいやらしいんだな。
まず幸夫。
小説家としては落ち目にいるが、甘いマスクでテレビにも多数出演している人気者。
自分大好きで子供なんかいても邪魔だから意図的に作らなかった。
傲慢、不遜でいい顔しいのナルシスト。
子どもたちの面倒を見ることに生きがいと居場所を見出していき、少し変わっていくようにも見えるが、自分が子どもたちに頼られている(好かれている)という自負からか、傲慢な面をまだまだ覗かせたりもする。
いくら入りこんだところで所詮他人、そんな悦に浸る幸夫に対して辛辣なシーンも用意されている。
そしてなにより幸夫の職業が小説家という設定のいやらしさ。
なにもかも小説のネタ作りという冷めた面があるのではないかと勘ぐってしまう。
幸夫の人物像で重要なポイントが実は冒頭の夫婦の何気ない会話に潜んでいるというのもいやらしい。
ナルシストだけど彼は自分がとにかく嫌いなんだね。それは名前に始まり、小説家として芽が出るまで妻に養われていたという恥、自分の心の弱さ、etc..
悩みを打ち明ける友人もいない。
仮面をかぶり続けた幸夫が全てをさらけ出すのに小説家という職業はうってつけでもある。

大宮陽一。
頭は良くないが人懐っこく感情豊かな長距離トラック運転手。
幸夫と全く正反対の性格。是枝監督の『そして父になる』みたいだ。
いかつい陽一がいつ幸夫にブチ切れるのかとそわそわする。
演出も無駄に間を置いて怖がらせるからいやらしい。

竹原ピストルもそうだけど配役がこれでもかというくらいぴったりなんだよね。

愛人役の黒木華。
もう黒木華ってだけでいやらしい。
エロいって意味じゃなくて、黒木華ってなんか怖いじゃん。
つぶらな瞳の奥に底知れぬ闇がありそうというか。
愛人がホテルじゃなくて恋人宅できゃっきゃうふふしているのは恐怖だよ。

マネージャー役の池松壮亮。
もう池松壮亮ってだけでいやらしい。
この人は悪人とか嫌な奴やらせたらピカ一だと思う。
この役はそんなに嫌な奴じゃないけど、カフェでおもむろにタバコを吸うシーンの不遜さはさすが池松壮亮だと思った。

他、
妻役に深津絵里。あまり出番はないけど存在感が凄い。
学芸員役に山田真歩。吃音症設定により幸夫と陽一の性格が浮かび上がる。
編集者役の人見たことあると思ったらキス我慢に出ていた岩井秀人だった。





2017年5月7日日曜日

映画『ブルーに生まれついて』

2015年 監督:ロバート・バドロー
製作国:アメリカ/カナダ/イギリス
at ギンレイホール




チェット・ベイカーを扱った映画で、イーサン・ホークが演じている。
歌はイーサン・ホークが実際に歌っているらしい。
伝記なのかなと思ったけど、恋人役のジェーン(カーメン・イジョゴ)なる女性は実際にはいなかったらしいので、多くのフィクション部分と伝記部分が混在している模様。
男の哀愁を漂わせて、わがままな奴だけど弱くてどこか憎めない。
なかなか面白かった。

実際のチェット・ベイカーはもっと悪魔的な男らしい。
チェット・ベイカーの唯一の自伝本『終わりなき闇』は鬱になりそうなくらい面白いらしいので読んでみたいな。

映画『ジュリエッタ』

2016年 監督:ペドロ・アルモドバル
製作国:スペイン
at ギンレイホール




アルモドバルの母物ということで期待しすぎていた面もあるけど、なかなか面白かった。
手紙を受け取った時の想いで息の詰まりそうな演技には泣きそうになったし。

結構小道具を散りばめていて、後になってからああそれってそうなんだと気付くところがある。
引っ越し準備中に包んだ変なオブジェにはそういう複雑な思い出があったのかとか、若者が3on3やっているすぐ側のベンチに座ったときはそこに普通座るかよ!って思ったけどその場所は実は、みたいな。
あと入れ墨とかね。
話自体はシンプルに多くを語らず展開するから細かい部分でよくわからないところはあるけれど、小道具等の演出や映像が重層的で見応えはかなりある。

そういえば瞑想の合宿所にいたおばさんに凄い嫌悪感を持ったのは何なんだろう。
あの余裕のある泰然とした雰囲気が逃避に基づくからか、もしくはお前人様の子に何してんだよ何様だよという怒りか。

主人公の若い頃役の女優さんアドリアーナ・ウガルテが綺麗だった。