2007年10月28日日曜日

映画『フランシスコの2人の息子』

2005年 監督:ブレノ・シウヴェイラ
at ギンレイホール


フランシスコの2人の息子

これも南米映画で今度はブラジル。
実話に基づく、と冒頭で紹介される。
リリースしたアルバムの総売上が2200万枚を超えるらしいブラジルの国民的アーティスト、ゼゼ・ジ・カマルゴ&ルシアーノの実話。
ブラジルの田舎に7人の子供を持つ大家族がいた。
いかしたおやじは農作物の全てをはたいて長男と次男にアコーディオンとギターを与えた。
特に誰のレッスンを受けるでもなく、気づいたらそれなりに弾けるようになっている二人。
貧しいが明るい家庭もついに借家を追い出され、州都に引っ越すことになる。
都会ではもっと厳しい現実が待っていた。

家族の物語だね。後半は駆け足でいまいちだが。
本物のゼゼの声がかなりいい。

映画『ボンボン』

2004年 監督:カルロス・ソリン
at ギンレイホール


ボンボン

アルゼンチン映画。
失業中の60前のおっさんは手作りのナイフを売り歩く。
手間がかかっている分高い。ので売れない。
安定した収入もないので娘の家にやっかいになっているが、娘の家庭も裕福でなく邪魔者扱い。
いつも悲しい笑みを浮かべたおっさんだが、ひょんなことからドゴという犬種の犬を貰い受ける。
犬なんか飼えないと家まで追い出されてふんだりけったりだが、この犬のおかげで新たな道が開けていく。

ドゴっていう犬はいかつい口しているのだけど目がかわいらしい。
マスティフとブルドッグとブルテリア等の交配らしい。
ボンボンと名づけられたこのドゴによって、おっさんは普段話したこともない階級の人と話したり、今までまったく縁のなかった人たちの集まりに参加したり、大会に出場したりなどなど新鮮な体験が続いていく。
幸せを呼ぶ犬。
だけどしれっとして愛らしい顔したボンボンにも人に言えない悩みがあった。ってところが面白い。

出演者はほとんど素人で、主演のおっさんは監督の製作会社の近くにある駐車場で働いているおっさんらしい。

2007年10月27日土曜日

映画『モンゴリアン・ピンポン』

2005年 監督:ニン・ハオ
BS2 録画




毎年NHKアジア・フィルム・フェスティバルが開催されるころにBS2で過去の作品が放映される。
これは第7回の作品。

中国の内モンゴル自治区で、少年ビリグは川から流れてくる不思議な白い玉を見つける。
ピンポン球なんだけど、卓球なんて知らない子供たちはこの白い玉に豊かな想像力を働かせる。
ある日、その白い玉が卓球という国技の球であることを知った少年たちは、「国の宝」を返そうと北京に向かう・・・
北京に向かう、っていってもそれはこの映画の中での1エピソードにすぎないのだけどね。
北京へのエピソードのあとが面白くて、ラストは泣ける。

広大すぎる草原で全てが一望できるところ、フレームの中と外を巧みに制御してシュールな笑いを見せてくれる。
大人や子供たちの無表情に見つめる視線が笑えたり愛らしかったり悲しかったり。
久しぶりに映画を見た気分。

2007年10月13日土曜日

映画『サン・ジャックへの道』

2005年 監督:コリーヌ・セロー
at ギンレイホール


サン・ジャックへの道

母親の遺産の相続には条件があった。
兄妹そろってキリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラ(サン・ジャック)まで歩くこと。
大会社の社長で神経質で精神安定のための薬漬けの長男。
めちゃくちゃ毒を持ったリアリストの長女。
アル中で家族にも見放された一文無しの次男。
長男と長女は犬猿の仲。
兄と姉が喧嘩していても次男はただ酒を飲むための金をどうやって仕入れるかだけを考えていて我関せず。
とりあえず遺産を相続するためにツアーに参加。
そしてこのツアーには彼らだけではなく個性的な若者たちやいつもターバンを頭に巻いた物静かな女性などがいた。
ロードムービー。ウォークムービー?

テンションの緩急がうまくて最後まで楽しく見れる。
フランスからスペインへと続くこの巡礼路はひたすら美しい景観が続く。1500キロ。
この景観の中を体力の限りを尽くして点みたいな人間がぽつぽつ歩いているのがなんか楽しい。そしてエロティック。
開放的だからかね。
そういえば若い女の子が二人参加しているのだけど、これがどこにでもいるような普通の子なのね。
なのにこのマジックによって魅惑の匂いを放ちだすから不思議。

途中、ツアー参加者の夢が挿入されるのだけど、このあってもなくてもいいようなシーンに結構金かけているだろうCGを使っているのがお茶目で笑える。
監督は『女はみんな生きている』のコリーヌ・セロー。

映画『ボルベール <帰郷>』

2006年 監督:ペドロ・アルモドバル
at ギンレイホール


ボルベール<帰郷> コレクターズ・エディション


ああ、やばい。これやばい。
後半はもう涙ぼろぼろです。

命をひたすら輝かす女。母娘。
女に深い苦しみを与え業を負わせるだけのどうしようもないくずの男。
女は強い、とか女は元気だ、とかそんなことじゃない。
彼女らがその笑顔の裏に隠した苦しみと背負っているものの重さは男がどうこう言えるものじゃない。
だって男が負わせてるんだもん。
この映画にはほとんど男が出てこない。
女性達の強くて痛ましいこの生命の輝きの中に男が輝ける場所なんてありはしないし。
男ができることは女を苦しませるだけ。ってことを忠実に実行して映画から男たちは消えていくのであった。
面白いのはなにもすべての女性を輝かせてるってわけじゃないのね。
例えばアグスティーナが出演したテレビの女性司会者なんてくそでしょう。
まあ、いろいろいるもんです。

物語の方は実にたくみに展開する。
全てに伏線がしっかり張られている。
ミステリー?ファンタジー?
とも思うが、導き出されたり明かされた事実は全てが生々しい現実の重みとなり、張られた伏線は新たなイメージとして蘇ってそのまま人生を彩る重奏となる。
驚嘆です。