2008年2月24日日曜日

映画『若い川の流れ』

1959年 監督:田坂具隆
BS2 録画




とある会社の定時後の一風景。
机で新聞を読む曾根(石原裕次郎)に女子社員3人が寄ってくる。
女A「曾根さん、あなた女の子に付き合い悪いと評判がよくないわ」
女A「みんな誰かいい人がいるんじゃないかと言っているのよ」
曾根「とんでもない。僕はね。ただ、女の人と遊ぶのがどうも苦手なんですよ」
女B「女を差別カイゴ(?)するなんて古臭いわよ」
女B「あなた、心の中じゃすぐ sex にこだわるんでしょ」
どうも新しい時代の男女関係を描きたいらしい??
って・・・今でも会社で女性社員が「sex」とかふつーの会話の中で言わないっしょ。
1950年代の映画でいきなりそんなセリフが出てくるから結構びっくり。
惜しむらくはそのセリフを吐いたのがいやにおばさんくさい声した女性だったってことかな。
無名の女優に言わせたのはさすがに北原三枝や芦川いづみにはそんなセリフを言わせられなかったためか。
他にも会社の専務ができちゃった学生結婚だったりとか初対面の男の着替えを女性が堂々と見つめていたりとか不倫公認だとか。

入社二年目の曾根(石原裕次郎)は、専務に使いを頼まれて専務の家に届け物をする。
しかし使いというのは方便で、実は曾根は専務の娘ふさ子(芦川いづみ)の結婚相手候補として送り込まれたのだった。
ふさ子は曾根を気に入る。
一方曾根の会社の同僚の北岡みさ子(北原三枝)は曾根に思いを寄せていた。
実は曾根を花婿候補に推薦したのはこのみさ子だった。
好きな男を他人の花婿候補に推薦するその真意は・・・

新しい男女関係といっても別に諸手を挙げて礼賛しているわけじゃなくて、そこから起きるひずみもテーマにすえる。
というかメインのキャラはみんな実は古風。わざと強調しているんじゃないかと思うくらい古風。
大の大人が
「俺は今夜、初めてふさ子さんと接吻したんだ」
~略~
「くそぅ。うらやましいやつめ」
~略~
「諸君!俺たちは今夜、宇宙を征服しました」
キスしたほうは接吻を熱い思い出として酔いしれて語り、聞き手は本気でくやしがる。
キスしたほうは嫌に得意げだし。
北岡みさ子の義理立ても古風だし先進的っぽかったふさ子もうぶで古風だったり。
ただ、本当に新しいと思うのは北岡みさ子はツンデレの走りだった、という脅威の事実。50年前っすよ。

2008年2月10日日曜日

映画『エディット・ピアフ ~愛の讃歌~』

2007年 監督:オリヴィエ・ダアン
at ギンレイホール


エディット・ピアフ~愛の讃歌~ (2枚組)

伝説のシャンソン歌手、エディット・ピアフの人生を140分で描ききる。
晩年や少女の頃など時間軸が飛ぶので、初めのうちは、お、1935年だから前のシーンの何年前で何歳くらいか、とか考えながら見ていたのだけど、様々な年代をいったりきたり、あまりに奔放に飛躍しまくるので段々面倒になってやめる。
そしてうとうとする。
おかげで取り巻き連中を誰も覚えられなかった。

エディット・ピアフの歌は声量も凄いけど、なにより人の心を惹きつけてやまないあの独特な声質にしびれる。
サブタイトルにもなっている「愛の讃歌」がいつ歌われるか。
歌われた瞬間絶対絶えられずに泣く。と警戒し続けているところでついにやってくる。
絶望に打ちひしがれたピアフが部屋の中からおぼつかない足取りでふらふらと歩き出すとそこはなんと舞台の上!
そこまでがたゆたうワンカット!
そして愛の賛歌!!
ぶはーっと号泣。なんだけど愛の賛歌の歌い始めでなぜかすぐ別のシーンへ。
なにぃー。昂ぶった感情のやり場がなくなって恥ずかしさに変わる。ひどいじゃん。ぶー。

主演のマリオン・コティヤールはエディット・ピアフが憑依したかのようで、怪演とでも言いたい演技で面白い。
140分もあるしなかなか見ごたえがある。途中寝ちゃったけど。

映画『ミス・ポター』

2006年 監督:クリス・ヌーナン
at ギンレイホール


ミス・ポター (初回限定生産 特製パッケージ)

ビアトリクス・ポター。ピーターラビットの生みの親。
その半生を描いた映画。
全てが順風万般に進むんだけど、幸せ続きで終わるにはまだ尺がある。
ということは当然のように不幸が訪れる。
でも全体的には爽やかな後味。
調べてみるとこの不幸は創作じゃなくて実話らしい。
ドラマティック。

2008年2月3日日曜日

映画『オリヲン座からの招待状』

2007年 監督:三枝健起
at ギンレイホール


オリヲン座からの招待状

離婚直前の中年夫婦(田口トモロヲ、樋口可南子)のもとに、京都の小さな映画館オリヲン座から招待状が届く。オリヲン座は閉館を迎えようとしていた。
時はさかのぼり、戦後間もないころ、松蔵(宇崎竜童)とトヨ(宮沢りえ)の夫婦が経営しているオリヲン座に留吉(加瀬亮)という青年が転がり込む。
留吉が仕事を覚えてきたころ、松蔵が病に倒れる。
ミスターストイック留吉。プラトニック留吉。

松蔵亡き後、留吉とトヨの関係やテレビ時代の不況や周りからの不当な風当たりなど、問題を山積みにしておきながら何の解決もしないまま冒頭の中年夫婦がでしゃばってきて全てが曖昧になる。
ストーリーはそんな感じで中途半端なんだけど、別にそれはまあどうでもいい。
とにかく宮沢りえがよかった。たぶん僕は『ぼくらの七日間戦争』以来一作も出演作を見てないのだけど、なんかいつのまにか凄い女優さんになっていたのだねぇ。
1950年代ころまでの日本の女優さんが持っていた雰囲気に似ている。なんというか観念的な表現しかできないけど神秘的な魂みたいなもの。
泣けるようなシーンは特になかったのだけど、最後の最後のフィルムだけは泣かされる。そこには人一人の人生と思い出と長い時間の流れが全て詰まっていて。

ちなみに後で知ったけど宮沢りえが年食ったあとの役を演じたばあさんは瞳が最高にキュートだったあの中原ひとみさんだったのね。

映画『自虐の詩』

2007年 監督:堤幸彦
at ギンレイホール


自虐の詩ナビゲートDVD いつまでも七転八倒 ~森田幸江 篇~

ケイゾク、トリック、『さよならニッポン! GOODBYE JAPAN 』の堤幸彦。
主演は中谷美紀と阿部寛。
元やくざで無口でプー太郎の阿部寛と彼に献身的に尽くす中谷美紀。
ちゃぶ台返しがハイスピードカメラのスロー映像なんだけど、中谷美紀がちゃんと飛び散る飯に付いて行っている・・・合成?
冒頭、連続で繰り返されるちゃぶ台返しで二人のキャラや関係が分かるから、もう何の展開もしないんじゃないかという気分になるのだけど、一応話は展開されていく。
なんといっても中学時代シーンの熊本さんがかなりいかしている。つえーし優しいし健気だしかわいいし。