2009年2月15日日曜日

映画『トウキョウソナタ』

2008年 監督:黒沢清
at ギンレイホール


トウキョウソナタ [DVD]

是枝裕和の『歩いても 歩いても』は小津、成瀬などのホームドラマの系譜だったが、黒沢清の『トウキョウソナタ』は森田芳光の『家族ゲーム』に近い。

父佐々木竜平(香川照之)。
母佐々木恵(小泉今日子)。
長男佐々木貴(小柳友)。
次男佐々木健二(井之脇海)。
の4人家族。

線路近くの一軒家で暮らす一般的な家庭。
一般的だからこそ表出しない不協和音が潜む。

実は今時珍しい家父長制の家族だったり、長男がアメリカ軍に入隊すると言い出したりとちょっと一般的では無さそうな面が次第に現れてくるんだけど、それよりも後半怒涛のごとく押し寄せる一般的でない事件にびびる。
もう作品のジャンルが変わっているからね。
(そういえば『ドッペルゲンガー』も後半から一転してチープなロードムービーになったよな)
家族各々に降りかかった事件は各々の胸に刻んで家族のいるホームへと帰っていく。
帰る場所がある、待っている家族がいる、それ以上は無くて、自分が家族を支えている、守っている、とかいう前に家族一人一人の心は誰にも侵害されずに自立している。

なんか結構安心して見れたな。
コメディチックで楽しいし不安定なところが刺激的だし。
次男が友達と一緒に親から逃げているシーンとか『どこまでもいこう』みたいな良質の子供映画見ているようだし、妻の逃避行はロードムービーだし、父の取得物はサスペンスだし。
でも全体は家族映画でホームに優しく帰結するという。
「君にはピアノの才能があります」という詐欺っぽい棒読みの非現実的な事実はそのままファンタジーとなり、こいつもまた素晴らしく家族に帰結するんだな。
ピアノ始めて数ヶ月でドビュッシーの『月の光』を弾きこなせるわけないじゃんと思いつつも、演奏とシーンが素晴らしければそれでいいと思える。
それにしても健二役の井之脇海君が本当に弾いているみたいに見えた。
小学生ピアニストを俳優に起用したのだろうかと思って調べてみたら、ちょっとピアノを弾けるという程度でシーンは弾き真似だったらしい。
すごい子役だなぁ。『イエスタデイズ』の原田夏希のピアノシーンは明らかに弾いてなかったよ。編集もそれっぽくカット割して雰囲気を盛り上げているのが胡散臭くて。

小泉今日子はここ数年映画に出まくっている。
アイドル全盛だった頃のキョンキョンはよく知らないのだけど、今はトップレベルの女優さんだな。
夕飯作ったけど夫の竜平が帰ってくるのを待っているうちにソファで寝てしまった恵が、竜平が帰ってきた後の「飯は食ってきた」という無残な一言に動揺もせず、代わりにねっころがったまま両手を天井に向かって差し出し「お願い引っ張って」と言うシーンがいい。
うちの母も昔よく言っていた。
映画では恵の声が聞こえなかったのか画面の奥で竜平は無視してすーっと去っていってしまい、伸ばされた両手だけがむなしく残るのね。
「誰か私を引っ張って・・・」

ちなみに映画は大企業の総務部長である父が中国オフショアの導入によりリストラされるところから始まる。
撮影当時はまだ景気がよかったはずだが、今見るとここだけかなり現実的。

映画『イエスタデイズ』

2008年 監督:窪田崇
at ギンレイホール


イエスタデイズ デラックス版 [DVD]

本多孝好の短編が原作。
タイムスリップ恋愛家族ファンタジー。

柳田聡史(塚本高史)は大きなファミレスチェーン店の社長の次男。
長男の慎一(蟹江一平)は親父の会社で働いているが、次男の聡史はアルバイター。
どうも家族とは仲が悪く、全然会っていないらしい。
でも親父が余命幾ばくも無いこと知って病院に訪れ、久しぶりに再会。
親父(國村隼)との過去のエピソードらしき場面が一瞬フラッシュバックされるがこの時点では過去に何があったのかは分からない。
不仲の原因は中盤以降で明かされる。
(もったいつけた割にはどうでもいいガキくさいエピソードだったのだけど)
とにかく主人公は親父を嫌っている。
その嫌いな父がある女性を探してくれと聡史に依頼する。
今の妻の前に付き合っていた女性で、その人との間に子供が一人いる、という衝撃の事実を告げられた聡史は怒りを爆発させるのだけど、なんだかんだで人探しを始めるのであった。

そこからはファンタジックに過去にタイムスリップ。
そこには昔の親父(和田聰宏)と探し人の女性真山澪(原田夏希)がいた。
無断で他人の部屋に侵入してきた聡史を過去の二人は優しく迎え入れる。
人の部屋に勝手に上がるわ挙動不審だわで明らかに怪しい奴なんだけどなぁ。

その後も条件が揃えば過去にタイムスリップ。
過去と現在を行ったり来たりしながら二人の過去、親父の想いを知っていく。

過去へのタイムトラベルとは驚くべき超能力なんだけど、当の聡史君は事の重大さをあまり認識していない。
普通に親父達と接触して過去を書き換えてるしな。
いや、実は過去に行ってるわけじゃなくて、スケッチブックに込められた記憶を動的に仮想体験しているのかも。
現在の親父は過去に「山田(聡史の仮の名)」に会ったことを記憶していないようだし。
まあ、話の主眼はそこじゃないからどうでもいいことだけど。

結構飽きずに見れる。
クリームソーダのエピソードが最後にちょろっと生きてきたりと。

パソコン購入

vaioをBTOでスペック落として購入したのが2005年2月。
電源を入れて暫くしてからCPUファンが回りだすと、後は電源切るまで回りっぱなし。
いや、ウィーンっていうくそでかい音がずっと鳴り続けるなら多少は慣れるけれど、正確に言うと2,30秒くらい回ってから8秒ほど休憩が入るから、鳴ったり消えたりするのね。
ものすごいいらいらする。
1年くらいで買い換えようとしていたのに気づいたら4年経つ。

2007年8月にはリカバリ失敗によりしょうがなくxpから2000にダウングレード。
ファンは相変わらずだけど、さらに2分くらい何も操作していないとディスプレイの輝度がしょぼしょぼと落ちる。
省電力?と思ってドライバの設定見てもそれらしい項目は無い。
マウス動かしたりキーを打つと輝度が復活するからいいのだけど、たまに復活時にマウスポインタが画面に張り付いて動かなくなる。
再起動か休止復活させないとポインタが動かない。
だからちょっと操作せずにほったらかしているなと気づいたら慌ててマウス動かしたりして輝度が落ちないようにしたり、と心労がさらに増える。

Google Chromeが出たときさっそくインストールしようとしたのだけど、2000は対象外だった。
正式版が出たことだしそろそろvaioも潮時だと思って新しいノートを購入。

Microsoftのページを見る限りvistaもそんなに悪くないんじゃない?と思ったのだけど、一応xpのリカバリディスクが付いたThinkPadをネットで購入。

11(水)に届く。
vaioは13.3のワイドだったのだけど、買ったThinkPadは14.1。
さすがに比べるとでかいなと思ったのだけど、vistaのセットアップ中からなんか横にでかくね?と思ってよく調べてみたらwxga+ってなってる~。
ワイドはなんか使いづらかったらから嫌だったのだけどなぁ。
型に「14.1ワイド」って書いてほしい。

と、それは置いておいて、びっくりしたのは全然音がしない。
ファンも回らないし電源入っているときと入っていないときの差が全く無い。
驚きだな。パソコンいじりながらテレビ見ていてもテレビの音量を上げる必要が全く無いという驚き。

で、vistaなんだけど、なんでこんなに分けがわからないのだろう。
エクスプローラ開いたらフォルダツリーが左ペインの下にちょこんとしか表示されず、左上の使わなさそうな表示を消そうと思っても消えてくれない。
フォルダオプションの場所がすぐ分からない。
「上へ」ボタンが見つからない。
フリーソフト群を入れていくつか起動したら動きが怪しいものがある。
各種設定の場所が微妙にいろんなところに移動されていて見つけるのが大変。
ソフトの実行時に本当に実行するのかみたいなダイアログが毎回出る。
Aeroは格好いいけどショートカットの「Windowsキー+TAB」は一回押しただけではウインドウが変わらない。(TABを二回押さないと一つ前のウインドウに切り替わらず、「ALT+TAB」と同じようには使えない)
とかいろいろ。

むきーっとしてxpにダウングレードした。
今は快適です。

2009年2月10日火曜日

2月INFO

BS2 2月13日(金) 午前0:45~午前2:47(12日深夜)
偶然の旅行者 1988年・アメリカ
  〔製作・監督・脚本〕ローレンス・カスダン
BS2 2月13日(金)午後2:10~午後3:50
風雲将棋谷 1955年・日本
  〔監督〕松田定次
BS2 2月14日(土) 午後9:00~午後11:57
ゴッドファーザー 1972年・アメリカ
  〔監督・脚本〕フランシス・フォード・コッポラ
BS2 2月16日(月) 午後1:00~午後2:56
女相続人 1949年・アメリカ 
  〔製作・監督〕ウィリアム・ワイラー
BS2 2月16日(月) 午後9:00~午前0:23
ゴッドファーザーPART II 1974年・アメリカ 
  〔製作・監督・脚本〕フランシス・フォード・コッポラ
BS2 2月17日(火) 午後9:00~午後11:51
ゴッドファーザーPART III 1990年・アメリカ
  〔製作・監督・脚本〕フランシス・フォード・コッポラ
BS2 2月18日(水) 午後1:00~午後3:36
ファニー・ガール 1968年・アメリカ 
  〔監督〕ウィリアム・ワイラー
BS2 2月18日(水) 午後9:00~午後11:06
欲望という名の電車 1951年・アメリカ 
  〔監督〕エリア・カザン
BS2 2月19日(木) 午後9:00~午後10:49
波止場 1954年・アメリカ 
  〔監督〕エリア・カザン
BS2 2月23日(月) 午後9:00~午後11:10
怒りの葡萄 1940年・アメリカ
  〔監督〕ジョン・フォード
BS2 2月27日(金) 午前1:10~午前3:03(26日深夜)
アリスの恋 1974年・アメリカ 
  〔監督〕マーティン・スコセッシ

2009年2月1日日曜日

映画『イントゥ・ザ・ワイルド』

2007年 監督:ショーン・ペン
at ギンレイホール


イントゥ・ザ・ワイルド [DVD]

構成が緻密な上、何気ないシーンまで非常にぐっと来る。
繊細なセンスに加え、圧倒的でプリミティブな世界と現実社会とその中間点でめまぐるしく展開されるエンターテインメント。
ただごとじゃないです。
しかもショーン・ペンだったのか。
監督作を初めて見たけど、いろんな意味でびっくり。
ワイルドだけど繊細・・・むーん、なるほど。

ジャーナリストで登山家のジョン・クラカワーが綿密な取材の末書き上げたノンフィクション「荒野へ」が原作。
だから実話が元。

大学で優秀な成績を残して卒業したクリストファー・マッカンドレス(エミール・ハーシュ)。
彼は卒業後、家族にすら何も言わずに無一文で旅に出た。
表面上裕福な家庭に育ったように見えるが、彼が子供の頃から両親は絶えず激しい喧嘩を繰り返すという劣悪な家庭環境でもあった。
物質至上主義を何より嫌悪するクリスは大学卒業を期に、かねてから計画していた通り全てを捨てて約束の地アラスカに向かう。
車、ヒッチハイク、貨物列車の無賃乗車、あらゆる手段で移動し、途中街や農場でバイトしてサバイバルに必要な資材を貯めていく。
そしてアラスカに行くまでに嘘みたいに様々な人と出会う。
旅の過程で人の温もりを誰よりも感じて理解しながらも、彼の目はまっすぐと究極の孤独の地アラスカを見据え続けていた。

青年のロードムービーといったら最近では『モーターサイクル・ダイアリーズ』が思い浮かぶのだけど、比べてみると『モーター~』のストーリーはあまりにままごとくさく思えてくる。
旅の人数、手段、目的、所持金、何より覚悟が全然違う。
善し悪しは置いておいて、日常の延長のちょっとした小旅行にしかなっていない男共と、全てを捨てて命をかけて一つの信念を実現させようとした一人の男、のどっちが面白いか、どっちの映画を見たいかっていったらそりゃあ後者になる。
ちなみに撮影監督のエリック・ゴーティエは『モーターサイクル・ダイアリーズ』の撮影監督でもある。
でもこの映画の方が断然楽しめる。

主演のエミール・ハーシュが衰弱しているシーンでびっくりするくらい痩せているのね。
それまでふっくら逞しい肉体で躍動していたのに、誰が見ても明らかなくらい痩せている。
なんだこれ、CG?と思ったのだけど、このシーンのために18Kgも絞ったらしい。
18Kgって一体どんだけ頑張ったんだ。
根性だな。

映画『落下の王国』

2006年 監督:ターセム
at ギンレイホール


ああ、結局1月は1本も見なかった。
ギンレイも2プログラム(一ヶ月)すっ飛ばして久しぶりに来館。

いつもは予告編を見てある程度の情報を得てから見るのだけど、今日は二本とも何の情報もなしに鑑賞。
どんなジャンルの映画かすら知らず。

ザ・フォール/落下の王国 特別版 [DVD]

舞台は大分昔な1915年。
5歳の少女アレクサンドリア(カティンカ・ウンタルー)が左腕を骨折して入院している。
エルボーするような形で固定された腕に不自由する様子も無く病院内をちょこちょこ駆け回る。
病院内にはスタントマンだけど事故で半身不随になってしまったロイ(リー・ペイス)がいた。
ロイはアレクサンドリアをベッドの脇に座らせてお話を聞かせてあげるのだった。
ただ、その話というのは自暴自棄になったロイが思いつくままに作った作り話だけど。

最初はまあ一体どんな映画なのかすら分からないのだが、少女の無垢な好奇心をそのまま切り取ったような映像に感触はいい。
鍵穴を通して影が反転して壁に投影され、不思議そうなきょろきょろしているとドアが開いてまばゆいばかりの光が溢れ出したり。
左目と右目を交互に隠して焦点がずれるのを無心に楽しんだり。

そんなスタートから予測もしないのだけど、話の中心は段々とロイの作り話になっていく。
もうがらっと違う世界。
でもこの作り話が結構面白い。
一体どこでこんな場所見つけてきたんだっていうくらい荘厳な景色の中の復讐冒険活劇。
圧倒的でちょっと悪趣味な映像美に潜むチープさ。
公式ページのフォトギャラリーで不思議で美麗な写真がたくさん見れる。

で、この作り話の映像は後半に行くにしたがって暴走度を増していくのね。
途中くらいから、あ、これ『パンズラビリンス』の監督さんだ、って思ったのだけど、帰って調べたら全然違かった。
監督はインド出身のターセム・シン。
『ザ・セル』の監督らしい。

thank you. thank you very much!
ってキートン達の感動的アクションで畳み掛けられた後じゃあ泣くしかないじゃん。
ああ、ラストの方思い出すとまた泣けてくる。
少女のくしゃくしゃの泣き顔とか。

アレクサンドリアを演じたカティンカ・ウンタルーだけど、顔はそんなに可愛くない。
そんなに、っていうか可愛くない。
でも可愛い。
顔が可愛い子役は過去にくさるほど映画に現れてはいるけれど、大体20分くらい見たら飽きて野暮ったくすら思えてくる。
でもカティンカ・ウンタルーは飽きない。
それはたぶん自分が可愛いという認識が無いからでしょう。
実際可愛くないし。
顔が可愛い子役は少なからず自分が可愛いと認識して、見られていることも意識している。
大人の役者ならともかく子役にそんな意識はいらない。うざい。
カティンカ・ウンタルーは純粋な好奇心だけで動いている(ように見える)。
だから可愛い。
吊り上げられて固められた左腕の手首だけが重力にまかせるままにだらんと垂れている可愛らしさとか。
ただでさえ不自由な左手にいつも大事そうに父親の写真などが入った宝箱をつかんで病院中をてくてく駆け回る悲しく純粋で不自由なはずなのに何より自由な子供の権化。

公式ページ見ると、カティンカ・ウンタルーが自意識を持たないうちに急いで先に少女の出演シーンを撮影したらしい。
その後、4年間で24カ国を廻ってロケ撮影した、と。
根性。