2007年 監督:ファティ・アキン
at ギンレイホール
ドイツとトルコを舞台に3組の親子が運命に導かれるまま出会いと別れを経験する。
と書くと都合よくこの広い世界でお互い胡散臭く出会ったりすれ違ったりするんでしょう?と思うけど、まあ実際都合よく出会うのだけど、そんな都合よさなんてどうでもよくなるくらい悲しくて温かいストーリー。
冒頭少ししてから「イェテルの死」という章が始まる。
字幕で「イェテルの死」と出たところでイェテルって誰だよと思うのだけど、程なくイェテル登場。
娼婦のイェテルはがたいのいい二人の男に「おまえもイスラムだろ、今すぐ娼婦をやめろ」と脅されている。
死の影がなくはない。
しかしこの男たちはイェテルの死には関係なく、イェテルの死はイェテルという温かい人物像が見えてきたところで思いがけない形で訪れる。
なんて簡単であっけないんだ。
ここでまずアリとネジャットという一組の父と息子の運命がずれる。
続いて「ロッテの死」という章が始まる。
母イェテルの死を知らずにトルコで政治活動に身を投じていたアイテンが中心の章なんだけど、程なくロッテ登場。
死の影など全く見えないのに、ロッテもまた唐突にあっけなく。
飛行機から搬出されるイェテルの棺桶。そして搬入されるロッテの棺桶っていう図は悲しいはずなのに少し滑稽でもある。
死と笑いと日常がいっしょくたになっていて面白い。
人は簡単に死ぬ。死ぬんだけどその死は残された人々が自分の足でしっかり踏みしめながら人生を歩むきっかけとなる。
生と死とそこから派生する運命と人生のサイクルが高い位置から静かに俯瞰されていて、大仰な人生賛歌映画とは違って、ああ、なんか素敵だなぁと自然に思えるような映画。
ロッテの母親を演じたおばさんは只者じゃない気品さを漂わせていて、誰なんだろうと思っていたのだけど、ハンナ・シグラという有名な女優さんらしい。
ファスビンダーのミューズで、ヴィム・ヴェンダースやゴダール(『パッション』)の作品にも出ているらしい。知らなかった・・
2009年7月20日月曜日
映画『チェンジリング』
2008年 監督:クリント・イーストウッド
at ギンレイホール
![チェンジリング [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/513Q1kgcsGL.jpg)
142分あるんだけど間延びもせず最後までテンション高く観ることができる。
化粧が濃くて口紅が別の生き物かのように気持ち悪く真っ赤なこの主演女優はいったい誰だろうと思っていたらアンジェリーナ・ジョリー。
舞台は1928年のロサンゼルス。
女手一つで9歳の息子を育てるクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)。
ある休日、息子を家に残して出勤したクリスティンは帰宅後、息子がどこにもいないことに気づいて取り乱す。
突然消えた息子。
5ヵ月後、息子はロス市警によって発見される。
腐敗しきって信頼が地に落ちているロス市警はこの手柄を絶好のプロパガンダとして、たくさんの報道陣の前で感動の親子対面を大仰に演出した。
いよいよ親子対面。
しかし現れた子供は自分の息子とは似ても似つかない全くの別人だった。
「子供の成長は早い」などとJ・J・ジョーンズ警部(ジェフリー・ドノヴァン)に言いくるめられたクリスティンは、渋々この見知らぬ子供を家に連れ帰る。
無力なクリスティンとロス市警との戦いが始まる。
いやー、しっかし面白いなぁ。
長い映画は疲れるから嫌いなんだけど、魅力的な役者や展開でぐいぐい引き込んでいく。
それぞれがそれぞれの思惑で動くのだけど、クリスティンだけがシンプルにただ息子を見つけ出すことだけを目的としている。
そのシンプルで根源的な母の強い願いは、大人から子供まで、権力を持った傲慢から無邪気な夢まで、様々な人間の思惑で阻まれる。
特にジョーンズ警部が凄い。
映画史上最も憎らしい人物なんじゃないかと思うくらい憎たらしい。
そういえば精神病棟の下りは、どこまで当時の実体にそぐうのかは知らないけど、夢野久作の『ドグラマグラ』における「キチガイ地獄外道祭文」のような病院地獄そのもだったので恐ろしい。
at ギンレイホール
![チェンジリング [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/513Q1kgcsGL.jpg)
142分あるんだけど間延びもせず最後までテンション高く観ることができる。
化粧が濃くて口紅が別の生き物かのように気持ち悪く真っ赤なこの主演女優はいったい誰だろうと思っていたらアンジェリーナ・ジョリー。
舞台は1928年のロサンゼルス。
女手一つで9歳の息子を育てるクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)。
ある休日、息子を家に残して出勤したクリスティンは帰宅後、息子がどこにもいないことに気づいて取り乱す。
突然消えた息子。
5ヵ月後、息子はロス市警によって発見される。
腐敗しきって信頼が地に落ちているロス市警はこの手柄を絶好のプロパガンダとして、たくさんの報道陣の前で感動の親子対面を大仰に演出した。
いよいよ親子対面。
しかし現れた子供は自分の息子とは似ても似つかない全くの別人だった。
「子供の成長は早い」などとJ・J・ジョーンズ警部(ジェフリー・ドノヴァン)に言いくるめられたクリスティンは、渋々この見知らぬ子供を家に連れ帰る。
無力なクリスティンとロス市警との戦いが始まる。
いやー、しっかし面白いなぁ。
長い映画は疲れるから嫌いなんだけど、魅力的な役者や展開でぐいぐい引き込んでいく。
それぞれがそれぞれの思惑で動くのだけど、クリスティンだけがシンプルにただ息子を見つけ出すことだけを目的としている。
そのシンプルで根源的な母の強い願いは、大人から子供まで、権力を持った傲慢から無邪気な夢まで、様々な人間の思惑で阻まれる。
特にジョーンズ警部が凄い。
映画史上最も憎らしい人物なんじゃないかと思うくらい憎たらしい。
そういえば精神病棟の下りは、どこまで当時の実体にそぐうのかは知らないけど、夢野久作の『ドグラマグラ』における「キチガイ地獄外道祭文」のような病院地獄そのもだったので恐ろしい。
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