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![シリアの花嫁 [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51Kolv34tKL.jpg)
今回のプログラムはイスラエル特集らしい。
イスラエルのゴラン高原は元々シリア領だったが1967年の第三次中東戦争以来イスラム領となっている。
この地の人々はイスラエルの市民権を得ることもできるのだが、住民の多くは「無国籍者」として暮らしていた。
軍事境界線で引き裂かれたシリアにいる肉親とは国境の「叫びの丘」と呼ばれる場所で拡声器を使用して逢うことくらいしかできなかった。
このゴラン高原のマジュダルシャムス村の女性モナはシリアの人気タレントの元に嫁ごうとしている。
一度シリア国籍が確定したらマジュダルシャムス村の家族とは二度と会えなくなるので今生の別れとなる結婚式。
いやぁ、本当に面白い。
まあいろいろ中東事情が背景にあるのだけど、これは良質の家族ドラマになっている。
家族一人一人が存在感があるので登場人物がたくさんいてもすっきり理解できるという巧みさ。
父ハメッドは親シリア派で政治活動をしており、投獄経験もあり保護観察中で警察から睨まれている。
結婚式当日は折りしもシリアの新大統領を支持するデモが行われ、イスラエル警察ではハメッドを軍事境界線へ行かせるなというお達しまで出ている。
娘と今生の別れになるかもしれないのに最後まで見送れないという問題。
長男ハテムは将来を有望視された秀才だがロシア人と結婚して家を勘当されていた。
妹の結婚式に出席するため、ハテムは妻と金髪の子供を連れて8年ぶりに帰郷した。
しかし村の長老達はハメッドにあの裏切り者のハテムを受け入れるなら私達は結婚式に出ないと言う。
妹との最後の別れだから許して欲しいというハメッドの願いも聞き入れられず交渉は決裂する。
ハメッドはハテムをもちろん大事に思っているのだが様々な事情で8年ぶりの再会にも一切言葉を交わさずぎくしゃく。
次男マルワンはイタリアでビジネス(怪しい)をしているのだが結婚式のため帰郷。
前歯に隙間がありかなり強烈なキャラクター。
長女アマルは結婚して娘二人がいる。
保守的な夫アミンとの関係は冷え切っている。
子供達も大きくなったことだし、妹モナの結婚という契機に大学進学という夢を果たそうとしている。
他、でぶのカメラマンとか赤十字のキュートな女性とか結婚相手のタレルとかイスラエルの係官とか警察、等など印象深い人たちが次々と現れる。
政治背景の暗さを吹き飛ばす底抜けの明るさがあるとか皆が個性的なキャラクターであるとかそういうわけじゃないんだな。
皆いたって普通でいたって真面目。(マルワンは普通じゃないかもしれないけど)
普通なのに印象深いのはそれぞれ問題や悩みを抱えながらも前に進もうとしているからかな。
主役は結婚するモナだと思っていたけど、長女のアマルっぽい。
この重要な役どころを演じた人はヒアム・アッバスっていう女優さん。
ものすごく上手い人だな。
娘達が父親でなく母親の後を付いていくシーンでは俺も付いていきそうになる。
ヒアム・アッバスはイスラエル出身で国際的に活躍している女優さんらしい。
『画家と庭師とカンパーニュ』などに出演。