2012年2月26日日曜日

映画『親愛なるきみへ』

2010年 監督:ラッセ・ハルストレム
製作国:アメリカ
at ギンレイホール


親愛なるきみへ [DVD]

キアロスタミの映画観たついでに一応見てみる。
こてこてのラブストーリーものかと思っていたら、途中「えっ、まじ?」っていうよく分からない展開をする。
自閉症(エラーコイン)とか9.11とかいろいろ要素はあるけど最終的にはやっぱりこてこてのラブストーリーに帰結する。

こてこてのラブストーリーで重要なのはヒロインがどれだけ可愛いかということだけど、ヒロインは歌って踊れて『ジュリエットからの手紙』等々大活躍中のアマンダ・サイフリッド。
悪くはないけれど蛙顔のアマンダ・サイフリッドが心優しく「尻軽」でない女の子には全然見えなくて苦労する。
いや、実際いい子なのかもしれないけどさ。。

監督はラッセ・ハルストレムなんだよね。
『サイダーハウス・ルール』とか『ショコラ』の人。
・・・なんか珍しく名前を記憶していたから好きな監督かと思っていたけど、調べてみると過去に見た作品がめちゃくちゃ面白かったわけでもなかったな。

映画『トスカーナの贋作』

2010年 監督:アッバス・キアロスタミ
製作国:フランス/イタリア
at ギンレイホール




何も知らないで見てこれがキアロスタミ監督作だと分かる人がいるだろうか。
舞台はイタリアだし主演の二人、特にジュリエット・ビノシュが喋る喋る。
脚本だけ見れば恋愛論を中心に議論を戦わせる男女なんてエリック・ロメールが撮っているのかと思うくらい。
キアロスタミの映画自体観るのは『桜桃の味』以来だから僕が分からないだけかもしれないけど。。

英国の作家ジェームズ(ウィリアム・シメル)は新作『贋作』の発売記念講演を行うためイタリアトスカーナに来ていた。
講演を聞きにきたフランス人でイタリア在住でギャラリーを営む女主人(ジュリエット・ビノシュ)は、彼の通訳にメモを渡して講演を途中退出する。
やがて彼女のギャラリーを訪れたジェームスは彼女の案内で近くの名所をドライブで散策することにする。
とあるカフェで夫婦と間違われた二人はそのまま成り行きで結婚15年目の倦怠期のような夫婦を演じ始める。
寄り添い、喧嘩し、思い出を懐かしく語る初対面の贋作の夫婦。
いや、実は初対面かどうかも怪しい。
英語しか喋れないと思ったジェームズが流暢にフランス語喋ったり、髭を二日置きに剃る習慣を女が知っていたり等々設定は極めて曖昧だから。
といってもカフェに入った辺りからカフェの女主人とジュリエット・ビノシュが軽妙なやりとりを始めるまでの間爆睡したので見逃しただけかもしれないけどさ。

本物のコピー、偽者、という概念を二人の会話の議論で繰り広げていたかと思うと、この映画、そして映画そのものにまでいつのまにか広がっているから面白い。

冒頭から引き込まれる。
テーブルとその上のマイクだけの誰もいない固定ショットにタイトルロールが流れるのだけど、人はいっぱいいるらしくざわざわとした話し声だけが聞こえる。
こういうときエキストラ達はどういう会話をするのだろう。
これから始まる講演についての話か全く関係ない世間話か。
何を喋っているのかさっぱり分からないけど、咳払いが聞こえたりしてざわざわした雰囲気が音だけでこれから始まる講演、そしてこの映画に対する高揚感を起こさせてくれる。

ジュリエット・ビノシュが演じるギャラリーの女主人は、なんやかんや議論を吹っかけてくるのでかなりうざったく、ジェームズも閉口してしまう。
感情の波が激しくて、怒ってたかと思うと窓越しに見える結婚パーティの様子を首を伸ばして見て表情が一気にほころんだりする。
この時のうれしそうな女主人の表情見たら愛しくてたまらなってきた。

小津ばりの切り替えしショットでの二人のやり取りは次第に滑稽味を帯びてきて、声を出してフフっと笑ってしまったのだが、その瞬間観客の誰も笑っていなかったようなので少し恥ずかしかった。

相手役のウィリアム・シメルはオペラ歌手なんだそうだ。

2012年2月12日日曜日

映画『ゴーストライター』

2010年 監督:ロマン・ポランスキー
製作国:フランス/ドイツ/イギリス
at ギンレイホール




いまどきの監督ならテンポよく展開していきそうだが、退屈しない程度の間があるし、主な舞台になる島の別荘はいやに近代的な作りだし、で監督は若手じゃないのかなと思っていたらベテランどころかポランスキーだった。

イギリス元首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝執筆を請け負ったゴーストと名乗るだけのゴーストライター(ユアン・マクレガー)は、ラングが滞在するアメリカの寂しい孤島に向かう。
前任者がフェリーから落下して事故死したため彼に白羽の矢がたったのだが、前任者の死には不可解な謎があった。
ゴーストが島に着いて間もなく、ラングは戦犯としてイギリスから追われる身になってしまう。
でもゴーストは知ったこっちゃ無いので依頼どおりラングへのインタビューを通して執筆を開始するが、偶然前任者が残した資料を発見したことにより自叙伝に隠された裏の意味に迫っていく、巻き込まれるといったほうがいいか。

ラストシーンとかパーティー会場でメモが伝達されていったりとか、って皆なんかの映画で見たことあるようなないような気もする。
そう思ってしまうのはこの映画が50年代60年代くらいの名作サスペンスを見ているかのような雰囲気を持っているからだろう。
なかなか面白かった。

ラングの妻役のオリヴィア・ウィリアムズが綺麗。
シャーロット・ランプリングとキャサリン・キーナーを足して2で割ったような。。

ラングのモデルは恐らくブレア。

映画『ミケランジェロの暗号』

2010年 監督:ヴォルフガング・ムルンベルガー
製作国:オーストリア
at ギンレイホール




ノンストップアクション映画を見ているようにテンポのいいサスペンス。

1938年、ウィーンで画廊を営むユダヤ人一家カウフマン家では、数百年前にイタリアから盗まれたというミケランジェロの素描を秘蔵していた。
やがて戦争が始まると同時にナチスに奪われた絵は、後にドイツとイタリアの同盟の道具に使用されようとする。
しかし、ナチスが奪ったこの絵は実は画廊の主人が作らせた贋作だった。
本物のありかを吐かせるため、収容所にいたカウフマン家の長男ヴィクトル(モーリッツ・ブライブトロイ)が超重要人物としてベルリンに移送される。
が、移送途中で飛行機がパルチザンにより撃墜され。。

第二次世界大戦、ユダヤ人というキーワードながら、殊更暗くなる要素がなく、むしろユーモアに溢れて笑いすら起こる。
戦争が始まる前、とある諍いで監獄にぶちこまれたヴィクトルが署長をおちょくるくらいの超余裕ぶりを披露しているのを見て、ああ、もうすぐ戦争が始まったらそんな余裕は吹っ飛んで悲惨な現実が待ち受けているというのに、可哀想だなと思っていたらとんでもない。
戦争が始まって状況が一変してもヴィクトルは何も変わらなかった。
破天荒でスリリングなサバイバルは綱渡りの命がけでありながら、必死であればあるほど本人や周りが相対的に滑稽になる。
滑稽になれば余裕も生まれる。まるでゲームを楽しんでいるかのような余裕が。
背景には確実にユダヤ人が被った悲しい歴史があって、直截的ではないけどそれも確かに描かれている。
でも痛快に楽しめるっていうのが不思議。
戦争が始まる前の余裕っぷりを可哀想だなと思ったと書いたけど、むしろ劇的に不幸で暗くなる展開を望んでいたかもしれない。
いい意味で裏切られたな。

ヴィクトル役のモーリッツ・ブライブトロイは濃いというかなんというか印象的な顔している。
見たことあるような無いようなと思って調べたら、『ルナ・パパ』とか『ラン・ローラ・ラン』とか『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』、最近では『ソウル・キッチン』とか、偶然意外と見ていた。
今回の役は顔が強烈だったのでもう覚えた。