2016年2月29日月曜日

映画『光のノスタルジア』

2010年 監督:パトリシオ・グスマン
製作国:フランス/ドイツ/チリ
at ギンレイホール




ただのドキュメンタリーだと思っていたらなにこの映像のこだわり。
そこらの映画より面白かった。
宇宙の過去、地球の過去、そしてチリのごく最近の過去が静かに語られていく。

基本的に面白かったんだけど、最後の方であれっ終わりかなと思ったタイミングがあってそこで終わりを意識してしまったために一旦集中力が切れてしまった。
別にいいんだけどまだ続くのかと思いながら見ていると、本当のラストで宇宙とチリが邂逅(って意味が分からないだろうがネタばれになるので)するシーンがあって、なんてことはないはずなのに感動して泣いてしまった。

2016年2月21日日曜日

映画『人生スイッチ』

2014年 監督:ダミアン・ジフロン
製作国:アルゼンチン/スペイン
at ギンレイホール




全6話のオムニバス。
原題が読めないから分からないけど原題は人生スイッチではなさそう。
全部が全部スイッチを押すようにどこかのタイミングでカチッと切り替わるわけではないからなぁ。
とにかくどの話も狂気をはらんだブラックコメディー。
『バカヤロー! 』ってシリーズが昔あったよな。
あれのどぎつい版っていったら分かりやすいか。

個人的には予告編でも大きく取り上げられていて気になっていた「エンスト」が印象に残っているかな。
エンストじゃなくてパンクだけど。
あと一話目の「おかえし」は最初の二人の会話を聞いている時点から思いもつかない方向に飛んでいくからなかなか面白い。

映画『さよなら、人類』

2014年 監督:ロイ・アンダーソン
製作国:スウェーデン/ノルウェー/フランス/ドイツ
at ギンレイホール




最近芸術寄りの映画を全く観なくなったせいか、なんとも思わなくなってきたなぁ。
つまらなくはなかったけど、寝たら気持ちよく寝れそうだなと思った。

『実存を省みる枝の上の鳩』
原題を邦訳するとこうなるらしい。
でもそれじゃあ売れないから『さよなら、人類』にしたんだろうけど、「たま」になっちゃうじゃん。
それにどこに人類にさよならする要素があるんだろう。
確かに死のモチーフが何点か始めに提示されてはいるけど、意思を持たない死だし、その死も含めてこの映画の根幹は人間賛歌だから。

ストーリーはあってないようなものだけど、一応サム(ニルス・ヴェストブロム)とヨナタン(ホルゲル・アンデション)の二人が主演になっている。
この二人が断片的な挿話になんとなくの関連を持たせたり持たせなかったりで、狂言回し的な役割を担っている。

たまに場所も時空の概念も取っ払ったイメージ世界が繰り広げられるときがある。
現代のバーにカール12世が馬に乗って現れるのは結構びびる。
従者がバーのドアを開け放しにする方法をなぜか知っていて(あの仕組みは昔からあるのかもしれないけど)よどみなく作業したり、ヨナタンが面白マスクをかぶっている途中だったり。
ファラリスの雄牛の数十人版みたいな巨大殺人機械もすごかった。
どでかいドラム缶のような形からラッパの口がいくつも飛び出していて。
中の阿鼻叫喚がラッパから流れ出るのかと思いきや、異様なまでの静けさがたちこめ(なんか音か音楽があったような気もするけど)、揺れ動き回転する機械だけが雄弁に中の様子を語っている。
本当に火焚いているように見えるし、どうやって撮影しているんだろう。

ああ、音で思い出したけど、音がちょっと微妙だったな。
映画館の音響設備のせいかもしれないが、特に冒頭のバッグを話さないばあさんのシーンで、説得にかかる初老の男性の声とか、別に嫌な声質でもないのに音量のせいか声の一つ一つが硬く突き刺さってきて不快だった。

戦時中のバーのシーンでは、おもむろに歌から大合唱が始まり、その流れで金が無くて酒が飲めないと嘆く若い兵隊達に、若い女主人がならば酒代はキスで払いなさいよと言い放ち、並ぶイケメン達と次々にキスを交わすというシーンがある。
戦地に赴く前途有能な若者たちに、キスという愛にあふれた行為とともに酒を振舞う女主人。
「素敵やん」
ってことなのだろうが、まずは「兵士はキスしてただ酒飲めて至れり尽くせりじゃん」っていうのと、「次から次に恋人かのようにキスしていく女を見ていると売女じゃん」っていう思いがきたあとに、やっと「ああ、なんて俺の心は狭いんだろう」と反省して「素敵やん」に至る。

監督はスウェーデンの巨匠ロイ・アンダーソン。
”リビング・トリロジー”(人間についての3部作)の三作目らしい。
前二作は『散歩する惑星』『愛おしき隣人』で、合わせて15年。
びっくりしたのは全部スタジオ撮影だったらしい。
いや、明らかに野外あったでしょ、予告編にもある線路脇のシーンとかさ、と思ったらこれもやっぱりスタジオで、ミニチュアの建物とマットペイント(背景画)らしい。すごいこだわり。。
CGもほぼ使っていないらしい。CG使っているとしたらあの猿(人形の可能性も高い)と巨大ドラム缶を熱する火とかかなぁ。

2016年2月11日木曜日

映画『マイ・インターン』

2015年 監督:ナンシー・マイヤーズ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




アン・ハサウェイとロバート・デ・ニーロ。
ストーリー自体は本当にどうでもいいなという感じだけど、テンポがいいので飽きずに見ることができる。
デ・ニーロとアン・ハサウェイのコメディ演技を楽しむ映画ってとこかな。
シニアインターンとかそんなのあるんだね。
にしても老人と若者たちってそんなに溶け込むもんかな。デ・ニーロめっちゃ頼られているし。
ああ、フィオナ役のレネ・ルッソは『ナイトクローラー』のニーナ役の人だったのか。気づかなかった。

映画『ナイトクローラー』

2014年 監督:ダン・ギルロイ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




社会の底辺に生きるルイス・ブルーム(ジェイク・ギレンホール)が、ナイトクローラー(報道パパラッチ)という職業に出会い、めきめきと頭角を現していくサクセスストーリー。
ただ、普通のサクセスストーリーと違うのは、ブルームが愛嬌のかけらもない正真正銘のくず野郎だということ。
なにか法を外れざるをえないときに起こる葛藤みたいなものは一切無く、なんのためらいもなく(踏み外すという感覚すらなく)必要に応じてずかずか一線を越えていく。
そもそもやってる職業がパパラッチだから、ダークヒーローが法をおかしてでもすかっと世直ししますよ、といった類でもない。
なにしろ血も涙もないくずだからね。
なのに、こんな主人公で楽しめるか!とはならず、意外にかなり面白かった。
社会の底辺に生き、感情表現やコミュニケーションがどこかぎこちないが、野望にだけはぎらぎら燃えている男。
そんな男の悲哀に惹かれるのだろうか。

こんな男を生み出す社会構造を批判しているだとか、真実よりも衝撃映像を求める暇な視聴者やそれに迎合するテレビ報道を批判している等々、いろいろ言いようはあるのかもしれないけどさ、それはどうでもいい。
夜の風景は美しいし、車の疾走感もいい。
ひやひやする緊張感が一本ぴーんと張っていて飽きさせないし、単純に頭のねじがぶっとんでいる兄ちゃんがモラルの欠如した業界にがちっとはまっていくサクセスストーリーとして楽しめる。