1966年 監督:ドン・チャフィ
BS2 録画
こんな衝撃的な映画は久しぶりに見た。
映画は上空から何層もの雲をつきぬけ地上へとズームしていくシーンから始まる。
いつ地上までたどり着くかと思って見ていたら赤い点状の光が手前に向かって降りかかってきて地上ではなく得体のしれない赤い渦が高速回転しているのが見えてくる。
なんですか?これ。と思うと「ズカーン」という効果音と共に火山の爆発シーンに。
素晴らしいオープニングに度肝を抜かれたところでタイトルが。
キャストが流れて、おお、いっぱい出てるねぇと思ってふと気づく。
恐竜映画になんで人間が?
原始人が登場する。
猪を落とし穴に落として捕獲。
ナレーションによると部族の長がアコバでその二人の息子はサカナとトゥマクという名前らしい。
二人の息子はお互いに愛情のかけらもなかったとナレーターが語る。
捕獲した猪を運ぼうと、4,5人の男が猪を囲むのだが、持ち上げる途中にじいさんが間抜けにも落とし穴に落ちてしまう。
助けようとする若い男だが何を思ったか覗き込んだ男達を追っ払って自分もじいさんを見捨てて去っていく。
なにが起きたのかさっぱり分からない。
というのも原始人たちは名前さえあれ、言葉は持っていないらしいので台詞がないし、ナレーションも冒頭のみで以降一切入らないから。
見捨てられ、穴の中で震えていたじいさんは鷹のえさになる。
悲鳴は住処に向かって歩いている先頭集団にも響き渡り、何事かと皆が一斉に振り返るが、族長のアコバの奇声で再び歩き始める。
部族全員に見放されたこのじいさんは一体何をしでかしたというのか。意味が分からない。
住処に戻った男達は女達の出迎えを受ける。
今日の獲物の猪を焼く。
美味そうな猪を部族全員が見つめる。じじいが一人先走って猪に近付いていくが女によって投げつけられたでかい石で、頭を割り血を流してはいつくばる。ひどい。
そしてつまみ食いをしようとしたガキはアコバにおもいっきり手を踏みつけられる。
ここまで見てわかるのは、愛情のかけらもないとは息子二人だけではなく原始人同士が皆そうだったのね。
落とし穴に落ちたじいさんを助けなかったのもきっとただめんどうだったかなんだろう。
肉を食い終わったアコバは足りないらしく、息子トゥマクが食っている肉を奪う。
棒きれで喧嘩しだす親子。
アコバは二人の息子のうちトゥマクの方を気に入っていたみたいだったのだけどな。
トゥマクはアコバによって崖から突き落とされます。事故じゃなくてわざと。
喧嘩はただの親子喧嘩ではなく本気の殺し合いだった。
肉親ですら愛情のかけらも感じない。原始人なのでなんでもありです。
常識で見てると精神をやられる。原始人とはそういうものだったのだと思って見よう。
崖から落ちて死んだと思われたトゥマクだが奇跡的に助かった。
しかし部落に戻る気はない。
彼は広大な世界に旅立った。
冒険が始まる。主人公はトゥマクだったのか。
間もなく巨大なトカゲに遭遇して襲われるトゥマク。
恐竜じゃなくてトカゲの合成。
命からがら逃げ出した無力なトゥマク。
逃げ込んだ洞窟は泉の湧き出る美しい洞窟だったが、なにか危険を察知したトゥマクは必死に逃げ出す。
洞窟にやってきたのは類人猿だった。洞窟と類人猿はなかなか幻想的な名シーン。
というか類人猿と人類が同時代にいたのか。
まあ、なんでもありだ。人類が恐竜と遭遇しても驚かない。草食恐竜と遭遇後に続けて巨大蜘蛛と遭遇しても驚かない。
歩き続けたトゥマクはたぶん生まれてはじめてみるだろう美しい海にたどり着いたところで倒れこむ。
翌日?意識を戻すと美しい海にはむちむちの金髪美女が溢れていた。
と、突然巨大アーケロンが登場。脈絡なく。
美女達の部落の男達によって追い払われるアーケロン。
トゥマクはこの金髪族に助けられる。
金髪族はトゥマクのいた黒髪族より文化が発達していて、槍を作ったり絵を書いたりしている。
でも言葉は無い様子。
金髪族の綺麗な娘ルアナ(ラクエル・ウェルチ)に好かれるトゥマク。
・・・って書いていたら切りないな。
ストーリーなんてものはあってないようなもの。
アウアウ言ってるだけだし。
とにかくたいした意味もなく気づいたら殺し合いの喧嘩が始まる、そして気づいたら巨大生物に襲われる、っていうのを延々と繰り返すだけ。
この単純なまでの繰り返しとそんな単純さの中にほろっと潜む醜さや美しさや非情さや優しさが荘厳ですらある。
特にラストの大喧嘩では破壊的なもう一つの要素が突然割り込んできて一瞬呆気にとられるが、この単純だがなんでもありなカオスを圧倒的な威力で昇華させていてなかなか感動的だった。