2009年11月22日日曜日

映画『ディア・ドクター』

2009年 監督:西川美和
at ギンレイホール


ディア・ドクター 【限定版】 初回限定生産 [DVD]

『ゆれる』の西川美和監督。
ちょっとかなり疲労していたので全然見る気がおきなかったのだけど、見始めたら最後まで楽しんだ127分。

過疎化の進む山あいの村で村人から絶大の信頼を得ている一人の町医者が失踪するところから物語が始まる。
そこから物語りは医師の失踪前と失踪後を交互に描いて進んでいく。
今思い返すとそんなにストーリーに起伏があったわけでもない気がするが、映像がなんか安心して見ていられる。

失踪する医師伊野治役にはこれが映画初主演となる笑福亭鶴瓶。
柔和な笑顔とその裏の真に迫ったむき出しの表情などかなりはまっている。
周りを固めるのも八千草薫や余貴美子、香川照之、松重豊、井川遥と豪華。
永遠の美少女八千草薫と鶴瓶がまるで夫婦かのように食卓についている姿など一体誰が予測しえようか。
井川遥は久しぶりに見たけどますます綺麗になった気がする。本当にこんな美人女医がいたら怖い。
あと、瑛太がTシャツとハーフパンツのラフな格好に白衣を羽織っていたのだけど、後姿だけみると白衣から裸の足だけ出ていて変質者みたいだった。

映画『ガマの油』

2008年 監督:役所広司
at ギンレイホール


ガマの油 プレミアム・エディション [DVD]

長いわ~
131分。
最初はいくらかテンポよかった気がするのだけど、中盤くらいからひどく疲労する。

株で大もうけするデイトレーダーの矢沢拓郎(役所広司)は大豪邸に暮らしている。
妻は矢沢輝美(小林聡美)。
息子は矢沢拓也(瑛太)。
『息子の部屋』みたいな展開。
ただしファンタジーに明るい。そこが疲れる。

ガマの油売りのシーンが2度ほど唐突に挿入され、このシーンは時代が4,50年遡っているみたいだけど、油売りの夫婦役が益岡徹と小林聡美になっている。
小林聡美は現代では役所広司の妻役だし、二役やっているから非常にややこしい。
このシーンに出てくる子供が実は矢沢拓郎であると最後の方でわかり、かつこの過去のガマの油売り夫婦がなぜか現代にやってきて現代の矢沢拓郎と共演するというファンタジー。
思えばファンタジー形式で自由なためにいたるところで異様な空間が存在していた。
映し出された渋谷の街は通り行く人々が皆あかぬけないというかださくて、現代でもないし10数年前でもないしどこの時代なんだろうと思っていたけど、あれもどこの時間軸にも属さない異世界だったのだろう。

それにしても結果的には大事な事実を隠され騙され続けていた光ちゃんはもっと悲しんでもっと怒っていいと思うのだが。

秋葉サブローというネーミングセンスやら熊との思い切った格闘とかは面白かったな。 

2009年11月15日日曜日

熊木杏里 Autumn Tour 2009 はなよりほかに 東京国際フォーラム

みしせはそてつ
なうたんいあさき
こすわきば
や ど

セットリストの内容と順番を記憶するために覚えた復活の呪文なんだけど、ライブが終わってからいたるところにセットリストが張り出されているのを見てがっくりくる。
セットリストの順番を記憶するためにそれなりの神経と集中力を使ったのに、こんなことならもっとライブに集中してればよかったぜ!
張り出されたセットリストをいろんな人が携帯のカメラで撮っていて、僕も一瞬撮ろうとしたのだけどもう記憶したしいいやと思って撮らず。


東京国際フォーラムでの熊木杏里のライブに行ってきた。

1. 未来写真
会場が暗くなって人が出てきたと思ったらいきなり歌が始まる。
newアルバムから「未来写真」。
この曲は数少ないアップテンポの曲なので、ライブ後半くらいで手拍子させられる曲なんじゃないかと思っていたけど、まさか1曲目に持ってくるとは思わなかった。
バンド構成はギター、ベース、キーボード、チェロ、ドラム。
伸びのある声とリズムで出だしから飛ばします。

2. あなたに逢いたい
続けて特徴的な音のイントロが始まると、なぜか一瞬郷愁が漂って頭が真っ白になる。
4年くらい前のアルバムの曲だからライブではもう聴けないと思っていたので青天の霹靂で真っ白になったわけだけど、意識が戻るとこの大好きな曲をライブで聴ける喜びに感動する。
最初から面食らうことばかり続いたけど歌はじっくり堪能した。

3. センチメンタル
newアルバムから「センチメンタル」。
さびの歌詞にセンチメンタルという言葉が入っていて、アルバムでこの曲を初めて聴いたとき凄く違和感があったのだけど何度も聴いていると慣れた。
センチメンタルにいい曲だ。

4. 花言葉
ここでやっと挨拶MC。
そしてnewアルバムから「花言葉」。
最後の方のハミングで「ウォウウォウ」と歌っていたけど「ウォウウォウ」がこれほど似合わない曲はないと思う・・・

5. それぞれ
3rdアルバム『風の中の行進』から。
アルバムとはまた違った歌い方。
言葉を区切って力強い、というか力が入りすぎていると言うか。
声量バリバリの圧倒させるような歌い方にこれからシフトしていったら嫌だな、と少し思う。

6. 天使
newアルバムから「天使」。
サビの最後に語るような低い声で「僕は君のもの」と歌うのだけど、これが凄いぞくっとする。
熊木杏里は裏声が特に好きなんだけど、低い声もまた魅力的で、しかもサビの最後にこんなに効果的なフレーズで使われるとガツンとやられる。

7. 春の風
4thアルバム『私は私をあとにして』から「春の風」。
もう2年前の曲になるのか。

8. 長い話
ここから伴奏はギター一本になる。
「私の10年間を」という話から何を歌うのかと思ったら曲は「長い話」で、これも僕はライブで初めて聴く。
噂によると21歳より先の続きを以前にライブで披露していたらしいので、まさか27歳までの続きを聴けるのかとちょっと期待する。

伴奏がギター一本になったことで声がいつもの柔らかさになる。
21歳のくだりまできて、どきどきしていたら何も変化なしに普通に曲が終わってMCになる。
「よく続きを歌ってくれと言われるんですけどね・・・」
といった話をしているところで上の階からいきなり
「前に続きをライブで歌っていたよね!」
みたいなでかい掛け声が響いてびびる。
今の時点で振り返ってその年齢のことを書いても嘘になるからもう駄目だというようなことを言っていた。
続きを知りたければ発表している曲を聴いてください。そこに全部詰まっている、と。
なるほど、じゃあ気が向いたら歌詞カードでも開いてみるか。何百回と聴いているのに未だに歌詞を聞き取っていない曲がいっぱいあるので。

9. Wow Wow
MCから、次は誰かの曲を歌おうとしているらしいというのは分かったけど誰の何の曲かは分からないまま聴き始めると小田和正の「Wow Wow」。
「花言葉」でのハミングはこの曲への伏線だったのか・・・

10. 誕生日
この曲を作ったきっかけの話から「誕生日」。

11. 一千一秒
ピアノ(キーボード)弾き語り。
かつ今回一番楽しみにしていた「一千一秒」。
この曲すごいいいんだわ。
「不思議な 不思議な この世界」
っていうくだりの不思議な高揚感がたまらなく泣きそうになる。

12. 雨が空から離れたら
ライブの中でピアノ弾き語りのコーナーを楽しみにしているのだけど、早々に切り上げてまたバンドになってしまう。
「雨が空から離れたら」。
知らなかったのだけどこの曲はちびまる子ちゃんの額に線が入っているように落ち込んでいる友達に向けて作った応援ソングだったらしい。

13. 最後の羅針盤
4thアルバム『私は私をあとにして』から「最後の羅針盤」。
ここらへんから非常に心地よい眠気に襲われる。

14. 今日という日の真ん中
新しいアルバムから。

15. こと
「こと」。
何度聴いてもやっぱり名曲だなぁ。
できれば弾き語りで聴きたかったけど。

16. Snow
新しいアルバムから。

17. 新しい私になって
タイトルをど忘れして終始悩む。

18. 君の名前
ここでやっと来た「君の名前」。
これもできれば弾き語りで聴きたかった。
何度も聞きすぎたせいか、前のライブで弾き語りで初めて聴いたときのような衝撃はなかったけど、それでもいい曲だ。

19. バイバイ
締めは「バイバイ」で。

En1. やっぱり
アンコールの拍手がまばらだった気がするのだけど、気のせいかな。
僕のいた1階の後ろの方の席ではアンコールの拍手がほとんど聞こえてこなかった。

今回のツアーは新しいアルバムのテーマが恋であることから恋の歌ばかり集めたということだけど、まだ「ひみつ」を歌っていない。
アンコールで来るかと思っていたら「やっぱり」だった。
この曲も好きだから別にいいが。

En2. どこまでも
最後にキーボードの前に座って弾き語りで未発表の「どこまでも」を歌う。
弾き語りで聴くとなんでも名曲に聞こえる。


全部で21曲か。
じっくり堪能できたかというと、最後の方は集中力が切れてしまった。
椅子に浅く腰掛けて腹が曲がり続けたので最後の方は腹筋が痛くなってきて。
映画見るときは後ろに座っている人を意識しないで済むようにいつも端っこか後ろの席に座って、疲れたら椅子に深く腰掛けて背筋伸ばしたりして調節するのだけど、今は後ろの席の人に気を使ってずっと浅く腰掛けていたから。
それと、前の席にずらずら座っていた関係者らしき男女の集団の中で、僕の左斜め前に座ったウェーブのかかったロン毛のあんちゃんが非常にうざくて気になってしょうがない。
何がうざいかってライブ中、首をありえないくらいかくかく動かすんだもん。
リズムを取っているとかじゃなくて、デフォルトは寝違えたかのように首を思いっきり右に傾け、そこからちょくちょく首の筋を伸ばすようにコキコキ左右にふったり、っていうのを終始繰り返す。
鶏以外でこんなに落ち着きのないやつは初めて見た。
気にしないようにしても頭頂部にかけているサングラスが動くたびにライトが反射して光るし。

席は運だな。

個人的には半分は弾き語りで歌って欲しいところだけど、大変なのかな。
バンドのメンバは皆上手いことは上手いのだけど、たまにバンドの一人一人と歌声が全ててんでばらばらに音を奏でているように聞こえるときがある。
座った席の音の反射具合とかも関係しているのだろうけど。
チェロの音も基本的にはいい雰囲気をかもし出しているものの、たまにギーっていう音が大きく耳に飛び込んできて引っ掻き回されたような気分になる。
エレキギターやキーボードなどと比べてチェロはそのままでもホールに音を響かせられるような異質の存在だし。

まあ、なんだかんだいっても満足はした。
新しいアルバム『はなよりほかに』をもっと聞き込んで次のライブに備えよう。

はなよりほかに(初回限定盤)
ひとヒナタ(初回限定盤)(DVD付)私は私をあとにして風の中の行進無から出た錆殺風景

2009年11月1日日曜日

11月INFO

★BS2 11月3日(火) 午前0:40~午前3:28(2日深夜)
甘い生活 1960年・イタリア/フランス

〔監督・脚本〕フェデリコ・フェリーニ

〔出演〕マルチェロ・マストロヤンニ、アニタ・エクバーグ、アヌーク・エーメ
BS2 11月4日(水) 午前0:40~午前2:29(3日深夜)
道 1954年・イタリア

〔監督・脚本〕フェデリコ・フェリーニ
★BS2 11月5日(木) 午前0:40~午前2:20(4日深夜)
女ともだち 1955年・イタリア

〔監督・脚本〕ミケランジェロ・アントニオーニ
★BS2 11月9日(月) 午後1:10~午後2:43
丹下左膳余話 百萬両の壺 1935年・日本

〔監督〕山中貞雄
★BS2 11月10日(火) 午後1:05~午後2:28
河内山宗俊 1936年・日本

〔監督・脚本〕山中貞雄
★BS2 11月11日(水) 午後1:05~午後2:32
人情紙風船 1937年・日本

〔監督〕山中貞雄
BS2 11月15日(日) 午前1:30~午前3:47(14日深夜)
百年恋歌 2005年・台湾

〔製作・監督〕ホウ・シャオシェン(侯孝賢)
BS2 11月17日(火) 午後9:00~午後10:59
博士の愛した数式 2005年・日本

〔監督・脚本〕小泉堯史

なんと、山中貞雄の現存する3作を放映するみたいです。

映画『京義線(キョンイセン)』

2007年 監督:パク・フンシク
BS2 録画


これはまた静かな映画だな。
ロードムービーかと思っていたけど旅部分は全体の2割程度くらいしかない。
何か人生に絶望したように生気のない男と女がそれぞれイムジンガン行きの京義線に乗り合わせる。
そこから話は1ヶ月前に遡り、二人が京義線に乗るまでの経緯が描かれる。

父子家庭で育ち、地下鉄の運転手として働くマンス(キム・ガンウ)。
不規則な勤務時間に疲れながらも真面目に勤めあげていた。
質素な暮らしと真面目さで、誠実を絵に描いたような青年。
運転席から見えるのはいつも変わらない地下鉄のトンネルの風景。
しかし月に1回、「泉」という雑誌の発売日にその雑誌と間食を差し入れてくれる女性がいて、マンスは彼女と会うのを楽しみにしていた。
会うといっても名前も知らないし、勤務中なので一言二言しか喋れないのだが。

誠実なマンスとは対照的なのがハンナ(ソン・テヨン)。
彼女は大学でドイツ文学の非常勤講師をしている。
ドイツ留学時代の先輩で今は同じ大学で教授をしている男と不倫関係にある。
良家のお嬢さんらしく、わがままな面もちらほら。
今の不倫関係と自分の将来に不安を感じている。

ストーリーとしてはマンスが気になってしょうがない。
誠実の塊のマンスに一体何があって京義線に乗ることになったのか。
変わり映えの無い地下鉄の勤務風景の一つ一つに緊張感が漂う。
そして人物の見た目的に気になってしょうがないのがハンナ。
ソン・テヨンという女優さんなんだけど、物凄く綺麗な人。
透明感のある顔にびっくりするくらいスレンダーなプロポーション。
綺麗な人といえばマンスに差し入れする女性も綺麗。含みのある微笑が可愛らしい。

ストーリーは大きな起伏もなく淡々と進むのだけど、冒頭の地下鉄の運転席から見たくねり曲がるトンネルの風景でもうこの映画が好きになる。
差し入れの女性は一体何だったのかとか不明な点は残るものの、何より映像だけでかなり魅了される。
ラストの光なんて温かくて力強くて泣きそうになる。

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こないだ見たベトナム映画『1735Km』とこれをロードムービー繋がりとしてDVDに焼こうしたんだけど何を間違えたか『1735Km』とまだ見ていない『My Son あふれる想い』を焼いてしまった。
『1735Km』とセットにしてロードムービーでもこんなに違うもんだよということを1枚のDVDで表す目論見だったのにぃ。
しょうがないから昔見た『モンゴリアン・ピンポン』とアジアフィルムフェスティバル繋がりとして焼くか。