2010年 監督:マイク・リー
製作国:イギリス
at ギンレイホール
この予告編も大概ひどいよな。
なんかハートウォーミングなドラマなのかと思った。
ハートウォーミングで130分もあるなら耐えられそうにないから最初の方遠慮なく寝てしまった。
それが、まさかなぁ。
心温まるどころか残酷すぎてワタシの心に寒風が吹き荒んだ。
地質学者のトム(ジム・ブロードベント)と医学カウンセラーのジェリー(ルース・シーン)は誰もが羨む仲のいい初老の夫婦。
彼らの一人息子で弁護士のジョー(オリヴァー・モルトマン)は30過ぎてもまだ未婚、ということが唯一の悩みの種という幸せ家族。
この初老夫婦のもとには、息子はもとより、夫や妻の長年の友人がたくさん訪ねてくる。
「ここに集まると、喜びは倍に、悲しみは半分になる」
嘘こけって話です。
訪ねて来る人達は皆、人生がどこか充足していないと感じているような、世の中の大多数の人間に当てはまる人達になっている。
孤独(未婚)であったり不健康(肥満体、喫煙者等)であったり家庭が円満でなかったり。
こういうステレオタイプな人達に対比して、初老の夫婦の充実加減もまた「理想」のステレオタイプであって、夫婦仲は円満、休日は市民菜園で二人そろって畑仕事、採れた野菜を仲良く料理、食生活は安定してタバコも吸わないので健康、夫婦そして息子もそれなりにステータスのある職業に付いている。
「理想」の家族に「現実」の訪問者が訪れると、それぞれのステレオタイプの特性がくっきり現れてきて、「現実」側がとてつもなくみじめになってくる。
偽善者、というほといやらしくもなく、仏のようにいい人達、というほど現実離れもしていない、そこそこやさしい老夫婦というところが絶妙だ。
とりわけ嫌な奴とかひどい奴が出てくるわけじゃないのにこんなに残酷なのは、撮り方によるのだろう。
シーンの変わり目などで特にそうだけど、みじめな訪問者の表情のアップをこれでもかと長回しで映し出すから。
ただ映しているだけなのに執拗さを感じるほど長いのでえぐるような残酷さがある。
ラストなんかもう。。
悲しみは半分に、どころかもうずたぼろでしょ。
結婚していない息子に途中から彼女ができるのだけど、この彼女もえぐい。
イギリスの国民性がよく分からないが、とにかく底抜けに陽気で、馴れ馴れしい。
彼氏の両親と初対面なのに隠れていて「わぁ」とドッキリで驚かすなんてありえるのだろうか。
いや、まあそれはいいとして、言いたいのはこの彼女、とびっきり可愛くない!
ジョーとはバーで出会ってその時彼氏がいたけどびびびっときたのでジョーと付き合うことにした、っていうお互い人目ぼれというエピソードも素直に納得できない。
でもこの可愛くないところが凄くリアルなんだな。
理想の家族というのを絵空事のように突き抜けていかないための抑止力が彼女なんだろう。
抑止といっても彼女の明るさの破壊力は絶大だ。
馴れ馴れしいがいい子っぽいので両親には普通に気に入られている上、彼女が陽気であればあるほどメアリー(レスリー・マンヴィル)がみじめになっていく。
滑稽の裏に潜む無情の残酷さ。
あ、メアリーは「現実」の代表でこの映画の主役みたいな女性ね。
マイク・リーって『人生は、時々晴れ』の監督さんだ。
最初から気づいていればハートウォーミングドラマなんて思わなかったのに。
2012年4月8日日曜日
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