2013年11月17日日曜日

映画『ビル・カニンガム&ニューヨーク』

2010年 監督:リチャード・プレス
製作国:アメリカ/フランス
at ギンレイホール




ニューヨーク・タイムズの人気コラム「ON THE STREET」と「EVENING HOURS」を長年にわたり担当する、ニューヨークのファッションフォトグラファー、ビル・カニンガム。
84歳。
ニューヨークはもちろん、パリコレに出向いたビルが警備員に止められそうになっているのをスタッフが見つけて「この方は重要なお方なので」と丁重に招きいれられるくらいファッション界では有名な人らしい。
そんな有名なビルだが、私生活は近しい人ですらよく知らないという。
説得に8年、撮影と編集で2年かかったというビル・カニンガムのドキュメンタリー。

一人のじいさんを追いかけているだけ、といえばそれまでだが、これが結構面白い。
見終わると誰もがビル・カニンガムのファンになっている。
84歳って相当なもんだよ。普通はベッドで寝たきりとか杖ついて首かくかくしながらよぼよぼ歩いている年齢。
一方ビルは雨の日も風の日も愛用の自転車にまたがりニューヨーク中を颯爽と走り回ってストリートファッションを撮影し続けている。
きっと毎日が楽しいんだろうな。
「これは仕事ではなく喜びだ」

映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』

2012年 監督:マリク・ベンジェルール
製作国:スウェーデン/イギリス
at ギンレイホール




かなり面白いドキュメンタリー映画だった。
1960年代の後半にデビューしたロドリゲスは、ボブ・ディランに匹敵するその才能で将来を有望視されたが発表したアルバムは商業的に大惨敗してそのまま姿を消してしまう。
しかし彼の音楽は南アフリカで大ヒットし、反アパルトヘイトの原動力にすらなっていた。
南アフリカではどの家にもビートルズのアビイ・ロードの隣に彼のアルバムがあったというくらいの有名人だが、実際ロドリゲスという人物については誰も何も知らなかった。
ステージ中に拳銃自殺したとか焼身自殺したとか、死亡理由もいろんな説があり真実が分からない。
そんなロドリゲスという「謎のアメリカ人」を追いかけたドキュメンタリー。

追いかけるというか、真実が全て分かっている状態から構成が練られていると思うんだけど、この構成が見事で下手な脚本の映画見るより数倍面白い。
なにより、か細いのになぜか力強い彼の歩く姿をドリーで映しているところなど、なんて映画的で美しいシーンなんだろう。

本当かどうか「全米で6枚売れた」っていう証言があるけど、その6枚のうちの1枚のダビングテープが南アフリカに持ち込まれる奇跡と、たった一つの個人所有のテープが南アフリカ中に広まる奇跡。

2013年11月4日月曜日

映画『きっと、うまくいく』

2009年 監督:ラージクマール・ヒラニ
製作国:インド
at ギンレイホール




予告編を見る限り、独自のミュージカル映画を量産してきたインド映画がハリウッドの娯楽映画に毒されてB級にもならないつまらない映画を作ってしまったんだと思った。
予告編の「ランチョーは超天才の自由人」ってところのどや顔なんてひどすぎる。
170分もあるし予告編の印象も悪いけど、一応見てみる。

で、見た感想は、なんか思っていたより面白かった。
まさにB級という感じで。
映画だからこそできる自由さ。
そしてできすぎているけどしっかり伏線張って徹底的に楽しませるストーリー。
上空からの撮影とかCGとか、無駄に金をかけている豪華さ。
2曲だけだけどミュージカルもあり。セットや衣装も豪華。

予告編のどや顔のところは、何か難問を解いてどや顔しているのかと思ったら全然違うシーンだった。

インドで歴代興行成績ナンバーワンらしい。
インドに馬鹿が増えなければいいけど。。。
この映画の主人公達に共感して真似したら9割方挫折してひどいことになるだろうから。
人生狂って「強姦を輸出」されたら迷惑だし。

この映画が高らかに謳っている「詰め込み教育は駄目」はインドだと青天の霹靂並みの衝撃なのかな。
ストーリーのテーマにまで据えて何度も声高らかに主張なんて、日本や欧米の映画ではまず作られないだろうし。
詰め込み教育の象徴であるサイレンサーが普通に社会で成功しているところがミソ。
そういえばこないだテレビでやっていたけど、秋田の国際教養大学ってところは凄いな。
いわば全校生徒がランチョーみたいな感じ。
もうちょっと遅く生まれていたら行きたかった。

フィクションの娯楽映画だから別にいいのかもしれないけど、結構やっていることがひどい。
サイレンサーに対する仕打ちなんか、もう悪質ないじめだよね。
嬉々として改竄されたヒンドゥー語でスピーチするサイレンサーが哀れだった。
他にも自分の都合で飛行機の離陸を止めて、なんか格好よく走り去っていったり、酔っ払って学長の家の玄関にしょんべんかけたり。
しょんべんって中学生かよ。大学生は普通そんな非常識で低俗なことはしません。
(ん?なんか僕も大学のゼミの合宿中似たようなことをした記憶がうっすら脳裏をよぎったけど。。)

ヒロインは一応美人ということなのかな。
インドでは美人なのだろう。
でも昔見たルノワールの『河』に出ていたインド少女は美人だったな。インド映画じゃないからか。

映画『カルテット!人生のオペラハウス』

2012年 監督:ダスティン・ホフマン
製作国:イギリス
at ギンレイホール




引退した老音楽家達が暮らす老人ホームが舞台。
かつて四重唱で名を馳せたレジー(トム・コートネイ)、シシー(ポーリーン・コリンズ)、ウィルフ(ビリー・コノリー)の3人もここで慎ましく(?)余生を過ごしていた。
この老人ホームビーチャム・ハウスが存続の危機にさらされる中、カルテットの最後の一人ジーン(マギー・スミス)がやってくるのだが、ジーンとレジーにはある確執があり。。

マギー・スミスがどうも苦手なのだけど、全体的にはまあ面白かった。
ダスティン・ホフマンの監督第一作。
もう75歳なんだね。

脇役の老人達はみな有名な音楽家達らしい。
クラシックからジャズまで。

トム・コートネイより存在感があったので最初主人公かと思ったウィルフ役のビリー・コノリーはコメディアンとして有名な人らしい。