2016年6月26日日曜日

映画『最愛の子』

2010年 監督:ピーター・チャン
製作国:中国/香港
at ギンレイホール




冒頭のごちゃごちゃした電線を無造作に引っこ抜いたりつなげたりしているシーンがこりゃ絶対感電死するパターンじゃんと思って怖くて目を細めていたけど全然そんな話じゃなかった。

3歳の子供が誘拐されて両親は必死に探し続けるのだが時は過ぎ行く。
3年後、ついに息子の居場所を突き止めるがやっと見つけた息子は自分たちのことを忘れていた。

生みの親そして育ての親の子供に対する想い。
こりゃ絶対泣けるわと思ったけど泣くまではいかなかったな。
でも面白かった。

消える前のポンポンが誰かに似ているなと思っていて今気づいた。千鳥のノブに似ているんだ。

子供を誘拐された親が集う会がいやに怖かった。
頑張れ頑張れコールは宗教に近い。
でもリーダー格のハン(チャン・イー)がいいやつだった。この人も誰かに似ているんだよな。

実話が元になっているらしく、ラストで実際の関係者達と俳優たちが会うシーンが挿入されている。
ティエンを演じたホアン・ボーなんて田舎の冴えない親父みたいだったのにおしゃれな帽子かぶったりしちゃっていかにも芸能人的なオーラをかもし出していた。
育ての母親リー・ホンチンを演じたヴィッキー・チャオなんか本当に田舎の農家の娘みたいに野暮ったかったのにばっちり化粧してドレス着たりしてめちゃくちゃ綺麗な芸能人だった。
ホアン・ボーは2013年には「最も集客力のある俳優」に選ばれるほどの有名人らしい。
ヴィッキー・チャオって名前だけはなんか聞いたことあると思ったらチャン・ツィイーらと並ぶ「中国四大女優」の一人らしい。
ここのところアジア映画を全然見なくなったのでついていけていない、っていうのはどうでもよくて、なによりラストでそんな俳優達の素の姿なんて見たく無かったよということ。
少ししらけてしまった。

監督のピーター・チャンはなんか聞いたことあると思って調べてみたら『君さえいれば/金枝玉葉』の監督だ。
アニタ・ユンは元気かな。

映画『ビューティー・インサイド』

2015年 監督:ペク
製作国:韓国
at ギンレイホール







ウジンウジンウジンウジン・・・
つまりそういう話だ。

昔チャウ・シンチーの映画だったかな、映画制作者たちが企画会議している場で各自突拍子もないアイデアを出し合いながら「それいいね!」「それは売れるね!」と大爆笑しながら軽いノリで企画を決めているシーンを思い出した。
毎朝起きると人格記憶はそのままだけど姿は全くの別人になる、ってどうよ?いいね!それサイコー!
みたいな。
でもなんか調べてみると2012年のインテルと東芝の合作ソーシャル・フィルム「*The Beauty Inside」が原案らしい。

上野樹里がちょろっと出ている。
他にもウジン役を演じた人たちは皆そこそこ有名な俳優さんたちらしい。
あと蒼井そらも名前だけ出てくる。名前が出てきたときに劇場内が老若男女爆笑していたように思うのだけど

ヒロインのハン・ヒョジュが凄い美人なのでそれだけで見る価値あると思う。

2016年6月13日月曜日

映画『ディーパンの闘い』

2015年 監督:ジャック・オーディアール
製作国:フランス
at ギンレイホール




スリランカの戦禍から逃れるためにフランスにやってきた元兵士のディーパン(アントニーターサン・ジェスターサン)。
一人でではなく、家族の方が難民として受け入れられやすいということで、他人のヤリニと母を亡くした少女イラヤルの3人の擬似家族として。
パリ郊外の団地で管理人の職を得たディーパンはそこでヤリニとイラヤルとともに嘘がばれないようにしながら新たな生活を始める。

最後にめっちゃディーパンが活躍してガキどもを始末するんじゃないかという予感と、もう戦いから離れて欲しいという希望が半々で、グループのボスもヤリニにはなんか優しい一面を見せるし、最後はどうすんだろうと思いながら鑑賞する。

ボスを演じたヴァンサン・ロティエはどっかで見たことあると思っていたけど全くの気のせいらしかった。
一応『ムード・インディゴ うたかたの日々』とかいう映画に出ていたらしいが記憶にないし。
エドワードノートンに少し似ているから勘違いしたのかな。


以下ネタバレ
最後はフィルムノワール的雰囲気。
無双すぎて少し引く。
車に乗っているときにディーパンが脳天ぶち抜かれたように見えたのだけどなんだったんだろう。
あそこで実は死んでいてイギリスの風景は幻想ってことなら、あの無双っぷりも納得がいくし悲しい結末だ。
敢えて死んだ瞬間を分かりづらくしてどっちとも取れるようにしたのかな。

映画『サウルの息子』

2015年 監督:ネメシュ・ラースロー
製作国:ハンガリー
at ギンレイホール




冒頭からピンぼけで何も見えない、と思ったら一人の男がカメラの前にやってきて無表情な顔がくっきりと映し出される。
この男が主人公のサウル。
ホロコースト映画。
ハンガリー系のユダヤ人のサウルは、同胞たちの死体処理を行う特殊部隊ゾンダーコマンドの一人として働いている。
ゾンダーコマンドも最後にはガス室に送られて処刑される運命らしい。
ガス室の血や糞尿処理、死体の運搬、灰の処分等々の重労働をいずれ殺す予定のユダヤ人にやらせる、って物凄い合理的だけど恐ろしいほどに残酷だ。
漫画やら映画やらで「お前に人の心はないのかー!」みたいなセリフを吐く状況が生易しく思えるくらいだ。もう殺す規模が違うし人でなしの数も多すぎる。

カメラはサウルを超接近して追いかけ続ける。
スタンダードサイズの狭い画面の中央にはいつもサウルがいて、サウルの位置にしかピントがあっていないので画面の奥はピンぼけしてほとんど何も見えない。
他のゾンダーコマンドの仲間もサウルと同じ位置に来たときだけやっと顔が判明する。
サウルの位置にしかピントが合わないっていうのは、耐え難い作業に視界や心を閉ざすしかないサウルの心情を表しているのかな。
それに周りの残虐な光景をそのまま映していたらその光景に訴えてくるものがありながらも、どこか映画という虚構から作り物の胡散臭さを感じてしまっていたかもしれない。
にしてもだ、回りの光景がほとんどピンボケしているっていうのはまあ、とにかく疲れる。

エキストラは凄い数がいて、結構な熱演をしていると思う(全裸だし)。ほとんど映っていないけど。
すっぽんぽんで物のように床をずるずる引きずられるのは痛そうだった。

サウルってもうだいぶ精神がおかしくなっていたんだろうな。
ある目的のためだけに、それが自分への救いでもあるかのように、仲間への迷惑を顧みずに突き進むサウルが悲しい。
仲間から見たら大迷惑なサウルだが、仲間たちが異常にサウルに優しい。
昔から知っている同郷の友とかだったりするのだろうか。

ラスト近くの少年のシーンは怖かった。
さんざん地獄を見せられた後に違う世界から来たかのような地獄と全く無縁な少年がするーっと現れるから「なにこれ」と思って一瞬凍りついてしまった。
「違和感」って最近の映画じゃめったに見なくなったな。いいシーンだった。