2019年3月31日日曜日

映画『おかえり、ブルゴーニュへ』

2017年 監督:セドリック・クラピッシュ
製作国:フランス
at ギンレイホール




ブルゴーニュでワイン造りを営む一家の三兄弟の物語。
長男ジャン(ピオ・マルマイ)が10年ぶりに戻ってくるところから始まる。
戻った理由は父親が危篤だから。
時期はちょうど収穫期。家業を支えてきた長女ジュリエット(アナ・ジラルド)と、別の大規模ドメーヌの婿養子になっている次男ジェレミー(フランソワ・シヴィル)、そしてジャンとあと昔からいるらしい従業員のおっさんの4人は収穫に向けての準備を始める。
で、ほどなく父親が亡くなって、多額の相続税支払いという問題に直面する。
家を売るとか畑を売るとか、とにかく危機。
そして3人は3人共どれぞれ悩みや問題を抱えていた。
久しぶりに揃った3兄弟がワイン造りを通してぶつかり、前に進んでいく物語。

なかなか面白かった。
ストーリー自体はそんなに凝ったものではない。
父親との対立で家を飛び出した長男が(中学生か!)父親の本当の思いを後半で知るところとか、言いなりだった義父に思いをぶちまける成長した次男とか、ベタといえばベタ。
でもお前なんかクビじゃ!といいたくなるバカなバイトとなぜかいい仲になる等の予想外の展開も見せてくれる(このバイトあんちゃんとのラストのやりとりはほっこり)。
ああ、凝ってないと言ったけど、10年ぶりの兄とのやりとりや、3兄弟の優しや絆、それぞれの葛藤は意外と丁寧に描かれていて、そういうところは凝っているかな。

過去と現在等、時間の概念が色濃いのも面白い。
冒頭でぶどう畑の1年の四季の移ろいが早回しで映し出され、時間が超圧縮される(CGじゃなさそうだし本当に1年以上費やして撮影しているんだろうな)。
しかし長男ジャンと兄弟の間には10年という空白期間が常に横たわっていて、10年という期間は非常に重い。
久しぶりに実家のワイン造りに参加するジャンが収穫日を決める際にジュリエットの意見に反対するのは、長男として、そしてオーストラリアでワイナリーを営む者としてのプライドがありそうだが、俺が俺がで我を通さずに決定はジュリエットに委ねるところなど、兄弟への思いやりとともに10年も音信不通だった引け目が感じられる。
幼い3兄弟がブランコにかけよるシーンはなんとなく見ていたけど、これが最後のほうで繰り返されたときには泣きそうになった。
長男ジャンと兄弟の間には10年という空白期間が常に横たわっていたのだけど、その壁が完全に取り払われた瞬間。

映像的な時間で言えば、窓から外をのぞく幼少のジャンが大人のジャンに変わる、というよくあるシーンだけならともかく、この二人をしれっと共存させたりもする。
あと、道を歩くジャンがあたかも歩きながらその光景を見ているようだが、それは何日か前のかつ場所も違う光景だったりとか。
こういう跳躍好きだな。


収穫でやってくる大量のバイト見ていたら高橋三千綱の『葡萄畑』っていう小説を思い出した。

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