2019年7月28日日曜日

映画『竜馬を斬った男』

1987年 監督:山下耕作
製作国:日本
BS録画


竜馬を斬った男 [VHS]

軒先の俯瞰もタイトルの出し方もすべてがかっこいい。
と思ったら夫婦での水の掛け合いシーンには一瞬びびる。
時代劇なのにサックスのライトなミュージックに乗せてスローモーションでの水の掛け合い。
ショーケンのいたずら小僧みたいな無邪気な笑顔と初々しさの塊のような藤谷美和子。
そして最後に抱き合った後の顔を見られない位置で見せた、血なまぐさい争いの真っ只中にいる男が見せた不安と悲しみの一転した真顔の表情。
かっこいいわ~。

静と動光と影の質の高い映像に加えて、上下の急角度のアングルや 風で揺れるのれん越しの食事風景とか上述のスローモーションとかよく意味のわからない赤く光る泥水とか、意欲的(?)なシーンも挟まってきて面白い。
そこに萩原健一の魅力が乗せられたら最強だ。
優しさ悲しみ無邪気さ恐怖狂気、あらゆる感情がときに過剰なまでに表出して引き込まれる。
火のついた書状食ったのはびっくりしたなぁ。

原作は早乙女貢の短編歴史小説で、歴史ミステリーにも挙げられるけど竜馬暗殺の実行犯は歴史上ははっきりとしていない。


主演佐々木只三郎役萩原健一。
ちょっとしか出ない妻八重役に藤谷美和子。
坂本竜馬は根津甚八。
兄役に佐藤慶。
惣兵衛役に大村崑。
京都での愛人っぽい位置になる芸者役に島田陽子。綺麗。
只三郎と同郷でなにかと絡んでくる小物亀谷喜助役に坂東八十助。喜助の最後の告白は笑ってしまった。
喜助の妻に中村れい子。
桂小五郎役にはいつもなんか笑っちゃいそうになる本田博太郎。『北京原人 Who are you?』のイメージが強烈だからかなぁ。
西郷役の人が戦慄するほどの棒読みで誰こいつと思ったら結城貢。料理の人だね、懐かしい。
宮川助五郎とかいうおとりにされるよくわからない役に原吉実。柔道の人。
あとお龍役の人が有名な裸で飛び出していくシーンやってくれたんだけどなぜかモザイク入っているんだよな。なんかあったのかな。久仁亮子。

2019年7月21日日曜日

映画『ビール・ストリートの恋人たち』

2018年 監督:バリー・ジェンキンズ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




黒人同士の恋愛映画ってそういえば見たことないな。
あってもなにか黒人差別の社会的問題が絡んだものになるんだろうし。
で、この映画も正にそう。
舞台は1970年代で、若い黒人カップルが初々しく、でもかっこよくいちゃいちゃしている。
時間軸が現在と過去をいったりきたりして少しずつ明かされていくのだけど、男の方は現在刑務所に入っている模様。
女性の方は身ごもっている。
親父同士が友達らしい両家集まってのお祝いパーティは、女性の方の母親がなんかやばい人で、恐ろしいことになる。のが前半の山場。
男の方は罪を犯したわけではなく、現場の状況的にも確実に無実っぽい。
女性は恋人を助けるべく奔走する。
とかまあそんな話。

衣装とか小物の色使いが面白くて黒に映えるのね。
雨の日の相合い傘に使った赤い傘の小ささよ!あんな大きさじゃ一人でも傘としての機能を果たさないのに、そんな役に立たない赤い傘に入る二人の後ろ姿が美しい。

面白かったけど119分は長いな。
そのシーンいるの?っていうのも多々あった気がする。
ベッドシーンで事に及ぶまでの異常な長さとか。何回白ブリーフ見せるんだ、まだ履いてんのかい!


あとやばい目をした白人警官が職場の人に似ていた。エド・スクラインって人か。今度教えてあげよう。

映画『マイ・ブックショップ』

2018年 監督:イザベル・コイシェ
製作国:スペイン/イギリス/ドイツ
at ギンレイホール




1950年代のイギリスの海辺の小さな町で、未亡人のフローレンス(エミリー・モーティマー)は本屋を開店しようとする。
しかし契約したオールドハウスは町の有力者ガマート夫人(パトリシア・クラークソン)が高尚なる芸術センターを開こうと目を付けていた家だった。
ガマート夫人の嫌味にも負けずにオープンにこぎつけるが、ガマート夫人の謀略は裏で着々と進んでおり。。。って話。

文学作品が原作だし、予告編見てガマート夫人の嫌がらせに立ち向かう主人公の痛快エンターテインメントを期待したら全くはずれだけど、まあまあ飽きずに見れた。
保守的な町で、数少ない味方は引きこもりの本好きのじいさんエドモンド(ビル・ナイ)と、嫌に聡明な小学生の女の子くらいなので圧倒的に弱い。
でもこの二人との関係にはほっこりする。
本への熱い情熱に加えて、優しさ慈しみ、悪意憎しみ、無知厚顔等々、人間関係の様々な感情がうずまいている。

個人的にはエミリー・モーティマー以外で見たかったな。
こういう意思の強い女性ってエミリー・モーティマーに合ってはいるけど、それ以上にエミリー・モーティマーの顔ってなんか狡猾さとか打算的な雰囲気を感じてしまう。

以下少しネタばれ
何も気にしていなかったからモノローグの話者が誰だったのかが最後に明かされてはっとする。
この時代の人たちを見ていたはずなのに時間の概念が突如現れて、しかも思いは引き継がれていく、っていうね。
これは絶対小説で読んだほうが面白いよなという気はする。
ちなみに作中にも出てくる『華氏451度』をトリュフォーが映画化した際の主演女優ジュリー・クリスティがモノローグの声を担当していたらしい。

2019年7月7日日曜日

映画『ちいさな独裁者』

2017年 監督:ロベルト・シュヴェンケ
製作国:ドイツ/フランス/ポーランド
at ギンレイホール




第二次世界大戦末期の敗戦濃厚はドイツで、若い兵士ヴィリー・ヘロルト(マックス・フーバッヒャー)は部隊を脱走する。
追っ手から奇跡的に逃げ延びたヘロルトはさらに幸運にも打ち捨てられた車の中で軍服を発見する。
何気なく来てみた軍服だがそこを部隊からはぐれたという一人の兵士に見つかってしまう。
しかし兵士は彼を大尉と勘違いし、同行を願い出るのだった。
そこから偽大尉の綱渡りと狂気が始まる。

もうばれそうになったら素直に白状したくもなるが、そんなことしたらそこで命が終わる。
そういう緊張感と機転が面白い、なんて悠長なこと言ってられないくらい、その後まじどうしちゃったの?っていう展開になる。
たかが一着の軍服。だけどその軍服の権力は人格にまでじわじわと染み込んでいく。
権力や力があればなんでもできる。人の命すら自分の一存で決められ、まるで神にでもなったかのようだ。
恐ろしい。

実在の人物の実話に基づいているらしい。

収容所の全てを無に帰すような圧倒的な爆発は無常観が漂っていて美しかった。
あと、コメディアンの躊躇ない自死も印象的。

エンドロールでのヘロルト部隊と現代との対比がコミカルなようでいてなかなか怖い。

映画『家へ帰ろう』

2017年 監督:パブロ・ソラルス
製作国:スペイン/アルゼンチン
at ギンレイホール





アルゼンチンで暮らす仕立て屋のおじいちゃんアブラハム(ミゲル・アンヘル・ソラ)はたくさんの孫に囲まれて幸せそうだが明日から老人ホームに入ることになっている。
孫は大好きだが息子娘たちの冷たさにはうんざりし、家出する。
行き先は忌まわしい記憶が勝る母国ポーランド。
ユダヤ人のアブラハムはホロコーストの生き残りだった。

したたかな頑固じじいによるロードムービーで、コミカルさとシリアスのバランスがよく、ラストは感動できる。
60くらいのばあさんでも「お嬢さん」になるのは面白い。

主演のミゲル・アンヘル・ソラの年輪が刻まれた顔がしぶい。
ミゲルは1950年生まれで特殊な老けメイクをしていたらしい。