2021年4月24日土曜日

映画『声優夫婦の甘くない生活』

2019年 監督:エフゲニー・ルーマン
製作国:イスラエル
at ギンレイホール




1990年、ソ連からイスラエルに移住してきたヴィクトル(ヴラディミール・フリードマン)とラヤ(マリア・ベルキン)の声優夫婦は、さっそく仕事を探すが、イスラエルに声優の仕事がなかった。。
二人の甘くない生活始まる。
ほっこりコメディでなかなか面白かった。

声優っていうのはアニメとかじゃなくて外国映画の吹き替えがメインね。
ヴィクトルは特にフェリーニを崇拝している。
ってところから邦題がついているんだけどなかなか洒落ている。
ヴィクトル役のヴラディミール・フリードマンがそもそも甘くない顔をしているしな。
マフィアか、と思うくらいの凄みをきかせながらコメディしているから笑える。
ラヤの恋する乙女の表情もかわいい。

映画『パリの調香師 しあわせの香りを探して』

2019年 監督:グレゴリー・マーニュ
製作国:フランス
at ギンレイホール




かつての天才が再起するまでの成功譚、みたいなよくある話で最後はすっきり爽快なのかと思ったら、微妙に違っていて、なかなか愛おしい感じの秀作だった。
予告編がそういうありきたりな話に興味を誘導しているのも悪いよな。
「崖っぷち状態の二人は奇跡の調合を生み出せるのか」
って、まあ物語の方向性としては予告編も別に間違ってはいないんだけど。

ディオールで香水を作っていた天才調香師のアンヌ(エマニュエル・ドゥヴォス)は、業界を追われたかなんかで香水作りから手を引いて今では匂いに関する仕事を細々とこなしている。
一方専属運転手レンタルみたいな仕事をしているギヨーム(グレゴリー・モンテル)は娘の親権争い中だが失業寸前。
そんな二人が出会って喧嘩して気遣って協力してほっこりする話。

アンヌ役のエマニュエル・ドゥヴォスがへの字型の口でなんか気難しそうな雰囲気がよく合っている。
それにしてもこの人40代くらいかと思ったら50後半だ。
若いな。ホテルのジョークも半ば本気かと思ったけど本当にジョークだったのか。

ギヨームの会社の社長が常に食事していてたまにくちゃくちゃ気持ち悪かった。

娘役のゼリー・リクソンが溌剌として可愛らしい。
将来有望そう。
公式ページにある「幼いころから母親のサーカス学校でコメディとダンスを学び」っていうのも気になる。


以下ネタバレ


それまで十分楽しかったから気づかなかったけど、だいぶ経ってから、あれ、まだスタートラインにも立っていなくないかと気づく。
で、ようやく動き始めたかと思ったら終わり。
俺達の冒険はこれからだ!
みたいな。
とはいえ、最後は希望と自信にあふれていて後味はけっこうすっきりしているから不思議。
なかなか面白いというか珍しいストーリー展開だよなと思った。

2021年4月10日土曜日

映画『ニューヨーク 親切なロシア料理店』

2019年 監督:ロネ・シェルフィグ
製作国:デンマーク / カナダ / スウェーデン / フランス / ドイツ / イギリス / アメリカ
at ギンレイホール




ニューヨークに住む、またはニューヨークにやってきた人たちがそれぞれ抱える苦悩と、そんな人々の優しさの物語。
製作国の数すごいな。

最初に登場人物がいっぱい出てきてわけわからないが、一応メインはクララ(ゾーイ・カザン)なのかな。
警官である夫が長男にDVしていたことに気づいて、幼い子ども二人を連れてニューヨークに逃げてきた。
といってもカードも使えないし金もないので、盗むしかない。
この辺の悲壮感がクララを演じたゾーイ・カザンの薄幸そうな顔立ちとよく合っている。
それにしてもカザンって。。と思ったらエリア・カザンの孫だった。じゃあ裕福?

ロシア料理店の店長だか店員だかが親切で、困っている人々に次々に手を差し伸べてなにやら心温まるストーリーでも展開されるのかと思っていたけど、ロシア料理店ってそんなに関わってこない。
確かに各登場人物とロシア料理店にはなにかしら縁があるけど、ただそれだけ。
予告編の作りもストーリー捻じ曲げている気がするし、原題は『THE KINDNESS OF STRANGERS』だし、なんかそんなに偉い人が邦題付けたのだろうか。

一番親切なのはアリス(アンドレア・ライズボロー)だよな。
激務の救急病棟の看護婦でありながら、浮浪者への炊き出しやら赦しの会なるセラピー開いたりとか、3人いるのかと思うくらいの働きぶり。
ロシア料理店のマーク(タハール・ラヒム)なんかクララが美人じゃなかったら近づきもしなかったでしょ。
(そう、ちょっとびっくりしたけどクララは一応美人という設定なんだよね)

弁護士のジョン・ピーター(ジェイ・バルシェル)は一応優秀なのかな。
犯罪者を無罪にするくらい優秀だけど、どこかで彼は負け続きみたいなこと誰かが言っていたから混乱する。ただのジョークだったのか?
DV旦那がいい具合に墓穴ほってくれたけど、あれがなかったらどうなっていたんだろう。

個人的にはジェフ(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)が一番良かった。
心根が優しいよね。雇いたくはないけど。

ロシア料理店のオーナーでビル・ナイが出ている。

映画『パピチャ 未来へのランウェイ』

2019年 監督:ムニア・メドゥール
製作国:フランス / アルジェリア / ベルギー / カタール
at ギンレイホール




今予告編を見返すと本当泣きそう。
1990年代のアルジェリアで、寮ぐらしの大学生ネジュマ(リナ・クードリ)はファッションデザイナーになることを夢見ていた。
夜に寮をこっそり抜け出してナイトクラブのトイレで自作の服を販売したりしている。
自由に青春を謳歌している感じだが、のっけから検問の緊張感がやばい。
イスラム原理主義の台頭で、女性はヒジャブを付けていないと身に危険が及ぶほどの情勢になっていた。

これがアメリカ映画とかだったら、偏見やら権力の圧力やらでくじけそうな女主人公が苦難を乗り越えて最後は痛快に決める、みたいな展開になるんだろうな。
圧倒的な暴力・銃の脅威の前ではあまりに無力だ。あと宗教の妄信的な力ね。

嬉しさ楽しさの絶頂が一気に反転するとき、怒りと絶望のあとに虚無感が訪れる。
床に頬をつけた友達の表情が忘れられない。

女性が生きづらい世の中というとつい最近見た『82年生まれ、キム・ジヨン』を思い出す。
けど、なんだろう、生きづらいというかたかだか嫌味言われる程度じゃん、って思ってしまうのでパピチャ見る場合は先に82年生まれを見ておいたほうがいいかもしれない。