2021年10月23日土曜日

映画『ノマドランド』

2020年 監督:クロエ・ジャオ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




リーマンショックで住居を失ったことを機に、ファーン(フランシス・マクドーマンド)は車を住居とするノマド(遊牧民)になる。
デイブ(デヴィッド・ストラザーン)以外は実際のノマド達らしい。
ジェシカ・ブルーダーの世界的ベストセラー・ノンフィクション『ノマド:漂流する高齢労働者たち』が原作らしい。
ノンフィクションの映画化だからノンフィクションのフィクションでドキュメンタリーチックで、、え、どういうこっちゃ。

大自然と文明を行き来しながらノマド達との交流を通して一人のノマドとして強く前を向いて生きていくロードムービー。
この生き方が気ままなのか辛いのかはどっちもどっちだけど、家族や家を大事にする(美学にしている)当のアメリカ人達が一番驚きそうな生き方。
ノマド達の笑顔の裏に刻まれている人生の年輪が熱い。

フランシス・マクドーマンドはもう60超えているのね。確かに『ファーゴ』の時点でそれほど若くはなかったけど。

映画『ブラックバード 家族が家族であるうちに』

2019年 監督:ロジャー・ミッシェル
製作国:アメリカ / イギリス
at ギンレイホール




海辺に住むポール(サム・ニール)とリリー(スーザン・サランドン)夫婦のもとに、週末、家族が集ってくる。
家族団らんとおもいきや、どうやらリリーは末期がんで、この週末に安楽死する計画らしい。
家族も当然知っていて、最後の別れのために集まった。
集まったのは長女ジェニファー(ケイト・ウィンスレット)と夫(レイン・ウィルソン)と二人の息子(アンソン・ブーン)。
そして次女のアナ(ミア・ワシコウスカ)と恋人のクリス(ベックス・テイラー=クラウス)。アナは母親の決断にあまり納得していない。
そして家族じゃないけどリリーの親友リズ(リンゼイ・ダンカン)もやってくる。

出演者8人、で舞台劇のよう。
登場人物達のキャラクターを簡潔に浸透させつつ家族が集まった理由や関係性を小出しに進めていく展開はほどよく飽きさせない。
「これだけは約束して!お母さんを悲しませるようなことだけは絶対しないで」っていう長女が次女に言ったセリフとか、いろいろ集約しているよな。
ただしこれで皆一気にジェニファーが嫌いになるだろうけど。

一応スーザン・サランドンとケイト・ウィンスレットが初共演っていうのが売りらしい。
スーザン・サランドンは個人的にはそんなに気になる女優じゃないのと、ケイト・ウィンスレットは好きだけど上述の通り役柄が嫌だったので微妙で、そんなことよりもミア・ワシコウスカが全てをかっさらうくらい輝いていた気がした。
役どころとしてもいろいろ抱え込んでいるから一番難しいんじゃないだろうか。
あまりに自然に演じているからか、アナの悲しみや苦しみが一番刺さる。
そして泣きながら笑っている表情とか、愛しさにも溢れているから最強すぎる。

あと、家族でジェスチャーゲームやっているのは衝撃だったな。
ジェスチャーゲーム、、家族で!?ひぃーー。

2021年10月9日土曜日

映画『ミナリ』

2020年 監督:リー・アイザック・チョン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




韓国からアメリカに移住してきたジェイコブ一家。
誰も手をつけようとしなかった土地を購入して韓国野菜の栽培で一発当てようと目論む。
まあ、そんなにうまくはいかない。
いろいろあって妻モニカ(ハン・イェリ)の母親スンジャ(ユン・ヨジョン)が子どもたちの世話役としてアメリカにやってくる。

子どもたちに嫌われようが我関せずでぐいぐいいく逞しさが衝撃的で美しい。
栗を口で割ったやつを吐き出して手に乗せて「ほら食べな」とか愛おしい。
新天地で一人夢を追うジェイコブと乗り気でないモニカ。
ケンカが絶えない夫婦とそれを見る幼い子どもたちは次第に土地にも柔軟に馴染んでいく。
そんな家族の物語だけど祖母のスンジャが全部持っていくくらい印象強い。
八面六臂の活躍とはこのことよ。
家族の潤滑油でありコメディエンヌであり救済者であり破壊者でもある。
スンジャというか演じたユン・ヨジョンのための映画みたいな。

映画『ファーザー』

2020年 監督:フロリアン・ゼレール
製作国:イギリス / フランス
at ギンレイホール




81歳で一人暮らしをしているアンソニー(アンソニー・ホプキンス)のもとに娘アン(オリヴィア・コールマン)が訪れる。
恋人のいるパリに行くことにしたからもう面倒見ることができない、とかなんとか。
そんな冒頭の会話の中で既にアンソニーの認識のずれが垣間見えてくるのだが、そのずれはやがて混乱というのも生易しいほどの事態に。パニック。
認知症を認知症患者の視点で描いたっていう映画。

認知症を映画で扱うっていうのは難しいよね。
どうしても深刻な話になるのでエンタメになりにくいし、観客もわざわざ辛い話を見に映画館に足運ばないから。
ド正面から描くなら辛いけどなんかしら(胡散臭くない程度の)感動が待っているとかそんな感じになるんだろうか。
で、この映画はどうかというと、認知症の辛さを正面から扱いながらも本人視点を利用してミステリー映画みたいな脚本演出になっている。
認知症を扱いながらそれをミステリーっていうエンタメに仕上げるとかなかなかいい案に思える。
けどなんだろうね。あまり面白くないんだよな。
エンタメにも真面目にもどちらにも振り切れずにお互いが足を引っ張り合っている感じ。
だからアンソニー・ホプキンスが名演していても、特にラストなんか引き込まれそうなくらい良くはあったが、どうしてもどこか冷めた目で見てしまうんだよな。


是枝監督の映画だった気がするけど樹木希林の母親役が初期の認知症を患っていて、でもその状態がただの一つの状態でしかないとでも言うように本人も周りもありのままに捉えているところがよかったんだけど、検索して探しても出てこないから是枝映画じゃなかったかなぁ。