2023年9月17日日曜日

映画『恋人たちは濡れた』

1973年 監督:神代辰巳
製作国:日本
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自転車の車輪のアップから荷台にフィルム缶を積んだ自転車の後ろ姿。
漕ぐ男はしきりに後ろを振り返りながら坂道を登っていく。
潮風で錆びた倒れかけのようなガードレールの向こうには白波が立つ海。
こけて転がるフィルム。
男はフォルムを巻きながらこんにゃろー
『恋人たちは濡れた』ドン!
冒頭からとんでもなく引き込んでくる。

男(大江徹)は映画館でフィルム運びの仕事をしている。
3日前にこの町に流れ着いたらしい。
しかし「お前中川の克だろ」といろんな人に声をかけられる。
そんな奴知らねーよ人違いだよと。
この辺の設定がよく分からなかったけど、当時のプレス資料で「五年振りに故郷の土を踏んだ男」って書いてあるみたいだから人違いじゃないらしい。
最後まで見てなんとなくそうかなとは思ったが、はっきりそういう設定だと分かるとまたいろいろ見方が変わってくるな。母親シーンとかさ。

プレス資料から
「男が故郷に帰った時、生きる望みを失った男の死を待つ姿があった。女の誘いも、男の友情も、母も、それは遠く離れた過去の思い出しかなかった。そんな一青年の暗い青春を描く日活ロマンポルノ注目の話題作。」
怖いもの知らずな感じは未来に絶望しているからか。
喧嘩をふっかけ、またはふっかけられるようなことをよくするのに、恐ろしく喧嘩が弱い、ってところが愛しい。
喧嘩に負けてハイハイしながら家に帰る途中、喧嘩相手光夫(堀弘一)の彼女洋子(中川梨絵)に蹴られたり頭はたかれたりとかさ。
この光夫と洋子とはその後なぜか3人でつるむようになる。つるむって言い方は違うか。克があんな感じだから仲よさげな関係でもないし。
光夫は世話焼きのいいやつで、洋子はなにやら克に興味がある風なのね。
洋子ちゃんの70年代サイケなファッションが可愛い。

絵沢萠子の全力走りは絵になるなぁ。
かなり早いけど、若い男の全力には及ばない悲しみ。

3人で馬跳びのシーンが一番好きだった。
3人ともへろへろになってんの。脱いでるし。
洋子は克とやりたいんだけど、いつも近くには光夫がいるし、3Pでもいいやみたいなことか。

「本当はよ、俺だってあんたとしたいんだよ」「だけどな・・・」
すごいラストシーンだ。

絡みはエロさはあんまりない感じ。
砂が痛そう。

「まあね」と「こんにゃろー」がしばらく口癖になりそうだ。

神代辰巳は学生の頃映画館でやっていた特集で『四畳半襖の裏張り』と『赫い髪の女』を見たはずなんだけどあまり覚えていないからまた見てみたいな。

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