2005年1月12日水曜日

映画『宮本武蔵』

1944年 監督:溝口健二
BS2 録画


55分の映画。
一乗寺の決闘から巌流島まで。
どんなに詰め込んだ映画なのかと思えば、むしろ張り付くほどに静かな時間の映像になっている。
手前に田中絹代奥に観音を彫る河原崎長十郎武蔵の夜から朝にかけての恐ろしく静寂で美しい時間の推移や突如穏やかな自然に人物を包んでしまう虫の音の時間感覚等々。
静かでかったるいということでは無い。
縦の構図が多用されていて、手前に奥に、人物の配置や動きやフレームインフレームアウト・・・すげー緻密。
カメラは必要以上に動かないが、時間にしろ人物にしろ確実に動いている。
そして殺陣がこれまた凄い簡潔かつスピーディーなのね。武蔵が威圧で相手を押しながらそのままのスピードで「いやぁ」と振り下ろす刀と同時に左足がぴょこんと後ろに跳ねたり、かっこいいんだわ。
だがアクションの快楽が静謐を征服しそうになるとアクションはさっさと打ち切られる。
静謐の軸が一本通っていた上での動きの振幅のリズムが心地よい。

武蔵対小次郎、小次郎が鞘を海中に投げ捨てると武蔵が言うお決まりの「小次郎負けたり」のセリフ。
「なにぃ!」と憤る小次郎に武蔵がさらに「負けたり負けたり」と連発する。
駄々っ子が負け惜しみで理不尽な事を勢いで喋っているみたいで面白い。
小次郎も無視すればいいものを「くっ!く!だまれぃ!!」と悔しがったりして、本当小学生の喧嘩みたい。茶目っ気だな。

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