2005年3月13日日曜日

映画『キシュ島の物語』

1999年 監督:
BS2 録画




ペルシャ湾に浮かぶ小さな島キシュ島を舞台にした3人の監督によるオムニバス。

第1話『ギリシャ船』 監督:ナセール・タグヴァイ
海辺に横たわる難破船には海から様々な物が流れ着く。
今日は大量のダンボールが流れ着いていた。
海辺で雑貨屋?を営むシャンペは大量のダンボールを頂いて店を修復する。
色とりどりのダンボールが妙に綺麗。
しかし妻の様子が段々とおかしくなってくる。ダンボールが怖いらしい。(アラブ人がとりかえしにくるのを怖がってる?)
シャンペは祈祷師に妻に憑いた悪霊を払うように依頼する。
この悪霊払いの儀式をするところにもダンボールが敷き詰められていたりする。
夫にとってはダンボールは海からの贈り物だったけど、妻にとっては外国の脅威だったのかね。

第2話『指輪』 監督:アボルファズル・ジャリリ
大学に進学するつもりだったハフェズは家庭の経済的困窮から進学を諦め、一人キシュ島にやってきた。
彼は仕事を見つける。海辺の家に住み、そこにやってきたタンクローリーにガソリンだか海水だかを入れる仕事。
他にも鉛で釣りの錘を作って魚釣って売ったり。
黙々とあれこれ考えて商売をしていくハフェズを黙々と映しとっていく。
最後はほろっと。

第3話『ドア』 監督:モフセン・マフマルバフ
なんにも見えない地平線を手前から奥に向かってドアが歩いていく。
カメラは固定でドアはどんどん小さくなる。
そこにふらふらと右側から自転車に乗った男が現れてドアに近づいていく。
この二つが近付きつつ、奥に向かって遠くに小さくなりつつ。
って動きの加え方がもう半端なく凄い。
空と地平線しかない上にカメラも固定なのになんて豊かな動きなんだろうか。
それにドアをかついで歩いているおっさんは一体何?ってところから自転車の男が近付いていくことで何か始まる!という予感まで、映画の冒頭として見事すぎる。
この後、ドアのアップに切り替わり、自転車の男の手がドアをノックすることで物語が幕開ける。
ドアっていうのが飽くまで家のドアであり続け、地面の上に置かれたドアの内側は忠実に家の中なのね。(子ヤギにとってはそんなこと関係ないんだけど)
ドアが家の象徴になっていて、登場人物のほとんどがドアだけでなくドアが付いている幻の家をそこに見ている。ごく自然に。
ドアを担いでいるおっさんに直接話しかければいいものをわざわざドアをノックして、おっさんも家から出るみたいにドアを開けて顔を出して客と話したり。
そんなドアに"ただの板切れ"という概念が付与されたとき、対価なく家の全てを失った喪失感のみが残る。
黒いマスクから除いた娘の白い歯も良かったな。

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