2005年10月29日土曜日

映画『天使を誘惑』

1979年 監督:藤田敏八
BS2 録画


天使を誘惑

強気でふてぶてしいがその実繊細な男を演じる三浦友和がいい。
原作高橋三千綱。原作とは大分設定が変わっている。
同棲生活を送る上杉浩平(三浦友和)と佐野恵子(山口百恵)の関係描写は原作に及ばないけど、いくらかポイントを押さえつつ短くまとまっている。

映画のほうは役者達の魅力が楽しい。
三浦友和を筆頭に友人役でおっとり顔の火野正平、佐野恵子の素朴な兄役で蟹江敬三、恵子の母役に佐々木すみ江、恵子の見合い相手役に岸部一徳、編集長役に岸田森、恵子の元上司で破滅していく悲しき男に津川雅彦、そしてロッドスチュワートに上杉浩平の父役で大友柳太朗。
上杉浩平の父はとぼけた雰囲気がかなり面白いキャラクターになっている。しかも大友柳太朗だし。
山口百恵は原作で読んだ佐野恵子の印象とは少し違うのだけど、かっこいいからまあいいや。

映画『超酔拳』

2002年 監督:ラウ・カーリョン
BS2 録画


超酔拳

ラウ・カーリョン監督主演。
ラウ・カーリョンは当時70近いじいさん(1935生まれ)なんだけど、ばりばりにカンフーアクションを見せてくれる。
数々の名作カンフー映画の監督や武術指導をしている人っていう認識しかなかったんだけど、調べてみるとこの人のおやじさんは「黄飛鴻の弟子の林世榮に中国武術の「洪拳」を学んだ名武術家・ラウ・ジャーン」という人らしい。
なんだか正統な武道家だな。

映画のストーリーの方はこれまた正統に裏切り修行復讐といった要素が詰め込まれる。
ただ、リュー・チャーフィがあまり見せ場も無いまま意味なく消えていったことと、途中からいきなり生意気な若者二人を中心にした騒々しいコメディーになるのは不満だが。

タイトルが表示されるまでのオープニングは最高にかっこいい。

2005年10月22日土曜日

映画『アルゴ探検隊の大冒険』

1963年 監督:ドン・チャフィ 特撮:レイ・ハリーハウゼン
BS2 録画


アルゴ探検隊の大冒険

途中ちょっと飽きたな。

ある王国が滅ぼされて、難を逃れた王子が復讐を決行しようとするのだがちょっとその前に冒険しようってことで、金色の羊の毛皮を取りに世界の果てまで行ってきますっていう話。
元王子ジェイソンは女神ヘラに加護されている。加護といっても5回だけ助言を与えることをゼウスによって認められたというだけなのだが。
神話の神々が普通の人間の姿で登場する。一応普通の人間より何十倍もある巨人らしい。

ダイナメーションの怪物特撮シーン登場前にもなかなか面白い特撮を見せてくれる。
白い煙がもわっと現れたと思ったら煙が人の形を成し、そのまま女性の姿になる特撮とか思わずすげえとつぶやきたくなる。
あと、特撮じゃないんだろうけどジェイソンとヘリオスが会うシーンでの空が凄い。
真っ黒な雲や太陽の光を浴びて白く発光する雲が複雑に層を成していて、それがギリシャ神殿の遺跡とマッチしていかにも「古代です」って雰囲気にどきどきする。

初めの怪物は映画が始まって30分を過ぎたあたりでやっと登場。
しゃがんだ姿の巨神像が突然首だけきりきり動かして下にいるありんこみたいな人間と目を合わせる。
動き出すどでかいブロンズのタロス。
勝てるわけない。
でも勝つ。

次に盲目の老人をいじめる怪鳥ハーピーが2匹。
大きさは人間サイズなんだけど顔が結構怖い。
強くはないが一応ハーピーはゼウスの使いなので扱いに困るっていう意味で強い。

次に人魚のおじさんが出てくる。
こいつがくそでかい巨人。
しかもダイナメーションじゃなくて実物のおっさん。
登場シーンも去るシーンもかっこいい。

そんで首が7つある蛇みたいなヒドラ。
ちょっとでかいってだけ。
首7つで一斉に噛み付いたら人間なんてひとたまりもないのだが、とりあえず勝つ。
(ヒドラにとってはちょっと太い針程度の剣がぷすっと刺さっただけで絶命)

ヒドラの牙から生まれる骸骨兵。
コルキス王はこの骸骨兵が普通の兵士より強力な存在として絶大の信頼を置いているようだが、結局は骸骨ってだけで強さはただの剣を持った兵士と一緒だよね。
勝つ。

2005年10月11日火曜日

映画『サボタージュ』

1936年 監督:アルフレッド・ヒッチコック
BS2 録画


サボタージュ

小気味の良いサスペンスと勝手に思って見始めたのだが悲劇色が強い。

何者かによって行われた発電所での破壊工作により突如停電になる夜のロンドン。
家の明かりや街灯だけでなく車のライトまで律儀に消灯。
停電で上映不可になった映画館では金返せのシュプレヒコール。
映画館の受付で対応するは小柄で可愛い女性(シルヴィア・シドニー)。
映画館の隣の八百屋で働くテッド(ジョン・ローダー)は小柄な女性に好意を持っている様子。
しかし小柄女性は映画館支配人バーロック(オスカー・ホモルカ)の妻。
人妻じゃあテッドもおいそれと手出しできないわな。
夫人も夫のバーロックを心から信頼しているし。
しかし停電事件の犯人はバーロック。
そんで八百屋のテッドは実はバーロックを探るために潜入捜査を実行中の刑事。

冒頭は何やら破壊工作のサスペンスと男女のロマンスで楽しそうな展開を期待するが・・・
驚くほどの緊張感を見せてくれるシーンなど面白いのだがちょっと後味はすっきりしない展開。

2005年10月10日月曜日

映画『自来也 忍術三妖伝』

1937年 監督:マキノ正博
BS2 録画


パッカパッカ、馬に乗った武士達が駆ける。
たどり着いたのは真っ黒な夜空にほの白く浮かび上がる城。
城に向かって火矢を放つ武士達。
いや、矢の放ち方も知らない変な武士が一人。
矢を引く右手を離した瞬間弦を持つ左手が矢をことのほか強く握っていたらしく、宙に放たれることもなくへなへなと弦に引っ付いてしなだれる矢であった。
とはいえ他の優秀な武士により、城は落とされる。
城主の息子はさらわれる。
殺さずさらったのは子供を殺すのはしのびないから、とは上辺の言で結局は土倉に放りこんで殺そうとする。
「泣け!叫べ!吼えろ! ハハハハハハハ」
放り込まれたぼんぼんを救ったのは謎の仙人(香川良介)だった。
ぼんぼんは仙人に育てられる。
10数年後、ぼんぼんは立派な青年になる。
父母を殺した武士達の主要人物佐久間正盛(河部五郎)、五十嵐典膳(尾上華丈)、矢尾郡太夫(志村喬)は一国の城主とか京都守護職だとかそれなりの人物になっている。
仙人に育てられ自来也(片岡千恵蔵)となったぼんぼんは満を持して復讐を決行するのであった。

56分の短い時間でテンポよくぽんぽん展開する。
決めの部分で所々入る歌舞伎の口上のような台詞回しも聞かせてくれるし、綱手姫(星玲子)とのコメディのようなやりとりがあったり、千恵蔵の華のある立ち回りがかっこよかったり、姿を消したり水面を歩いたり等々妖術がシンプルに面白かったり。
もちろん巨大蝦蟇も出てくる。煙吐くだけで最初は何これと思ったけどこの不気味な蝦蟇はばくばく人を食ったりするから面白い。蝦蟇の模型はちゃっちいのだけれどあまり光をあてなかったりローアングルで目の光だけ不気味に強調したりして蝦蟇かっこいい。

面白いくらいに勧善懲悪物で、ラストに自来也が野太い声で「泣け!喚け!叫べ!吼えろ! フィャハハハハハハハ」と笑うのはどっちが悪なのか分からないくらいに痛快で恐ろしい。勧善懲悪だから自来也が紛れもなく正義なんだけど。
自来也と同等の敵に大蛇丸(瀬川路三郎)がいるのだけど、このおっさんは悪というよりただの恋に不器用なかわいいおっさんじゃないか。
庭先で自来也に恋焦がれて(?)うつむく綱手姫を感慨深げに眺めていたり、棒読み風の台詞回しだってお茶目だし。
まあとりあえず悪ということで。自来也の活躍を盛り上げる存在。
この映画は正月に同じくマキノの『血煙高田馬場』と同時上映され、大ヒットを飛ばしたらしい。
この2本がセットって反則的組み合わせだよなぁ。子供達は見た後かなり興奮したんだろうな。

[自来也について]
1806と07年に鬼武が書いた読本『自来也説話』において自来也が日本で初めて登場する。
宋の笑話的な説話集『諧史』という本に我来也(我来たる也)という盗賊の話があって、この話にヒントを得て『自来也説話』が書かれたとかなんとか。詳細は知らん。
自来也はその後浄瑠璃やら合巻やら歌舞伎やらに引き継がれていく。
今の自来也物語の大まかな設定を作り、自来也から児雷也に変わったのが合巻の『児雷也豪傑譚』(1839~1868)とのこと。
30年近いくらいの年月で4人くらいの手によって書かれたが未完。
河竹黙阿弥の歌舞伎狂言『児雷也豪傑譚話』は1852年。合巻『児雷也豪傑譚』43編の内最初の10編を脚色して作られる。
まあ、後は明治大正に講談でさらに広まるわな。
現代においては伝奇小説やらゲームやら漫画なんかでも取り上げられる。
漫画の有名どころといえば少年ジャンプの『NATUTO』っていう忍者漫画かな。
自来也で検索したらいっぱい『NATUTO』関連のページが引っかかったのでびびる。
ちなみに我来也の話は盗みに入った家に必ず「我来也」と書き残す盗賊がいて、ある時役人が我来也とおぼしき人物をとっ捕まえたわけだけどこの男が我来也だという明確な証拠がない。
とっ捕まった男は真の我来也なんだけど、上手いこと看守を騙して弱みを握った上で脅し、まんまと叩きの刑だけで釈放されるという話。
蝦蟇とか妖術とか出てこないみたい。知恵のある盗賊のお話。

2005年10月9日日曜日

映画『ドラゴンロード』

1982年 監督:ジャッキー・チェン
民放 録画


ドラゴンロード〈デジタル・リマスター版〉

ジャッキーは名家のぼんぼん役。
ストーリーの軸としては、国宝を海外に持ち出そうとする悪の集団がいて、ジャッキーが最後に倒すって話があるのだけど、一度悪に負けた後に修行をしなおして強くなるって過程は無い。戦いは一発勝負。
修行過程がない代わりに高い塔にすえられた金色のボールを4チーム総勢6000人(そんなにいたかなぁ)が取り合うゴールデン・ポイントというゲーム、シャトルコックと呼ばれる羽の付いた小さな玉を地面に落とさずパスやリフティングしながらゴールに入れるサッカーのようなドラゴン・キッカーといったスポーツシーンが入っている。
全体的なストーリーはぼやけて薄味。ヒロインとの恋愛もその後一体どうなったんでしょう。
まあゴールデン・ポイントやドラゴン・キッカー、そしてラストのボス戦とアクションシーンが面白いから別にいいのだが。
ゴールデンポイントなんて日本の学校じゃまず許可されないような危険きわまりないスポーツ。
ドラゴン・キッカーはただすげーなと思う。

この映画のジャッキーがひどく弱い。
常人に比べたら強いのだがボスとの力の差は歴然とある。そして尺的にジャッキーが修行しなおす余裕も無い。
がむしゃらに若さで頑張る。
これ以降の作品ではおなじみになる屋内にある様々な小物や道具を効果的に使用した縦横無尽に飛び跳ねるアクションで頑張る。

この映画には通称大陸版と呼ばれるバージョンがあるらしい。
冒頭で展開されたゴールデン・ポイントのシーンはラストに来ていてしかももっと長いらしい。
他にも大分編集が違っているよう。

2005年10月8日土曜日

映画『城取り』

1965年 監督:舛田利雄
BS2 録画


舛田利雄、石原裕次郎コンビが送る時代劇。

時は戦国末期、上杉領にやってきた浪人車藤三(裕次郎)は、友人の上杉家家臣俵左内(千秋実)を訪ねる。
上杉家は来るべき家康との合戦に備えていたが、その合戦の間に上杉領をかすめとろうとたくらむ伊達家がいた。
伊達家は出城として上杉領の北に多聞山城を急ピッチで築いている。
家康との合戦に際し、背後にあるこの多聞山城は鼻先のおできのように邪魔な存在だ。
その話を聞いた車藤三は多聞山城を落としに旅立つ。俵左内とたった二人で。
道中、伊賀を抜け出した彦十(石立鉄男!)や多聞城のある機屋部落出身のお千(中村玉緒)や口上が上手い白粉屋長次郎(芦屋雁之助)を仲間にする。
多聞山城にやってきた一行は城建設の強制労働に従事させられる機屋部落の人たちを味方にして城取りを実行する。

原作が司馬遼太郎で脚本が池田一郎と舛田利雄。
裕次郎演じる車藤三とは仮の名前で実は天下の傾奇者前田慶次郎だった。
池田一郎はこの前田慶次郎を勉強しなおし、晩年に傑作時代小説『一夢庵風流記』を書き上げた、らしい。
確かにこの映画の前田慶次郎はそんなに魅力的じゃなかったな。
自由人を気取っていても結構常識的思考と行動をするただの暇そうな浪人だもん。あまり強そうに見えないし。

裕次郎が時代劇ってあまり合わないな。動きが遅いっていうか、剣をふるう姿が様になってないというか。
多聞山城の城主赤座刑部とその右腕で兵法修行者渋谷典膳が敵として配置される。
藤三(裕次郎)と渋谷典膳(今井健二)との一騎うちは城内の狭い場所でほとんど殴り合いみたいな立ち回りでこれはまともに剣戟をやらせない演出が上手い。
ある程度は迫力ある戦いになっているから。
しかし赤座刑部との一騎うちは微妙ですよ。赤座刑部を演じるのは近衛十四郎ですよ。殺陣のスペシャリストですよ。
槍で稽古している姿を同じく槍で稽古していた千秋実と比べると、スピード、腰の落ち着き、たたずまい、全てにおいて比べ物にならないほど上手い。
そんな近衛十四郎とど素人の裕次郎が一騎うちしていいのか。
と、そこはまあ剣と剣が触れ合うときに火花を散らしてみたり大きな効果音入れてみたり裕次郎に荒々しい魅力をいかした攻撃をさせてみたり忍者のような術を使わせてみたりで演出が頑張る。

136分ある。
長いが途中で見るのをやめようというほどではない。
でもいまいち盛り上がりにかけるまま決戦が始まるし、重要な人物が散っていっても少しも悲しくないのだよね。

2005年10月2日日曜日

映画『海を飛ぶ夢』

2004年 監督:アレハンドロ・アメナーバル
at ギンレイホール


海を飛ぶ夢

なんかこの映画見たら『コーラス』の話が非常にうさんくさく思えてきた。この偽善者めっていう。

ラモンは25歳の時、浅瀬にダイブして海底で首を強打。それ以来四肢麻痺となって20数年。
彼の面倒を献身的に見続けたのはラモンの兄夫婦とその息子だった。
首から上しか動かすことのできないラモン。
大らかでユーモアもあり頭もいいラモンだが、彼は死ぬことを考えている。尊厳死。
尊厳死を法律で認めてもらおうと彼は死に向けて行動を始める。

題材が題材だけにいろいろ考えることがあるはずなのだろうが・・・
特に書きたいことが無い。

映画『コーラス』

2004年 監督:クリストフ・バラティエ
at ギンレイホール


コーラス メモリアル・エディション

音楽の道に挫折したクレマン・マチュー。
マチューは音楽教師として問題児や身よりの無い子が集まる寄宿舎に赴任する。
いたずら好きのガキども。
校長を中心に教育理念は「やられたらやりかえせ」

まあ、赴任してきた音楽教師が少年合唱団を作って歌を教えて、子供達はなんだかいい子になっていくって話。

翻訳の仕方の問題なのか分からないけど、マチューが「なつかせる」「なつかせてみせます」といった類の言葉を何度か発しているのが気になる。

2005年10月1日土曜日

映画『リアリティ・バイツ』

1994年 監督:ベン・スティラー
BS2 録画


リアリティ・バイツ (ユニバーサル・セレクション2008年第9弾) 【初回生産限定】

ウィノナ・ライダーにイーサン・ホーク。
ベン・スティラーが出演も兼ねて監督。
(そんで製作ダニー・デヴィート)

TV局のADリレイナ(ウィノナ・ライダー)と、IQが高いらしいが働く意欲のないトロイ(イーサン・ホーク)と、男100人斬りでも達成したいのか寝まくるGAP店長ヴィッキー(ジャニーン・ガロファロー)と、ゲイのサミー(スティーヴ・ザーン)は大学時代からの親友。
って話。

アメリカジェネレーションX世代の青春映画。
リレイナ=ヘビースモーカー、逆切れ女、被害妄想女、八つ当たり女、タバコを見知らぬ男の車内に投げ捨てる悪徳女、卒業生総代。
トロイ=無職、仕事を12回首に、ミュージシャン、抱いたグルーピーの女は数知れず、読書が好き、リレイナが好き。

久しぶりに映画でアメリカ人っぽいアメリカ人見たなという感じ。
アメリカ人は僕の中では90年代映画の中の印象が強いから。