BS2 録画
クラブ歌手のアイーダ(クラウディア・カルディナーレ)はマルキーニという男に騙されて仕事を失う。
マルキーニ(←偽名)の弟ロレンツォ(ジャック・ペラン)16歳は兄の罪を償うため、というか年上のアイーダに一目ぼれしてあれやこれやと世話を焼く。
金を貸したり、ドレスをプレゼントしたり。
金持ちのぼんぼんロレンツォのひたむきな純情が幼くて滑稽でありながら、なんでしょう、この汚しちゃいけない大きな聖性は。
アイーダを追ってビーチにやってきたロレンツォは白のスーツ姿。場違いな格好と幼さが滑稽なんだけど、白の無垢さが痛々しく輝いている。
ロレンツォを演じるのは美青年ジャック・ペラン。
王子様といった感じの青年ジャック・ペラン(『ロバと王女』ではそのまま王子役)は最近では『コーラス』(2004)で親子出演している。
ロレンツォの純粋な視線を一身に受け止めるアイーダはというと、経済的に貧窮した生活とふりかかる災難に人生を絶望しながらも、健気なまでにまっすぐ生きている悲しい運命の人。
アイーダはイタリアのCC、クラウディア・カルディナーレ。
クラウディア・カルディナーレの強いまなざしが好きなんだけど、ラストの方でロレンツォへの感情が恋に変わっていった後の視線が強烈。
憂いをたたえた強い視線で無言でじっと見つめられたらたまらない。
悲しい思いばかりする人生を歩みながらも時に少女のように無邪気な心優しいアイーダの喜怒哀楽をよく演じている。
アイーダがバンドに戻ったときに強がって「私にもここで働く権利があるわ」とつんとした顔で主張すると、間髪入れずに元恋人のバンドマンにはたかれるシーンがあるのだけど、はたかれた瞬間のアイーダの驚きの表情は面白かったな。というか上手い。
ストーリー自体は大きな起伏もなく淡々と進むけど、ここぞというポイントで使われる無言のアップショットは情感の機微を見事に捉える。
ラストの海辺での二人のシーンなんて、広大な海の背景、光の当たり具合といい、名シーンです。
ところでロレンツォが男を殴るシーンがあるのだけど、殴られた方と反対側の頬の揺れ具合からパンチが本当にかすっているっぽい。