2007年5月26日土曜日

映画『あるいは裏切りという名の犬』

2004年 監督:オリヴィエ・マルシャル
at ギンレイホール


あるいは裏切りという名の犬 DTSスペシャル・エディション

ジェット・リーの『キス・オブ・ザ・ドラゴン』・・・は問題外にしろ、フランス警察はひどいね。
ダニエル・オートゥイユとジェラール・ドパルデュー主演の現代フィルムノワール。
BRI(探索出動班)のレオ・ヴリンクス(ダニエル・オートゥイユ)とBRB(強盗鎮圧班)のドニ・クラン(ジェラール・ドパルデュー)はかつて親友だった。
しかし今では次期長官の座をめぐって対立の立場にある。
いや、レオの方は長官などなりたいと思っていなくて、権力志向の強いドニだけが一方的にレオを敵視している。
かつては親友だった。しかし一人の女をレオに奪われてからドニとレオの間に溝ができた。
部下の信望厚いレオに比べて、皆から嫌われるドニ。
次期長官はレオに決まりかけたが。

主演二人が文句無く渋い。
ただ、昔のフィルムノワールと比べると全体的に派手な印象。

それにしてもダニエル・オートゥイユの妻役がヴァレリア・ゴリノって。年齢差いくつだろう。

映画『ラッキーナンバー7』

2006年 監督:ポール・マクギガン
at ギンレイホール


スマイルBEST ラッキーナンバー7 DTSエディション

ジョシュ・ハートネットがコメディチックにギャングの抗争に巻き込まれていく。
中盤まで話がよく分からない。
どうでもよさげな展開に眠くなってくる。
そのくせ冒頭のエピソードと今展開しているストーリーの関係が引っかかってすっきりしない。
表面的にテンポよく進んでいるようでいて裏でブレーキ踏まれまくっているような心地悪さ。
中盤くらいまでいってなんとなく冒頭のエピソードとの関係性が分かって、へーと思ってラストの方の「どんでん返し」と言われる箇所を迎え、そして最後まで見終わってふーっと一息。
111分。長い。

ジョシュ・ハートネットがただの運の悪いお人よしの青年な役のわけが無い。
だってこんなに悪い顔した人いないよ。
悪い青年や裏のある青年の役が世界一似合う役者だと思っている。
そんな勝手な期待に答えてくれたような微妙なような。

対立するギャングのボスにモーガン・フリーマンとベン・キングズレー。
どっちもすごいいい人じゃん。
いい人そうな面の裏っかわから覗いちゃいけない残虐さが現れるのかというとエピソードがいまいち弱いのか結局いい人にしか見えない。

謎めいた最強の殺し屋にブルース・ウィリス。
かっこいいのかギャグなのかいまいち分かりづらい。
ヒロインのルーシー・リューのファッションは可愛らしい。

2007年5月19日土曜日

映画『恋や恋なすな恋』

1962年 監督:内田吐夢
BS2 録画


なんかぶっ飛んでる。
双子っていう最初の説明で一方が死ぬことはなんとなく予想されたが、その後の展開は全く予想外。
しょっぱなからコマ撮りや赤のフィルターで始まるが、まだ普通に見れる。
それが、唐突な拷問シーンあたりからぶっ飛んでくる。
女の苦しむ顔の突然のアップ。それも高貴な振る舞いで拷問なんていうものとは全く無縁と思われた女の。
杭で袖を地面に打ち付けられた女の傍に弓を引く男が立っていて、女の首は弓と弦の間に挟まっている。
男が体全体を使ってしなやかに空の矢をヒュンと放つと同時に女がうめく。
男はさも女なんか存在しないかのようにリズミカルに放ち続ける。
なんという侮辱とエロティシズム。
愛する者を失った阿倍保名(大川橋蔵)は発狂。
その後、作り物のいやにゆったりした動きで不気味な蝶が現れてから次の段階へ。
保名は想い人と同化して所作や喋り方が男だか女だか分からなくなる。
女形橋蔵が幻想的世界でその本領を発揮。
そっから先はもう誰も予想し得ない展開に。
「コーン」とでも言うかと思いきや普通に「じぃ~」って言うし、ぺろぺろぺろぺろや、あっと驚く舞台の早変わりや、ラストの歌舞伎舞台できりきり響く琵琶の音や・・・

大川橋蔵の魅力全開なのだが、相手役の瑳峨三智子も凄い。
美人ではないのだけど。
覗かれ見られることが幸せな生活の終わりを意味する状況で、幾度も覗かれ続けながらも気づかない振りして機織り続ける瑳峨の表情っていったらこっちまで泣きそうになる。
「くやしゅーございます」

人形浄瑠璃の『芦屋道満大内鑑』と清元の古典『保名狂乱』が元になっているらしい。
ストーリー的には主軸がさっぱりわからず中途半端に終わるためか興行的には惨敗だったとのこと。

2007年5月14日月曜日

眼鏡とスーツ2

早めに仕事を切り上げて眼鏡屋へ。
新しい眼鏡を受け取る。
店内で試しにかけてみると凄いよく見えると同時にくらっとする。
ケースにしまって持ち帰る。
ついでに服屋によって裾上げしたスーツも受け取って帰る。

家に着いて、携帯の充電が切れていたので小物を入れているプラスチックの収納BOXから充電器を取り出すと、あ、前の眼鏡発見。
引き出しを開けっ放しの時にぽとっと落ちたのか、充電器をしまう時に気づかず一緒にひっつかんでいたのか。

買った最新眼鏡を家の中でかけるとやっぱりくらっとする。
よく見えるんだけどどうも見える視界が狭くて、視界の端のほう(レンズの淵あたり)が結構歪んで見える。
レンズが安いから?5段階中の下から2番目だったし。
でも眼鏡ってそんなもんだっけと思って発見した前の眼鏡をかけてみると、新しい眼鏡ほどではないが確かに視界の端が少し歪んでいる。
前より度数が高いから気になるっぽいが慣れれば気にならなくなるもんかなぁ。

新しい眼鏡でタチの『プレイタイム』を少し見ると、見えてなかった細部までよく見えて感動すると同時に今まで気にならなかった録画画質の悪さに目が行く。
・・・よく見えるようになるっていうのは良くも悪くも世界が変わるねぇ。

2007年5月13日日曜日

映画『プレイタイム』

1967年 監督:ジャック・タチ
BS2 録画


プレイタイム ( 新世紀修復版 )

これは眼鏡かけないと駄目だ。
基本的に全てロングショットのため、細部が見えないとギャグがわからず何が起こっているのかさっぱりわからなかったりする。
椅子の背もたれが手の形だなんて見えなかったから、なんで客の背中に手形が付いてるのか分からなかった。等など。
この映画はとにかく細部にわたり面白いものが詰まりに詰まったおもちゃ箱のような映画なのでピンボケの視点で見るなんて論外。
また、一回見ただけじゃ全て楽しみきれない。
フレームのいたるところで様々なものが動く。様々な人物が交錯してそして様々なものが映りこむ。
全てがさりげない。
眼鏡をかけなくては。だけど眼鏡がない・・・

ユロ氏のシリーズなんだけど、ユロは半分くらいしか出演しない。
しかもよりいっそうストーリーが無くなっている。
出演者の数は膨大なんだけど特に主役らしい人物がいないのね。
あまりに個性的なキャラクタというか、もう個人ではない記号が並列にごった返す。
ユロ氏に似た偽者が何人も闊歩するし。

舞台を大きく分けると前半は近代的オフィスビルで、後半は高級レストランとなる。
ユロはパリの大会社になんの用があるのか知らないがやってくる。(一応就職の面接らしい)
やってきたはいいが当の相手とすれ違ってばかりで一向に話が進まない。
そうこうしているうちに何もしないままオフィスビルから立ち去っているのであった。
冒頭の空港のシーンからそうだけど、ユロは会うべき人、会うべき瞬間に徹底して会えない。
そのくせ会わなくてもいいような奴には徹底的に会う。
だから本人の意図する道には全く進めないのに、意図しない寄り道だけは天才的に膨大な時間を費やす。
寄り道で全てが成り立つのだからストーリーもくそもない。
一行で言えば
ギャグにつつまれたモダンでハイセンスな盤上で進みも下がりもせずに永遠とも思えるほど自由に動き回る個性的な記号の群集がロングショットで滑稽にシュールにスケッチされていく。
といった感じか。

あの近代的なパリの街並みは巨大なセットらしい。そこまでやるか。
当時仏映画史上最大の制作費が投じられた70ミリの超大作だけど興行的には大失敗。
タチは多額の借金を負う。

眼鏡とスーツ

眼鏡をなくした。
家の中をひたすら探したけど見つからないのでたぶん外で落とした。
映画見るときや仕事で人のパソコンを少し離れたところから見るときくらいしか使わないのだけど、無いと困るので買いに行く。
店員の姉さんがいろいろこれどうかと持ってきてくれて、いくつかかけてみると本当どれでもよく思える。
どうしようかともう一度同じものかけなおしたりすると今度はどれも決め手なく微妙になる。
そんな中、かけると一番印象が変わる少しフレームが厚めの眼鏡にえいやと決める。
でもレンズの側面に溝を掘るとかなんとかとにかく時間のかかるタイプのものらしく、10日かかると言われる。
10日は不便だと思って選びなおす。
なんかもうどれでもいいよね。
前の失くした眼鏡と少し似た形のフレームを選ぶ。
しっかし高いな。
選んでいたフレームの値段は大体1万から2万で、どれでもよかったくせに選んだやつは2万。
プラスレンズで1万7千。
そんなもんだっけ。前の眼鏡は全部込みで2万くらいだった気がしたけど。

冬の間、スーツ上下のうちズボンだけ間違えて夏物を履いていたらしい。
夏冬と酷使しすぎたためか、気づいたらケツに穴が開いている。
夏物をなぜにクリーニング出してなかったのかは不明。
冬の間に夏物のズボンが駄目になったので、暑くなって来たというのに夏物が着れない。
もう一着あるにはあるけどここのところめったに寄らない会社に置きっぱなしだし型が古い。
なので買いに行く。
店員の兄ちゃんが付いてくれたけどいろいろこれどうかと持ってきてくれなかったので自分でいろいろ着てみる。
本当どれでもよく思える。
悩みだすと決まらなくなりそうなので、店員に意見聞きつつえいやと決める。
ついでに千円の安いネクタイも買ったけど、1500円の割引券使ってなんちゃらで結局合わせて2万くらい。
やす。

こんだけ高い買い物しても一ヶ月の家賃より安いんだよなぁ。

2007年5月3日木曜日

映画『犬神家の一族』

1976年 監督:市川崑
BS2 録画


犬神家の一族 通常版

ちょっとおとぼけたところがあるが頭の切れる金田一。
普通こういうキャラクタ(キムタクが好んで演じそうな)を演じると「かっこつけ」に見えてしょうがないから嫌なんだけど、石坂浩二が凄いのか演出が上手いのか、全然かっこつけに見えない。
あざとさが全く無い上に石坂金田一は颯爽として凄いかっこいいのね。
それにしてもこんなに走る姿が絵になる役者がいるだろうか。

146分と長いんだけど少しも飽きずに見れる。
ミステリーは面倒だから苦手なんだけど、遺書発表後の遺族達のあまりに細かい怒涛のカット割りを見た後はもうはまってしまう。
要所要所で簡潔に各キャラクタやストーリーのポイントをしっかり押さえさせてくれるから非常にわかりやすい。
市川崑の斬新な演出って今まではいまいちのれなかったのだけど、この作品はがちっとはまっていて凄い面白かった。

島田陽子は凛として美しく、坂口良子は愛らしくて可愛い。
そして高峰三枝子の演技が壮絶。温かい母性と冷たい鬼が共存してこえー。

2007年5月2日水曜日

映画『涙そうそう』

2006年 監督:土井裕泰
at ギンレイホール


涙そうそう スペシャル・エディション

長澤まさみがー!
高校生から大学生までいろんな魅力を見せてくれる。
それが全て。

兄と妹が別れてそれがラストだと思っていたのに、なんだあのラスト。
病室の廊下に響き渡る「にーにー!」に苦笑しつつも、めんどい関係もこうすればすっきり解決するじゃん的全く面白くない展開に唖然。
そんなに「涙そうそう」の歌詞に合わせなくてもいいじゃん。
でも長澤まさみがかわいいからいい。

映画『幸福な食卓』

2006年 監督:小松隆志
at ギンレイホール


幸福な食卓 プレミアム・エディション

父が父を辞めると宣言しました。
母は今一人で暮らしています。母は別に父が嫌いになったわけではありません。
兄は高校一の秀才だったのに大学進学せずに農業やってます。
私には彼氏っぽい男ができました。最高に幸せです。

北乃きいという少女が主演。
恋人役の勝地涼が年齢不詳のため、北乃きいは漠然と中学生の役だと捉えていたのにこの男によって、あれ、二人とも高校生?と思う。
「西高受験」とか言っているから中学生らしい。
えー!
こんなにふけていて胡散臭い中学生いるかよ。
北乃きいはあまりに幼い顔立ちが中学生だけど勝地涼って人はどう見ても大学生くらいでしょ。
この同い年という設定の二人がなんだかこっぱずかしい恋愛劇を繰り広げる。
そしていつのまにか二人は付き合っている。
まあ、このノリで告白シーンなんて見せられてはたまらないが。

幸せ絶頂の二人だけど、それじゃあ話が進まないよね。
ああ、もうこの幸せなまま普通に終わってくれればいいものをあんまりしち面倒くさい展開になったら疲れるな、と思っていると、
「俺達絶対長生きするからあと80回はクリスマスができるな」
みたいなことを勝地涼が言う。
この傍から見たらバカップルにしか見えない発言がその後の展開を決定づける。
で、そのシーンはあっけなくやってくる。
演出の放棄のようなシーンの飛ばしはもう少しでギャグになっているところ。
しかもその後は残った一方が立ち直るための物語であり、そのまま家族の大切さと再生の物語になる。
幸せな二人の描写も悲しいことになった方の人生も、全て家族再生のためのダシに使われたように見えてしまうのはなぜだろう。
残された方が立ち直って前向きに歩き出すというか存在自体記憶から消し去っているように見えるのはなぜだろう。
家族の再生といってもそんなに崩壊していたわけじゃないでしょ。
皆仲のいい家族だし、ただある事件をきっかけに少し信頼関係が崩れていたってだけじゃん。
そんなどうでもいいことに命をかけたわけ?と思うと悲しいことになった方の人生がひどくちっぽけに見えてくる。
幸福な食卓というタイトルである以上家族の物語っぽいので、やっぱり奴の人生はこのどうでもいい家族が再生するためのダシなのだ。
悲しい事件は家族再生の物語にすりかわって忘れ去られる。
まあ要は登場人物に全然思い入れができなかったってことだな。
存在自体忘れ去って、ミスチルの歌声にのって前向きに歩こうぜ。
あ、そうだ。ラストひどいよ。ミスチル。
なんであんなに延々とミスチルの曲を流すの?エンドロールで流せばいいじゃん。
悲しみを胸に秘めて前向きに歩く姿を映すのであれば明るい曲調のインストかそれが嫌ならいっそ無音にしてしまえばいいのに。