1967年 監督:ジャック・タチ
BS2 録画
これは眼鏡かけないと駄目だ。
基本的に全てロングショットのため、細部が見えないとギャグがわからず何が起こっているのかさっぱりわからなかったりする。
椅子の背もたれが手の形だなんて見えなかったから、なんで客の背中に手形が付いてるのか分からなかった。等など。
この映画はとにかく細部にわたり面白いものが詰まりに詰まったおもちゃ箱のような映画なのでピンボケの視点で見るなんて論外。
また、一回見ただけじゃ全て楽しみきれない。
フレームのいたるところで様々なものが動く。様々な人物が交錯してそして様々なものが映りこむ。
全てがさりげない。
眼鏡をかけなくては。だけど眼鏡がない・・・
ユロ氏のシリーズなんだけど、ユロは半分くらいしか出演しない。
しかもよりいっそうストーリーが無くなっている。
出演者の数は膨大なんだけど特に主役らしい人物がいないのね。
あまりに個性的なキャラクタというか、もう個人ではない記号が並列にごった返す。
ユロ氏に似た偽者が何人も闊歩するし。
舞台を大きく分けると前半は近代的オフィスビルで、後半は高級レストランとなる。
ユロはパリの大会社になんの用があるのか知らないがやってくる。(一応就職の面接らしい)
やってきたはいいが当の相手とすれ違ってばかりで一向に話が進まない。
そうこうしているうちに何もしないままオフィスビルから立ち去っているのであった。
冒頭の空港のシーンからそうだけど、ユロは会うべき人、会うべき瞬間に徹底して会えない。
そのくせ会わなくてもいいような奴には徹底的に会う。
だから本人の意図する道には全く進めないのに、意図しない寄り道だけは天才的に膨大な時間を費やす。
寄り道で全てが成り立つのだからストーリーもくそもない。
一行で言えば
ギャグにつつまれたモダンでハイセンスな盤上で進みも下がりもせずに永遠とも思えるほど自由に動き回る個性的な記号の群集がロングショットで滑稽にシュールにスケッチされていく。
といった感じか。
あの近代的なパリの街並みは巨大なセットらしい。そこまでやるか。
当時仏映画史上最大の制作費が投じられた70ミリの超大作だけど興行的には大失敗。
タチは多額の借金を負う。