2008年5月10日土曜日

映画『キートンの警官騒動』

1922年 監督:バスター・キートン
BS2 録画




またまた追いかけっこなんだけど、今度は追いかける人数が半端じゃない。
100人以上の警官に追いかけられるキートン。
しかも全く捕まらずにたった一人で100人を手玉に取る。
大量の警官っていう素材を徹底的に遊びつくすから楽しい。
2,3人に追いかけられるのと違って、例えば隠れて警官達が通り過ぎるのを待つシーン一つとっても迫力が違う。
まるでバッタの大群が通り過ぎていったかのようになるし。
そして嵐が去った後の静寂の中をキートンがひょこっと現れて無表情にすたすた逃げていくのね。
でもキートンがどこに逃げてもまた警官に出くわして追いかけられてしまう。なんせ大量の警官、だからね。
静と動の緩急が絶妙。
かつ「動」の大量の警官は一人一人意思を持って別個に動くもんだからもうカオス状態で、かなりダイナミック。
大通りの逃走シーンなんてかなり面白い。
固定の俯瞰カメラが人っ子一人いない大通りを写し、そこに奥から猛スピードでキートンが手前に向かって走ってくる。
間髪いれず後ろから大量の警官達も流れ込んでくる。
と同時にキートンが走る先、つまり手前に警官が一人躍り出てきてキートンを待ち構える。
奥から押し寄せる圧倒的な流れに加えて手前にちょっとした緊張感が加わる。
猛スピードのキートンと手前の警官がぶつかりそうな距離になると、なんとキートンは突然ヘッドスライディング。
見事に警官の股を通過。
後はこの捕まえるのを空振りしてグデっと倒れた警官も奥から手前という大量の流れに合流。
恐怖の大量警官が走り去ると大通りは再び誰もいない静寂に。
すると今度は手前から再び猛スピードのキートンとそれに続くカオス状態の警官達が出てくるのね。
今度は手前から奥への圧倒的な流れ。
映画は動くことによる変化が面白いんだけど、そういう意味ではシンプルなのにこれだけ様々な表情を持った動的要素をふんだんに盛り込んでいるっていうのは凄い。
スーパーアクロバティックなはしごシーソーのシーンも面白いしな。
3Mくらいの高さの薄い壁の上を支点として、はしごでシーソー。
はしごの上にはキートンしかいないんだけど、壁を挟んだ両側でカオスの警官達がそれぞれ自分側にはしごをひきずり下ろそうとひっぱるからシーソー状態。
これって何気に一人でも動きをミスるとかなり危険だよな。

そういえば静と動の緩急がいいみたいなこと言ったけど、この警官達に追いかけられるシーケンスは作品の後半だけなのね。
じゃあ前半はというと、大量の家具を山のように積んだ荷馬車を歩かせてギャグを紡いでいくというどこかのーんびりした構成。
だから後半の追いかけっこの中で静と動が溢れているけど、作品全体の構成で言えば前半と後半で静と動になっている。

逃走の天才キートンが捕まった理由は?
ブラックなエンディングも秀逸。

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