2009年3月10日火曜日

映画『伽倻子のために』

1984年 監督:小栗康平
BS2 録画


小栗康平監督作品集 DVD-BOX

声が聞き取れず、説明も少ないためにストーリーは全然分からなかったのだけど、いやー、南果歩だけで十二分に面白い。
かわいいかかわいくないかで言ったらかわいくはないのだけど、なんだろうこの魅力は。
女性が少女のある一時期にだけとてつもなく神々しく輝くときがある。
その瞬間をこれでもかとフィルムに収めた感じ。
あまり必要性もなく脱いでるし。

原作は芥川賞作家李恢成の「伽倻子のために」。
在日朝鮮人2世の大学生サンジュニ(呉昇一)と、朝鮮人と日本人の夫婦に養子に貰われた伽倻子(南果歩)の恋愛物。
朝鮮人にも日本人にもなれない不安定な二人。
朝鮮に行く夢を見てもサンジュニはハングルを喋れない。
現状の生活も、見る夢も、全てが儚い。

終始静かに展開する。
無口なサンジュニが驚くほどの好青年。
あまり喋らないので始めのうちは怪しい青年だったのだけど、背景や人物が分かってくると無表情の裏に隠れた深い苦悩が見えてきて切なくなってくる。
どっちかというとこういう静かな映画は長まわしで見たいけど、ほとんど長まわしは無い。

子供の発言に怒ったばあさんが振り返って部屋に入るとき、壁に一回肩をげしっとぶつけるのね。
少しも表情を変えずにすたすたフレームの外に消えるのだけど、そういう生活の現実感を強く感じさせる映画。
好青年サンジュニと神々しい少女伽倻子の恋愛はまぶしすぎるし、加藤武は真面目な中でなかなかくすりと笑わせてくれるし、で結構面白い。

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