2010年2月27日土曜日

映画『空気人形』

2008年 監督:是枝裕和
at ギンレイホール


空気人形 豪華版 [DVD]

夜のレインボーブリッジの永遠に続くカーブからゆりかもめの車内の板尾創路へ。
冒頭からいろんな意味で驚きに満ちた静謐な映像にテンションがあがる。

空気人形、つまりラブドール、ダッチワイフ。
空気人形が心を持ちました。
そしてレンタルビデオ屋の店員の男に恋しました。

主演のペ・ドゥナが惜しげもなく裸体を披露する。
ちょっとおしりがでかい気もするがなんと美しい裸体だろう。
性の対象というより美術品のような感じ。
ダッチワイフなんだけど。
これで30歳だから凄い。

ストーリーの方は当然のごとく寓話なんだけど、登場人物が皆現代人のストレスを抱えて病んでいるところがあまりに類型的すぎる気もする。
寓話だからいいのか。
いい人そうな店長の行為にはちょっとびっくりした。
現代人の闇が純粋な心と体を持ったダッチワイフによって浄化、されることなんかこれっぽっちもなく、付かず離れず彼女の笑顔の周辺をただ通り過ぎていく。

空気が抜けたときの「見ないで」という恥じらいから、好きな男に息を吹き込まれたときの満たされた官能とか、ただこれを描きたいがためにダッチワイフに心を持たせたのじゃないかと思うくらいエロティック。

エンドロールで原作が業田良家だと知る。
『ゴーダ哲学堂 空気人形』
って出て、「哲学」という文字を見た途端何か全てがチープで胡散臭く思えてきてしまった。
一つ一つの話がそれぞれ2,30行の文章で誰でもいろんな解釈で簡単に評論できそうなところなど。

ストーリーはまあいいとして、映像がとにかくいい。CGを除き。
撮影:リー・ピンビン
ホウ・シャオシェンの作品の撮影をよくやっている人らしい。
おお、『恋恋風塵(れんれんふうじん)』もこの人だったんだ。

そういえば足をぱたぱたさせて空に浮かぶシーンは予告編で見たときは泣きそうになったのだけど、本編では特になんでもなかったな。

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