2012年12月16日日曜日

映画『ル・アーヴルの靴みがき』

2011年 監督:アキ・カウリスマキ
製作国:フィンランド/フランス/ドイツ
at ギンレイホール




フランス北部の港町ル・アーヴルで靴磨きを生業としているマルセル(アンドレ・ウィルム)は、誰もが認めるよくできた妻アルレッティ(カティ・オウティネン)と慎ましく暮らしていた。
しかしある日アルレッティは倒れて入院してしまう。
医師から余命宣告を受けたアルレッティだが、夫にはそのことを隠し通すことを決意する。
一方夫のマルセルはアフリカからの密航者で、母のいるロンドンに行きたがっている少年イドリッサと出会い、彼をかくまいながらイギリスへの密航のための資金稼ぎに奔走する。

アキ・カウリスマキの5年ぶりの新作らしい。
最近全然見ていなかったから僕は10年ぶりくらいだけど。
なんかタッチはそのままでストーリーは分かりやすいハートウォーミングドラマになっている。
誰もが楽しめるエンターテイメント性に強くなるって方向に進化しているのは嬉しいような少し寂しいような。
でも確実に面白かったな。時間も93分とちょうどいい!

今気づいたけど、キャスト見ていたら密告者役がジャン=ピエール・レオになっている。見ているときは全然気づかなかった。

映画『汽車はふたたび故郷へ』

2010年 監督:オタール・イオセリアーニ
製作国:フランス/グルジア/ロシア
at ギンレイホール




グルジアのオタール・イオセリアーニ監督の半自伝ドラマ。
映画監督の青年ニコラスは、検閲や規制に耐えかねて祖国グルジアを飛び出しフランスに亡命する。
これでやっと自分の撮りたい映画を撮れると思ったニコラスだったが。

一応ジャンルは「ドラマ/コメディ」になってるな。
予告編を見ると面白そうだったんだけど。
とにかく長いわ。126分。
劇中、青年が作る映画に対しておっさんが「映画は90分で収めなきゃ駄目だ」みたいなことを呟くシーンがあるけど、まさにそうだ。
グルジアを飛び出すまでいったい何時間かけるんだ。
(飛び出した後も飛び出す前といろんな意味で何も変わらないのだが)

セリフも少なくて読み取る集中力が必要なのに、なんかしらないけど早々に集中力も切れてあまり楽しめなかった。
なんだろう、長まわしもセリフが少ないのも好きな方なのに。
バランスがなんかおかしいからかな。
電車の車体がカーブに疎って蛇腹のように緩やかにうねる美しいシーン以外はそんなに印象的なシーンもないし、ストーリーがめちゃくちゃ面白いわけでもないし、それほど笑えるわけでもないし、役者はなんだかたどたどしいし、唐突に出てくる人魚は違和感ばりばりだし。
・・・って書いてみると、逆にもしかして凄いんじゃないかと思ってきた。
はちゃめちゃだったらB級映画になるけど、盛り上がりも盛り下がりもせず、ともすれば破綻してしまうような唐突なSF要素もなんか許せてしまう寛容なフラット感は絶妙なバランス感覚でこそなせる技なんじゃないか、と。
今度機会があったらもう一度見てみようかな。でもやっぱり長い。

そういえば熊の檻にすたすた入っていって手で魚をえさやりしているのはびびった。

2012年12月2日日曜日

映画『裏切りのサーカス』

2011年 監督:トーマス・アルフレッドソン
製作国:イギリス/フランス/ドイツ
at ギンレイホール




ジョン・ル・カレの1974年のスパイ小説『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の映画化。
東西冷戦時代のイギリスの、英国諜報部サーカスを舞台にした映画。

登場人物を把握するのに集中しようとしていたのに、最初の方ちょっと寝てしまった。
細かいところがよくわからなかったものの、なかなか面白かった。
登場人物達が皆渋い。
そして過酷な仕事ながらも皆人間臭い。
内容を全部理解しなくても、この映画がもつ雰囲気だけで十分楽しめると思う。
イリーナも美しいし。

映画『ドライヴ』

2011年 監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




ピンク色のタイトルからしてB級臭がぷんぷん漂うとおり、フィルムノワール風のB級映画だった。

自動車修理工場で働きながら映画のカースタントもやっている流れ者の男(ライアン・ゴズリング)は、その卓越したドライビングテクニックで夜は強盗の逃走の手助けをする仕事をしていた。
寡黙であまり人と接しない男だったが、同じマンションに住む母子と知り合い、ともに時間を過ごすようになる。
この母親(キャリー・マリガン)の夫は刑務所に服役していて、夫が服役したところから事件が動き出す。

お前ただのドライバーだろ?っていう先入観を持っているとびっくりする。
危険な人物だと思っていた男が実は小物(というかいい奴)で、その上にいる奴らこそ危険だ、と思ったらそいつらも小物で、さらに上に危険な大物が待っている。
悪の大物を相手取り、ただのドライバーなんかなすすべも無く消されるんじゃないかと思いきや、流れ者の男にとっては大物も小物も関係なく、皆くそみたいに格下の相手でしかなかった。

主演のライアン・ゴズリングが怖い。
顔がもう変質者っぽいのに、その上寡黙だったらもう近づいちゃ駄目だろう。
愛する者のすぐ傍で、倒れた敵の頭を狂ったように踏みつけて脳みそがぐちゃぐちゃに飛び出しても蹴り続ける狂気を見せつけられて引かない女はいない。
『きみに読む物語』では好青年だったのにねぇ。

ヒロインは『17歳の肖像』のキャリー・マリガン。