2011年 監督:ロベール・ゲディギャン
製作国:フランス
at ギンレイホール
ヘミングウェイの短編とは関係なく、題名はフランスで1966年にヒットしたシャンソンの曲名から取ったらしい。
マルセイユに暮らすミシェル(ジャン=ピエール・ダルッサン)が勤める会社では20人の人員削減が行われようとしていた。
労働組合の委員長でもあるミシェルは、公平を期すためリストラする人をくじで決めたが、くじの中には自分の名前も入れており、ミシェルも20人の1人になってしまう。
リストラされた夫ミシェルを優しく迎える妻マリ=クレール(アリアンヌ・アスカリッド)。
そんな中、結婚30周年のパーティが子供たちや友人たちにより盛大に催され、アフリカキリマンジャロへの旅行券がプレゼントされる。
仕事はなくなっちゃったけど暫くは夫婦水入らずで過ごそう、みたいな幸せムードから一転、突然押し入った強盗が幸せをあっさり奪っていく。
偽善的と言われてもおかしくないほど人のいいミシェルとマリ=クレール。
マイク・リーの『家族の庭』では、同じく偽善的な夫婦が無意識に(あるいは偽善者の自己愛の結果)周囲の仲間たちをみじめな姿に追いやる様を残酷なタッチで描いていたけど、この映画の偽善者像はまたちょっと違う。
まず、夫婦が行う偽善行為はストーリー上はっきりと非難、否定される。
夫婦は葛藤する。
不合理に幸せを奪っていかれた憎しみを忘れないのか、優しさを取るのか。
夫婦がそれぞれ出した結論は偽善的で自己満足とも言えるが、なんだろう、この温かさは。
それに、あんなに犯人を憎んでいた妹夫婦にまでその大きな愛情を伝播させてしまうとは。
見終わって優しい気分になった。
ああ、なんかこれだけ書いたらこの映画も『家族の庭』も偽善者を描いた映画みたいに思えちゃうけど、そういうわけじゃないから。
この映画に関しては、労働者階級の貧困とか力強さとか、階級闘争世代と若者世代の認識の断絶とか、夫婦愛とか、妬みとか、いろんな正と負の要素がマルセイユの景観の中さりげなく組み込まれていて、それらが最後は大きな愛みたいなものに包まれて見事に昇華して温かい気分になる、っていう映画かな。
結婚30周年パーティでブロンディの曲で若者達が踊っているのを見て、一瞬時代設定は2,30年前なのかと思ったけど、一応設定は現代らしい。
ちなみに曲名忘れたから調べたら「ハート・オブ・グラス」(1979)だった。
主人公のミシェルを演じた役者さんが凄く馴染みのある顔で、何の映画に出ていたんだっけと考えても思い出せず、仕舞いには知り合いに似てるのかと思ったりもしたけど、帰って調べたらついこないだ見た『ル・アーヴルの靴みがき』にも警視役で出ていた人だった。
ジャン=ピエール・ダルッサン。
『画家と庭師とカンパーニュ』とか『サン・ジャックへの道』とか、面白かった映画にばっかり出ている。
2013年1月14日月曜日
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