2015年7月29日水曜日

映画『はじまりのうた』

2013年 監督:ジョン・カーニー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




音楽を扱った映画って基本的にうるさいから嫌いなんだけど、これはめちゃくちゃ面白かった。

とあるバーで女性がギターの弾き語りをしているシーンから始まる。
そしてそれに熱視線を送る浮浪者っぽい男!こわっ。
時はさかのぼってこの浮浪者っぽい男と女性シンガーがこのバーに来るまでの経緯が描かれる。しゃれおつな構成。
男はかつての名プロデューサーで、女はデビューになんの興味も無いシンガーソングライター。
男は女を説得してその気にさせ、デモテープどころかいきなりアルバムを作り始める。強引。

音楽って楽しいよね、という気分にさせてくれる映画。
恋愛とか家族とか夢とかちょっと変な方向に行きそうな思春期の娘とか、いろいろとじわじわくる要素も詰まっている。
そんで、仕事上のパートナーという位置づけの、親子ほど年の離れたグレタとダン、つまりキーラ・ナイトレイとマーク・ラファロの2ショットがどこ切り取っても絵になるんだな。
なんなんだろう、恋人設定のキーラ・ナイトレイとアダム・レヴィーンの2ショットはありきたりすぎていたって普通なのに、キーラ・ナイトレイとマーク・ラファロの2ショットは輝いている!、と思う。
恋人でもなんでもない仕事上のパートナーって役だけどね。

娘役のヘイリー・スタインフェルドは『トゥルー・グリット』のマティ・ロス役の子か。
大分成長したんだな。この子の独特な顔立ち好きだな。
妻役の人って髪で少し顔が隠れて見ている時はいまいちわからなかったけど、キャサリン・キーナーだった。


映画始まる前にドアの前で並んでいるときにこの映画の主題歌「Lost Stars」が漏れ聞こえてきて、文庫本読みながらなんか懐かしい曲が流れているなと思った。
デヴィッド・ボウイじゃないし、なんだっけなぁ、と少し考えてやめたんだけど、なんか普通にこの映画用に書き下ろされた曲だったっぽい。
前回ギンレイに来たときに館内で流れていたのかなぁ。

YouTubeにあった「Lost Stars」。
まずはキーラ・ナイトレイ版。
しっとり聴きいる歌のうまさで、声もいい。


アダム・レヴィーン版。
マルーン5って1曲も聞いたことないんだけど、アダム・レヴィーンって人めちゃくちゃ歌うまいね。

映画『ビッグ・アイズ』

2014年 監督:ティム・バートン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




実話が元らしい。
60年代にアメリカで大ブームになった、目の大きな女の子の絵。
それを描いたウォルター・キーンは一躍時の人となり、巨大な財を築くのだけど、実はその絵を描いているのは彼の妻のマーガレットだった、という話。

ストーリー的にはラストに来るであろう夫との対決以外に山場はないんじゃないかと思っていたけど、満遍なく面白かった。
新しい夫との素敵な(?)出会いに始まり、一緒に屋外でスケッチするシーンは後の展開へと繋がり、絵が売れ始めてからマーガレットがゴーストであることを黙認してしまうくだりとか、夫ウォルターのプロモーターとしての辣腕ぶりとか、マーガレットの憔悴具合とか、ラストにいくまでの過程が十分面白い。
笑いもふんだんだし。
ただ、過程が面白ければラストはどんだけすかっとするんだろうと思いきや、それほどではない。
ラスト近くのシャイニングばりの狂気を見せられても、丹念に描かれた過程シーンによりウォルターというキャラクターに少なからず親しみを持ってしまっているから。
嫌な奴ではある。人間のクズではある。でも面白いんだよウォルターは。
ラストの一人の立ち回りなんて悲しさとおかしさがまじってなんともいえない感情になる。

映画の一番最後に、本物のマーガレットと、マーガレットを演じたエイミー・アダムスの2ショット写真が映される。
これ見て涙出そうになった。
実話に基づくといわれてもどこか作り物という意識があるところに、本物が急にリンクされるとぐっとくる。
なんだっけ、『最強のふたり』も確か最後に本物の人たちの写真が映っていたけど、あの時はそんなに心動かされなかったな。
これはばあちゃんだからだろうか。
まだ存命だったんだ、というのと、びっくりするくらいのいい笑顔しているから。

主演はエイミー・アダムス。
夫のウォルター役にだいぶ年は離れているけどクリストフ・ヴァルツ。『おとなのけんか』とかジャンゴとか、比較的クールな役でしか見たこと無かったから新鮮。
脇役だと
記者役にダニー・ヒューストン。
なんか偉い批評家っぽい人役にテレンス・スタンプ。
向かいの画廊の主人にウェス・アンダーソン作品でおなじみのジェイソン・シュワルツマン。
あと、幼少期の娘役の子が、かわいいのかかわいくないのかよく分からない顔立ちでつまりかわいかった。デラニー・レイ。
少女期で役者が変わったら普通にかわいくなくなっちゃったけど。

2015年7月12日日曜日

映画『0.5ミリ』

2013年 監督:安藤桃子
製作国:日本
at ギンレイホール




明日から出張だし『百円の恋』は113分もあったのにこの『0.5ミリ』は196分もあるし、5時間近くも安藤サクラを見続けるってどうなんだろう、と思って今回ギンレイに行くのを躊躇していたけど、見てよかった。
196分は確かに長い。でもけずれそうなエピソードは無い。
予告編見たときは、おしかけヘルパーするじいさんが何人か入れ替わるみたいだから一人くらいけずって120分以内に収めろよと思ったけど、すべてのエピソードを経てこそのあのラストなので、196分、かなり首が痛くなって疲れたものの満足した。

主演安藤サクラ。
この子の演技しているのに演技していないように見える自然な感じが恐ろしい。才能という意味で。
茂(坂田利夫)に初めて話しかかるときの
「おじいちゃんなにやってるんですか~?」
からの一連の流れは、なにかこう暗くも明るくも無い女が無理に人懐こい声で話しかけているような、もしくはヘルパーとしての職業柄の事務的な声色というか、または生きるために切羽詰った決意を内包しているために声音が演技っぽくなっているというか、、とにかく安藤サクラ演じるサワという女がこの場面この状況この心情でしゃべったらこうなる、というのを安藤サクラはさらっと実践している。
単純に自然な人懐っこい声を出せないという素なのかもしれないけどさ。
調べてみると安藤サクラはどの映画でも演技が絶賛されているみたい。

あと、圧巻だったのは津川雅彦の長回し。
7,8分くらいの独白シーンで、不安で不穏な空気を漂わせながらの台詞回しには引き込まれる。

坂田利夫が出演している映画を見るのはこれが初めてだけど、何この人、ものすごい名役者じゃん。
特に哀愁漂うおっさんとか愛嬌のあるおっさん演じさせたら日本一だな。

安藤サクラの夫って柄本佑なんだね。
ということは、この映画、実際の家族が大いに関わっているんだな、
まず、監督の安藤桃子は安藤サクラの実姉でしょ。
で、佐々木健役の柄本明は安藤サクラの義理の父親。
浜田役の角替和枝は安藤サクラの義理の母親。
フードスタイリストとして参加している安藤和津は安藤サクラの母親。

その他出演者も書いておく。
織本順吉、木内みどり、井上竜夫、ベンガル、浅田美代子(この人も凄い女優だよな)、東出昌大(どこに出ているかわからなかったけどカラオケ店員だったっぽい)、土屋希望。
なかなか豪華。
しれっといれた土屋希望だけど、俺も誰か知らない。この映画がデビュー作で、他には出ていない模様。
そもそも男か女かわからなくて、調べてみたら女性っぽい。失礼しました。
それにしても、検索すると埼玉の高校の野球部員として紹介されていたり、つぶれる寸前のお菓子屋かなんかのブログにベテラン店員として紹介されていたりと謎が多い。
公式ページによるとこの子の父親と安藤桃子が知り合いという縁からスカウトされて出演したらしい。
もう女優はやらないのかな。

映画『百円の恋』

2014年 監督:武正晴
製作国:日本
at ギンレイホール




ニートっぽいけどニートじゃない家事手伝い女、一子(安藤サクラ)は、とあるきっかけで家を出て一人暮らしをはじめる。
仕事やら恋やらボクシングやら、と生まれてはじめての事を経験しながら成長していく物語。
って書くとたいして面白そうでもないけど、意外とかなり面白い。
ドラマティックな成功譚ではなくて地味な成長譚だけど、みなぎる社会の底辺感の中、静かに燃えるくじけない闘志が胸を打つ。
笑ったり怒ったり嫌な気分になったりHAPPYになったり、ひっきりなしに楽しませてもくれる。
それとなんといってもボクシングシーンが泣ける。

脚本は脚本賞“松田優作賞”の第1回グランプリになった作品らしい。
監督武正晴作は初めて見たけど結構好きなタイプかもしれない。
予告編にもあるこけるシーンとか、こういう地味なシーン好きだ。