2018年12月9日日曜日

映画『悲しみに、こんにちは』

2017年 監督:カルラ・シモン
製作国:スペイン
at ギンレイホール




予告編見た記憶もなく、1mmも期待しないまま見たのだけど、ここ数年でNo.1にしたいくらいよかった。

バルセロナに住む両親を亡くした6歳の少女フリダ(ライア・アルティガス)が、カタルーニャ(田舎)に住む叔父夫婦の家に引き取られる。
叔父夫婦とその3,4歳くらいの幼い娘アナ(パウラ・ロブレス)の3人家族はフリダを快く受け入れる。
ストーリーとしてはこれだけ。

叔父夫婦はすごくいい人達で、アナはお姉さんが出来たと喜ぶ。
フリダもすぐに家族に打ち解けているように見えるが、それほど素直にはいかない。
フリダを快く受け入れた、とはいえ、やはり自分たちの娘が誰よりも可愛い。
ましてや主に面倒を見る母親はフリダとは血のつながりはない。
いい人たちとはいえ、愛情に飢えたフリダはそういう微妙な機微を感じ取る。
反抗、嫉妬、猜疑心、そして喜び。
そういう感情が豊かな自然の穏やかな日常の中で漣のようにゆらめく様がどんな凝ったストーリーよりも動的で美しい。

自分が心配されていることを知ったフリダは翌日のお祭りで先頭をきって旗を持って元気にスキップする。
この時の無邪気な笑顔見たときに涙が溢れて、さらにはラストシーンでは久しぶりに大泣きしてしまった。
家族になれた瞬間と母の死を受け入れた瞬間。
映画史に残るラストシーン。

子役ってこまっしゃくれたガキが芸達者に演技して大人たちがよくできましたね~と思考停止した気持ち悪い笑顔で褒め称えるだけの存在だから基本的に嫌いで映画には邪魔だと思っているんだけど、子役に演技させない映画っていうのもあって(ジャン・ルノワールの『河』とかビクトル・エリセ『ミツバチのささやき』とか)、これはどちらかというと演技させない方。
アナの「フリダ、遊んで」の可愛らしさは異常だし、アナとフリダの無邪気な笑顔は素、のはず。
アナはほぼ素で、フリダは主役ゆえに結構演技しているはずだけど(特にラストシーン)、子役嫌いの僕が何も違和感感じずに見たので監督なのかフリダ役のライア・アルティガスなのか、とにかく凄い。

にしてもこの邦題、サガンか斉藤由貴か安全地帯かと間違える。
原題は『ESTIU 1993』で英題は『SUMMER 1993』。
『SUMMER 1993』の方が無味シンプルでこの映画の表題としてはいいのにな。

最後に谷川俊太郎のレビューコメント
少女フリダの愛くるしい顔と無言の行動にひそむ、
苦しく悲しい孤独・・・
涙はフリダを解放しただろうか?

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