2019年9月29日日曜日

映画『ドント・ウォーリー』

2018年 監督:ガス・ヴァン・サント
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




アル中の青年ジョン(ホアキン・フェニックス)が、飲酒を引き金に事故にあって脊髄損傷で車椅子生活になる。
絶望からますます酒がやめられず、希望もくそもない状態だったが、ついに断酒を決意する。
実在の風刺漫画家ジョン・キャラハンの物語。

時間軸があらゆる地点に飛びまくるのがなかなか分かりづらい。
ぱっと見事故前事故後なら分かるが、事故後はあまり区別つかないしなぁ。
でもまあ面白かった。

ドニー(ジョナ・ヒル)が主催する断酒のグループセラピーが、たまに怪しい自己啓発グループに見えたりもするけど、このセラピー、そしていつの間にか仲良くなったドニーの言葉に救われていく。
愚痴や悪口を喋りだすジョンに対して「君自身の話をしろ」と諌め誘導するのも上手い。
そしてドニー自身もまだ問題を抱えていて。。
ドニーを演じたのはジョナ・ヒルなんだよね。
おたく系のはずが、ちょっとぽっちゃりだけど髭面ブロンドのイケメンになっている。

ジョンの恋人役にルーニー・マーラ。
役柄もそうだけど天使か、と思う。いつの間にか30超えているんだね。

映画『パリ、嘘つきな恋』

2018年 監督:フランク・デュボスク
製作国:フランス
at ギンレイホール




おっさんとおばさんの恋愛もので、おしゃれ大国フランス産映画、ときたら構えてしまうが、意外と気楽に面白かった。

冒頭からなかなかの嘘つきぶりを発揮する50手前の超迷惑おっさんジョスラン(フランク・デュボスク)は独身を謳歌している。
遊び人だけどスニーカー販売会社の支部長で結構な金持ちだったりする。
そんなジョスランがたまたま車椅子に座っているときに若い美女と知り合い、美女の胸に釘付けになったジョスランは女が勘違いするままに障害者のふりをすることにする。
女の実家のパーティにまでやってきたジョスランはそこで女の姉である車椅子の美女フロランス(アレクサンドラ・ラミー)と出会う。

コメディでありながら身体障害者をちゃんと扱っているうえ、恋愛ものとしてもしっかりしている。
ストーリーはテンポよく進むし、その中で登場人物のキャラクターや関係性は無駄なく表現されるため、かなり脚本がいい。
そしてふんだんに盛り込まれている笑いがなかなか笑える。
劇場内にいた女性二人組なんかそこまで面白いかと思うようなシーンでもゲラゲラ笑っていて、館内のこういう雰囲気ってなんか懐かしいなとほっこりする。
この二人がいなかったらたぶんそんなに笑っていなかったと思うし。

ホテルの廊下とエレベーターのシーンが秀逸だった。
エレベーターから出てすぐ画面から消えてまた現れて、戻るときも一旦消えてからエレベーターに突っ込むっていう、細長く狭い廊下で見せる動的な変化と、この消える現れるの絶妙な間、そして消えることにより空間に広がりが出るところ等、おおーって思った。
しかもここのシーンは遊び人ジョスランの心(人生)の微妙な変化を表すシーンであって、かつ笑いも忘れない、っていう、いやー、名シーンだわ。

それにしてもフロランスって、ヴァイオリニストでありながらテニスプレイヤーでもあり、知的で気さくで美人でスタイルよし、ってハイスペックすぎるよな。
あと、一途でどこか変な秘書マリー(エルザ・ジルベルスタイン)も魅力的だった。

2019年9月15日日曜日

映画『天国でまた会おう』

2017年 監督:アルベール・デュポンテル
製作国:フランス
at ギンレイホール




この予告編見たとき、第9に乗せてテーブルの上をステップを踏みながら進む女性の脚のシーンでまじ面白そうと思った。
ただ、いつもの通り予告編で面白いやつって本編が期待通りにならないんだよな。
ステップ踏んでいるのは予告編に出てくる少女なのかと思ったらぽっと出の脇役だし、このシーン自体は本編だと特に感動もなくさらっと終わってしまうし。
全体的にはそれほどつまらなくはなかったけど。

第一次大戦の終戦間際、全く無駄な突撃命令の末、顔の下半分を吹き飛ばされた男エドゥアール(ナウエル・ペレス・ビスカヤール)と彼に命を救われたアルベール(アルベール・デュポンテル)の物語。
終戦後、エドゥアールは家に戻りたくないがために死んだことにしてアルベールの家に転がり込む。
画家の卵で芸術家なエドゥアールは怪しげでいやに前衛的なマスクを作ってそのマスクがどれもなかなか面白いんだけど、ストーリー上は特に関係はない。
もごもごとしか声が出ないエドゥアールの言葉を通訳できるかわいい少女ルイーズ(エロイーズ・バルステ)と知り合ってからエドゥアールの計画が始まる。
そこに突撃命令を出した憎き上官プラデル(ロラン・ラフィット)とか、エドゥアールの美しき姉(エミリー・ドゥケンヌ)とか父マルセル(ニエル・アレストリュプ)とかキュートな使用人ポリーヌ(メラニー・ティエリー)とかが絡んでくる。

がちゃがちゃといろいろあるけど、少女なりの愛らしさと聖母のような包容力と本質を捉える辛辣さと残酷さを兼ね揃えた不思議なルイーズの魅力が全てかな。

ドローンなのかCGなのかわからないけど、地上から2階にあがって少し開いた窓の隙間から部屋の中に入っていくみたいなカメラの動きは楽しい。効果的なのかは知らんが。

原作はピエール・ルメートル。映画だと結構なご都合主義になっている気がするけど原作はどうなんだろう。今度読んでみよう。

映画『僕たちのラストステージ』

2018年 監督:ジョン・S・ベアード
製作国:イギリス/カナダ/アメリカ
at ギンレイホール




ローレル&ハーディの晩年を描いた話。
二人の絆にほっこりする。
ただ、上映後のおまけの10分も無いローレル&ハーディ特選ギャグ集が抜群に面白すぎて、本編を完全に食っていた。
階段をピアノが階段をすべりおちるギャグ(本編にもオマージュされている)は、乳母車を引いた女性の高笑いが怖すぎる。
いや、お前のせいでピアノが落ちたんだろうが。
しかも高笑いを続ける女性のケツにローレルが蹴りを入れる、という今じゃ考えられない仕打ちもある。
そして蹴りに対する報復でハーディは瓶で頭を殴られる、っていう残酷さ。。。面白い。
Youtubeに全編あるな。『極楽ピアノ騒動』(THE MUSIC BOX 1932)



ローレル役にスティーヴ・クーガン。
ハーディ役にジョン・C・ライリー。
ジョン・C・ライリーしばらくみないうちに太り過ぎじゃね?と思ったけど、特殊メイクなんだろう、たぶん。

2019年9月9日月曜日

映画『チョコレート・ファイター』

2008年 監督:プラッチャヤー・ピンゲーオ
製作国:タイ
BS録画





タイに侵攻してきているヤクザマサシ(阿部寛)と現地のマフィアナンバー8(ポンパット・ワチラバンジョン)がなんかいがみ合っている。
お互いの手打ちの場かなんかに出席しているマフィア側の女ジン(アマラー・シリポン)。
この派手な女が見た目通りの派手なアクションを見せてくれるのかと期待。
しかし一触即発かと思いきやお互いの不可侵を取り決めてなぜか穏便に終わる。
穏便だったけど、マサシはジンに一目惚れしていて(ジンというかジンの眉の傷に)、密かに逢瀬を重ねる。
嫉妬に狂ったナンバー8とひと悶着あった後、なぜかマサシは引き下がって美しいケツだけ見せて日本に帰る。
・・・早くアクション見せろや!
ジンは実は妊娠していて女の子を出産。
この子は自閉症だとわかる。
マフィアを抜けていたジンだがナンバー8は未練たらたらで、ジンがマサシに手紙を送ったことを嗅ぎつけ家に押しかけてくる。
子供に危害を加えようとするナンバー8。いよいよアクションかと思いきやなんか弱!
その後子供が家の向かいのムエタイ道場を眺めてキックの練習を始める。こっちか!

ストーリーは結構どうでもいい。日本の漫画が原作みたいね。

自閉症の少女ゼン役を演じるヤーニン・ウィサミタナンが素晴らしい。
華奢な体で美麗な足技を見せてくれる。
お花のアップリケが付いたTシャツでマフィアとやりあっている姿が神々しい。
特にお気に入りはバンダナ男との死闘で男の腿を駆け上がって膝チョップをかますシーン。
シャイニングウィザードを始めて見たときなみの衝撃だよ。膝蹴りじゃなくて膝チョップだからね。
しかも丁度電車(CG?)がやってきているところにかぶせるしスローモーションだし。
後は空中を回転しながら立っている相手の後頭部に蹴りをかましたり、ブレイクのトーマスフレア中のジャージ男の上を回転しながら飛び越えて着地寸前ですくい上げるように顔面に蹴りを入れるやつとか美しい。
あと、倉庫の戦いで「ムン」と呼んだときの声のかわいいこと。

というように、おおーっと思うアクションはそこそこあるけど、全体的にはアクションは少しスピード感にかける気がする。
ジャッキーとかだと絶えずちょこまか動くなり手数を出すし、リー・リンチェイなら技のスピードが尋常じゃない。
やっぱり香港カンフー映画は偉大だなと見ていて思った。
その香港カンフー映画に多大なオマージュがあるからなおさらそう思ったのかもしれない。製氷場での怪鳥音とか、ロッカーを使ったアクションとか、ガラスのテーブルに背中から落ちたり、高所での戦い等々。
ああ、でもエンドロールのNGシーンはなんか痛々しいだけでちょっとしらけてしまった。

飛んできたボールをつかむシーンは逆再生だろうか。

やくざの親分がいる家がありえないくらいの純和風の家だったりとか、外国から見た日本っていうベタは面白いよな。

ストーリーを補足すると、
ゼンがなぜ強いかというと、格闘技や技を見ただけでコピーできる能力があるかららしい。
あの怪鳥音はブルース・リーの映画でも見たのか。
病院通いは最初まだ親指の傷が治ってないのかと思ったけどガンっぽいな、と思ったら実は白血病らしい。

なかなかコメディ要素も強く、精肉場だけで展開されるコメディアクションはジャッキーチェンへのオマージュだろう。
ただ、コメディは戸惑うばかりで笑えない上に結構残酷なシーンも盛り込まれていて微妙だったけど。
ケツに刺さった釘を抜いたところでゼンに蹴られてまたぶすっと刺さるのはMが喜びそうだと思った。
そしてなんといっても一番のコメディは、マフィア側の人間が十数年の時を経て貫禄を増すのではなく、なぜかビジュアル系バンドかと思う容姿に変貌するところ。
黒髪ロン毛をオールバックで後ろに束ねて貫禄のあったボスが、なぜ茶髪中分けロン毛になるんだ~。
そしてこのボスはHPが9999くらいあって、何回殴られようが腹刺されようが刀でがっつり斬られようが何事もなかったかのように平然としてひたすら逃げ回っているのはギャグだよね。
もともとゼンの攻撃力が弱いらしく、雑魚敵も倒したはずなのにすぐ復活してまた襲いかかってくる。
バンダナ男もHP5000くらいはあって、ゼンにやられる度に「うー」と唸って倒れるけど気づいたらすぐ復活してまたお前かという感じのしつこさ。というかこいつ最初に撃たれていたよな。

2019年9月1日日曜日

映画『バイス』

2018年 監督:アダム・マッケイ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




こっち見てから『記者たち 衝撃と畏怖の真実』見ればよかったかも。
こっちの方が当事者なので、外から取材する側より突っ込んだ内情が見ることができる。
イラク戦争を巻き起こし、史上最悪の副大統領とも呼ばれるディック・チェイニーの自伝映画。
ディック・チェイニーはまだ生きているし、こういう伝記物って偉大な人物でやるもんじゃないのか?
成功譚あり、駆け引きあり、家族ドラマあり、でディック・チェイニーの人物像に迫っており、主人公としてなかなか面白い。
中盤のえせエンドロールで終わっていれば世界中の人が幸せだったものを。。
政界に復帰してからの極悪ぶりもそれまでの流れであまり嫌悪感なく見ることができるのは、全編結構なブラックコメディ調になっているからだろうか。
フィクションならいいけど、ほぼノンフィクションであって、コメディで軽く包んでやっているのが隠しているというか、より辛辣な感じ。

ディック・チェイニー役にクリスチャン・ベイル。
クリスチャン・ベイルってどんな顔だったっけと思うくらい別人物に見える。
他、チェイニーの妻役で影のドンにエイミー・アダムス。
ラムズフェルドにスティーヴ・カレル。
ブッシュにサム・ロックウェル。
パウエルにタイラー・ペリー。

登場人物が実在の人たちによく似ているのね。段々本人なんじゃないかとすら思ってくる。
ジョージ・W・ブッシュっていいとこのわがままなぼっちゃんみたいな雰囲気が当時嫌いだったけど、この映画のブッシュ像のそのバカっぷりは訴えられないのだろうか。

映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』

2017年 監督:ロブ・ライナー
製作国:アメリカ
at ギンレイホール





政府の嘘を暴く新聞記者ってよく映画化されるよな。
これはイラク戦争開戦の根拠にまつわる嘘を暴く話。
暴くというか、「ナイト・リッダー」という小さな通信社みたいなところなので、そもそも記事を載せてくれなかったりするんだけど。
小さい故に大物でなく職員レベルが主な取材ターゲットとなり、そこから見えてくる真実がある、っていうのが面白い。

主演はウディ・ハレルソンとジェームズ・マースデンの二人なのかな。
ロブ・ライナーが支局長役で出演。頼れる上司っていうのはいいもんだ。
ベテランジャーナリスト役でトミー・リー・ジョーンズ。出てきた瞬間ニヤっとしてしまい、はて?と思ったらコーヒーのCMで見すぎたためになんか色物俳優みたいなイメージが知らないうちについていたのではないかと気づいてびっくりした。