2020年12月19日土曜日

映画『WAVES/ウェイブス』

2019年 監督:トレイ・エドワード・シュルツ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




上流階級で成績優秀でレスリング部のエースの高校生タイラー(ケルヴィン・ハリソン・Jr)。
かわいい彼女もいて順風満帆、
しかし怪我に見舞われたりガキんちょには対処に困るような出来事がタイラー君の身にふりかかる。
とそこまではいいのだがそれらが積み重なって最悪の結果が。。
で次は妹ちゃんエミリー(テイラー・ラッセル)の話になる。

二部構成?
予告編見たときはこのエミリーが主役だと思っていたからタイラー君早く退場しないかなと思っていた。
意外と長い出番。

表向きは理想的な家族があっけなく崩壊し、そして再生していく物語。
ストーリーは本当どうでもいい感じではあった。
演出の方は360度ぐるぐるカメラが回ったり、アスペクト比が心情に応じて変わったりとか、なんかいろいろやっているけど、それが面白いかどうかは置いておいてなにはともあれ音楽を含めて音がうるさいので全く頭に入ってこない。
ダルデンヌ兄弟の映画を見たばかりだからなおさら音に敏感だった。

むきむき黒人金髪がどうも苦手なんだよな。
今やアジア人も含めて理想の体格って男女ともに世界共通のものになりつつあるなか、その理想を一番体現しているのは黒人であってそのままで美しいのになぜださい金髪にするのか。
妹ちゃんの方はスタイル抜群なので2部からが本番みたいな感じ。

妹ちゃんの彼氏ルーク(ルーカス・ヘッジズ)君がサイコパスかシリアルキラーにしか見えなかったのに普通に好青年かい。
ルーカス・ヘッジズは『マンチェスター・バイ・ザ・シー』の甥っ子か。がたいでかくなったな。

面白かったのは俳優たちの年齢で、タイラー役のケルヴィン・ハリソン・Jrと妹ちゃんテイラー・ラッセルと彼女役アレクサ・デミーはともに1994年生まれ。
25歳とかだよ。高校生。
ルーカス・ヘッジズだって1996年生まれ。
確かにはじめ大学生かと思ったら高校生かよと思いはしたけど、そんなに違和感はなかった。若いなぁ。


以下ネタばれ

被害者の親の前でよく号泣できるよなぁ。
タイラーは一体なんのために鍛えていたのか。
殺意があったわけではないのに最愛の人を誤って死なせたなんて精神が崩壊する。
欧米人は特にそう思うけど彼らはなんで怒りを抑えられないのか。
日本人だって怒るけど血管ぴくぴくさせながらも我慢する人がほとんどだよね。
日本人でもたまに大声でブチ切れる人はいるけど、このやばい人達がむしろ世界標準なのか。

一番良くわからないのは、グーか張り手かわからないが決め手は床への頭強打でしょ。
サスペンスドラマとかだと殴られて机の角に頭ぶつけて、っていうのはよくあるが、床って。。
身長高いとしても2M未満の高さから少なくとも横向きに力が加わっている状態で床に頭ぶつけて死ぬ?
タイラーに殴りかかってジャンプしているときに殴られて空中でぐりんと回転してそのまま頭を床に強打、とかいうわけでもないしな。
まだ殴られて首の骨が折れたとかのほうが納得できる。

映画『その手に触れるまで』

2019年 監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ,リュック・ダルデンヌ
製作国:ベルギー / フランス
at ギンレイホール




この予告編、もう絶対面白い映画でしょって期待が高まる。
で、本編は期待通り面白かったのだが、なんというか潔すぎないか。
短いと思ったら84分しかなかったのか。
もっと見ていたかった。

というかこれ監督ダルデンヌ兄弟だった。
確かに。音楽もなく予定調和な盛り上げかたも一切ないのだが、淡々とした中に現れるドラマ性が秀逸だった。

ベルギーに暮らす13歳のアメッド(イディル・ベン・アディ)は最近までゲーム好きの少年だったらしいが、イスラム教の導師に感化されて過激よりのイスラム教にはまっていた。
公式ページによるとベルギーのブリュッセル西部のモレンベークは10万弱の人口の半分(地域によっては8割)がイスラム教徒らしい。
そして一部の過激派はパリ同時多発テロ等にも関与していて「ブリュッセルはヨーロッパにおけるテロリズムの交差点と化している」らしい。
善悪、敵味方、純潔不純。単純明快な二分は思春期に抱える漠然とした不安にがっちりはまったのだろうか。
少年の偏執的なまでの執念がすごい。

農場の女の子ルイーズ(ヴィクトリア・ブルック)がかわいい。
少しませた感じのたくましさがアメッドに与えた影響は大きかっただろうか。


以下ネタバレ
ラストは肩透かしっぽい感じで、まさかっと思ったらエンドロールに入る。
つまりどういうことだろう。
命の危機に際しては過激な思想もころっと覆る程度のことに過ぎなかったってこと?

2020年12月5日土曜日

映画『パブリック 図書館の奇跡』

2018年 監督:エミリオ・エステヴェス
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




オハイオ州に大寒波が襲来する。
凍死者も出る中、市が提供する避難用シェルターは満杯。
ホームレス達は身を守るため行きつけの?図書館に立てこもる。
図書館職員のスチュアート・グッドソン(エミリオ・エステヴェス)は最初こそ難色を示すが次第に彼らに協力することにする。

この事件の解決を利用したい次期市長選に立候補者の検事ジョシュ・デイヴィス(クリスチャン・スレイター)とか、大事件にして有名になりたいレポーターのレベッカ(ガブリエル・ユニオン)とか、なんかお疲れ気味の館長(ジェフリー・ライト)とか、ホームレスになっている息子を探したい敏腕交渉人(交渉してたっけ?)のビル・ラムステッドアレック・ボールドウィン)等々、外では思惑がうずまきながらも、内ではその息子やらレーザーアイを持ったビッグ・ジョージ(チェ・“ライムフェスト”・スミス)やらグッドソンの過去とかいろいろドラマもある。
陽気でバイオレンスでチャーミングで社会問題を扱いながらも頭空っぽで楽しく鑑賞できる。
全体的に人物造形はそんなに深くはないけど、こういう定型的なので固めるとそれはそれで楽しい。
館長が合流するところなんかよく意味がわからないのもあってギャグっぽく見える。蝶ネクタイをかっこよく外すのなんか全然かっこよくないしwww。
レーザーアイがメガネかけて周りを見渡したり、人をガン見したりする演技って誰がやってもそりゃあこうなるよなという白々しさが楽しい。

グッドソンの同僚でぱっつん前髪メガネのぽっちゃりマイラ(ジェナ・マローン)が可愛い。
なんやかんやいいながらも帰らずに留まるとはいい子だ。
アパート管理人のアンジェラ(テイラー・シリング)もその顎とともになかなか男勝りなさばさば感がいい感じ。

なにより驚いたのは、レポーターで馬鹿な小娘役のガブリエル・ユニオンはなんと1972年生まれ!
テイラー・シリングより12歳も上だよ~~。

映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』

2019年 監督:フランソワ・オゾン
製作国:フランス
at ギンレイホール




今も裁判が進行中らしいプレナ神父事件という実際の事件が題材になっている。
主演が途中でシームレスに切り替わっていくような形になっている。

事件自体はカトリック教会にありがちな少年への性犯罪。
しかしまあ何十年もの間罪を重ね続ける、野放しにされる、っていう環境がもう恐ろしい。
犯罪の性質上被害者が声をあげにくいということもある。
子供に与える衝撃・トラウマは空き巣に入られたとかそんなレベルじゃないから重犯罪だよな。
そういえば映画の中で教会が素晴らしいものとして描かれているのをあまり見た記憶がない。

被害者達は大人に成長した今も事件のトラウマを抱えている。
エマニュエル(スワン・アルロー)がプレナに関する新聞記事見ただけで癲癇みたいな発作を起こしたのは泣きそうだ。
というかバイクになんか乗っても大丈夫なんだろうか。
エマニュエルの彼女の嫉妬具合も壊れているよなぁ。
被害者たちのトラウマ、親の葛藤・無関心、家族愛、教会や神父の無垢なのか馬鹿なのかわからないずる賢さ、被害者たちのすれ違い。
事件の内容もさることながら、なかなか面白い人間ドラマになっている。

エンドロール見て気づいたけど監督はフランソワ・オゾンだった。
まじか、全然気付きもしなかった。。こういう題材も撮るのか。
あと、一人目のアレクサンドル役はメルヴィル・プポーだった!
一時期好きな俳優を聞かれたらメルヴィル・プポーとロマン・デュリスと言おうと決めていた時期がある。(誰にも聞かれなかったが)
そんなにお気に入りだったのに全く気づかなかった。というか今でもなんかしっくり来ていないけど。おっさんになったな。