2022年8月21日日曜日

映画『偶然と想像』

2021年 監督:濱口竜介
製作国:日本
at ギンレイホール




全三話の短編。
なんとなく登場人物をリンクさせたり、道ですれ違わせたりとかしちゃいがちだけど、完全に独立した三話。
小説でも映画でも短編が苦手な方なんだけど、各話すんなり入れたので脚本がうまいのかな。

全体的な印象としては、ちょっとした違和感を意図的に瞬間的または継続的に入れて画面を引き締めるのが好きな監督なのかな、と。
「第一話 魔法(よりもっと不確か)」の入りの会話内容から面白いんだけど、どことなく棒読みの浮ついた違和感がある。
タクシー運転手がバックミラーでちらっと見たのが何かにつながると思ったらつながらない。
そもそも古川琴音の見た目が子供すぎて、キャラと実物の違和感。。。
あとギャグみたいに使うズームとか。

棒読みのやつは気になって調べてみたら、玄理さんのインタビュー記事があった。
役者による作為的な演技を排したい意図があるみたいね。
濱口竜介監督が『寝ても覚めても』の監督だったと知ったとき、東出昌大とかそういう棒読み役者が大好きな人なんだとすんなり納得したんだけど、そんな演出意図があったのか。

古川琴音はつい最近出てきたと思ったらいつのまにか人気女優になっているのね。
独特な見た目と独特な声での独特な台詞回しで一度見たら忘れないようなスター性があるしなぁ。

「第二話 扉は開けたままで」の渋川清彦はその変態性含めて渋かった。
森郁月さんって人はなかなかの色っぽさ。
渋川&森の抑圧された淡々とした応酬も面白いんだけど、セフレ役の人が役にドはまりしているのが一番おもしろかった。
ぼっちゃん顔でわがままそうで、むきむきじゃないガタイの良さしていて、頭悪そうなのに世の中うまく渡って成功しそうな感じ。
仮面ライダー出身の人みたいね。

「第三話 もう一度」
河井青葉さん演じる役の、おっとりした大物風の風格がすごいわ。
そのせいか、主役の占部房子さんの小物感が際立って、、違和感。
高校の20年目の同窓会ってことは30後半??ってことに違和感。
ああ、違和感って別に悪い意味で行っているわけじゃなくてむしろ逆。楽しい。
予告編にある再会シーンを改めて見ると、目きらきらしているし、事情を知ったあとで見るとさらに面白いな。それにしてもうまい演技だ。

そういえば映画タイトルは偶然と想像か。
偶然はわかりやすいけど想像はそれぞれあれのことかって思い出すと、ああ、ちゃんと偶然と想像じゃん。よくできている!
面白かった。
全7話のシリーズにするらしいので、残り4話も楽しみ。

映画『春原さんのうた』

2021年 監督:杉田協士
製作国:日本
at ギンレイホール




音をよく拾うのね。音響が素晴らしい。音聞いているだけでも何時間でも見ていられそう。
音楽もほぼ無く、あっても和音の響きだけ、みたいな。
好きだわ、こういうの。

映像の方は、ワンシーンワンシーンが恐ろしく長い。
手を洗っているだけのシーンを何十秒も見させられたりとか、長いわって突っ込みたくもなるけど、段々慣れてくる。
むしろそういうゆったりした時間の流れが心地良い。
最近テンポのいい映画しか見ていないから、昔の名作映画とかまた見ていこうかなって思った。

ストーリーは、1mmもわからなかった。
たまに映るおかっぱの子は誰なのよ。
隣の部屋の子かと思った。いつ主人公とからむのかと。
主人公沙知は、周りから何か心配で気にかけられている雰囲気で、どうやら最近大事な人を亡くしたらしい。
それがおかっぱの子かな。
窓枠上映のシーンなんかは、もしや実は沙知は亡くなっていて、追悼で皆が沙知の映像見ているんじゃないかみたいな、それまでのシーンを少し思い返せば辻褄合わないとすぐ分かるような妄想までしてしまうほど混乱はしていた。

主演は荒木知佳という人で、おっとりした感じが映像によく合っている。
映像に映える役者さんってたまにいるけど、この子は映えるというか優しく溶け込む感じで、いつまででも見ていられる。

コロナ禍の撮影だからか、皆普通にマスクしているし、帰宅して入念に手も洗う。
なんかちゃんと現代をありのままに切り取っているのが、普通のことなのに感心した。
映画にしろドラマにしろ、現代ものの話なのにコロナなんかないかのように誰もマスクしていないじゃん。
フィクションであっても時代設定が現代ならマスクしていないとおかしい、っていう当たり前のことになぜ気づかなかったのか。
役者の顔見せることよりも重要なことだよなぁ。

どのシーン、どの登場人物も印象的だった。
人物だと、アパートの前の住人の彼女らしき人がすごくよかった。
なんだろう、一言で言えば「いい人」って感じだけど、なんかすごくリアルな感じなんだよね。喋り方とか。笑顔とか。おどけた感じとか。

シーンだと、いろいろあるけど、雨の中でカッパ着てスクーターに乗る準備しているところかな。
二人の立ち姿とか、ヘルメット拭いたりとかのやりとりがよかった。
あとは道案内でゆったり歩いているところとか、どらやき食っているところとか、突然の書道が本格的でびびったり。

https://www.nobodymag.com/interview/haruharasannouta/interview.html
インタビュー記事が面白い。
書道のシーンは最初の方に撮影されたらしく、その頃にはまだ映画の骨格すら決まっていなかったらしい。
それでよくあんな異様なシチュエーションのシーン撮ったなぁ。

舞台はどこかの地方かと思っていたら聖蹟桜ヶ丘らしい。いいところだねぇ。

2022年8月11日木曜日

映画『ウエスト・サイド・ストーリー』

2021年 監督:スティーヴン・スピルバーグ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




タップダンスじゃないミュージカル映画に興味なくて見たことなかったんだけど、えー、こんなお話だったの!
オリジナルってアメリカン・ニューシネマの頃だったっけ?いや、1961年だし、ブロードウェイの初演は1957年。
歌って踊って散っていく。こりゃあ確かに若者に衝撃的に受けそうだぜ。
ロミオとジュリエットが下敷きらしい。そう言われてみればそうだ。

これって脇役は皆プロのダンサーかミュージカル俳優なんだろうか。
ダンススキルが主演二人以外はプロ級で、かなりの見ごたえがある。
本編の一部がyoutubeで見ることができる。


すごいねー。

バーンスタイン作曲の音楽がどれもこれも有名すぎて懐かしい。
吹奏楽でよく演奏されたもんだ。

主演トニー役のアンセル・エルゴートは、坊っちゃん顔のイケメン。
なんか見たことあると思ったら『ベイビー・ドライバー』の人か。

ヒロインマリア役はレイチェル・ゼグラー。
オーディションで選ばれたyoutuberらしい。

バレンティーナという商店のおかみさん役に、前作アニタ役のリタ・モレノ。

以下ネタバレ


しかしまあ、あれだけの稀有なダンススキルを持っていながらどうでもいい諍いで命を落とすとか、兄が殺された日に兄を殺した男と・・・とか、おっさんには理解がおいつかんぞ。

映画『ナイトメア・アリー』

2021年 監督:ギレルモ・デル・トロ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




1939年アメリカ。家を焼いて故郷を離れた青年スタントン(ブラッドリー・クーパー)は怪しいカーニバル一座に拾われる。
スタントンはここで読心術を使ったショーをする夫婦の助手をしながら、読心術を身につける。
で、まあいろいろあってサスペンス!

面白いけど150分は長いなぁ。

無口な好青年風のスタントン。
しかし意外とやばいやつっていうのは冒頭や、獣人ボコっているところで片鱗が見える。
だからモリー(ルーニー・マーラ)といい感じになっても幸せな未来が見えなくて悲しい。

前半と後半で雰囲気ががらっと変わる。
舞台が変わっても、どこか作り物めいた怪しい雰囲気を保っているところは面白い。
かつての仲間が高級な部屋にいるっていう微妙な違和感とかもよかったな。

途中うとうとしたからか、スタントンの過去や人物像がいまいち不明だった。
中断したカウンセリングの内容の続きがラストのあの回想なのかな。
酒を頑なに絶っていた理由の説明もどこかであったのだろうか。

意外と最重要人物だったリリス・リッター博士にケイト・ブランシェット。
師匠夫婦にトニ・コレットとデヴィッド・ストラザーン。
座長ウィレム・デフォー。