2022年9月23日金曜日

映画『カモン カモン』

2021年 監督:マイク・ミルズ
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




子供の取り扱い説明書みたいな映画。

ニューヨークを拠点にラジオジャーナリストとして働くジョニー(ホアキン・フェニックス)。独身。
ジョニーはアメリカ中を飛び回って子どもたちにインタビューしている。
そんな折、母の死後以降いろいろ気まずくなって避けていた妹ヴィヴ(ギャビー・ホフマン)の9歳になる息子ジェシー(ウディ・ノーマン)をしばらく預かることになる。
子供にインタビューはしているけど、子供と長時間普通に接したことのないジョニーの戸惑い。
子どもは大人の鏡というけど、ジェシーを通して大人たちが成長していく物語でもある。

途中だいぶうとうとしてしまった。
子役のウディ・ノーマンがまた達者なんだわ。
達者すぎてしらけるってところまで足が少しかかっているくらいのギリギリのライン。
登場人物が子供(といってももう9歳)を神様みたいに扱って、子供の言動を神のお告げかのように読解していく、みたいなスタンスを披露しなければいけないほどアメリカ社会における子供の扱いは悲惨な状況なのだろうかと思ってしまった。

モノクロで切り取られたアメリカはなかなかよかったし映画は面白かったんじゃないかと思う。寝たからよくわからん。
音を扱っていながらあまり音に繊細ではないところが少し気にはなった。

映画『ふたつの部屋、ふたりの暮らし』

2019年 監督:フィリッポ・メネゲッティ
製作国:フランス / ルクセンブルク / ベルギー
at ギンレイホール




冒頭の少女二人のかくれんぼ、カラスの鳴き声が不気味な中、一人の少女が忽然と姿を消す。
そんな不穏な映像から、薄暗い部屋のシーンへ。
ベッドに腰掛ける女性と、左奥の鏡越しに女性が小さく映っている。
薄明かりの暖かさと、奥行きがあるようで鏡越しという窮屈なようでもある絶妙な映像。
この冒頭数分だけでただものじゃない映画になっているよなぁ。

南仏モンペリエのアパートの最上階で向かい合った2つの部屋にそれぞれ暮らすニナ(バルバラ・スコヴァ)とマドレーヌ(マルティーヌ・シュヴァリエ)は、長年の恋人関係にある。
二人はアパートの部屋を売り払ってそのお金で二人でローマで暮らす計画を立てていて、いよいよ実行に移すって段階まで来ているものの、マドレーヌは事実をなかなか家族に打ち明けられないでいる。
ニナは独身だがマドレーヌは結婚していて孫までいるのね。
結婚といってもあまり幸せといえない結婚生活だったっぽい。
いつまでたっても家族に言えないマドレーヌにニナは怒るのだが、そんな折マドレーヌの身に。。。

障害があるほど燃える恋、っていうか障害しか無いっていうね。

介護士のおばさんは仕事に対する責任とプライドを持っていて、彼女のニナに対する対応は至極当然のことだったからこそ、可哀想に、って思っていたのに。。。

かくれんぼの少女達は誰かの少女時代とか同じ時代に生きる少女達とかではなく、暗喩的なものだったみたいだ。
黒と白、白をそのまま水中に沈めるか、白を命がけですくい上げるか、っていう。

なかなかおもしろかった。

2022年9月3日土曜日

映画『ブルー・バイユー』

2021年 監督:ジャスティン・チョン
製作国:アメリカ
at ギンレイホール




3歳のときに養子縁組でアメリカにやってきたアントニオ(ジャスティン・チョン)は、シングルマザーのキャシー(アリシア・ヴィカンダー)と結婚して連れ子のジェシー(シドニー・コワルスキ)も含めた3人で貧しいながらも仲良く暮らしていた。
キャシーのお腹には新しい命も宿っている。
新しい家族も増えるし、アントニオは収入の少ない入れ墨の彫師を廃業して新たな職につこうとするがなかなか採用されない。
そんな折、アントニオの不当逮捕をきっかけに養子縁組の時の手続き内容に不備があることが発覚して国外追放命令を受けてしまう。

冒頭のピンク色した入江が幻想的でおー、と思ったんだけど、その後はなんか全編通して映像がつまらないというかしょぼい演出だなぁという印象だった。
ネットで検索してみると、演出はおおむね絶賛されている。そっか。じゃあよかったのか、な?

空港のシーンはセカチュー思い出した。
スライディングしながら駆け寄るのなんて世界中で森山未來くらしかやらない演技だと思っていたよ。
なかなか泣けるシーンのはずがそこで少し覚めてしまった。
覚めたのはエース(マーク・オブライエン)お前急に何があった?とかいろいろ伏線もあったしなぁ。

それにしてもジェシー役のシドニー・コワルスキが凄い。
恐ろしい子役がいたもんだよ。
子供に自由に遊ばせているのを撮影しているような自然さじゃなくて、どう考えても確実に演技しているのに自然っていう。
しかもめっちゃかわいらしいし。

映画『ブラックボックス:音声分析捜査』

2021年 監督:ヤン・ゴズラン
製作国:フランス
at ギンレイホール




最新型の航空機が墜落。
原因調査の鍵はブラックボックス。
微妙なピッチの違いさえも聞き分ける優秀な音声分析官のマチュー(ピエール・ニネ)はこの事故の担当ではなかったが、上司の謎の失踪により担当することになる。
記者発表まで時間のない中あっという間に原因を特定したマチュー。
しかしこの音声は何かがひっかかる。。。

失踪した上司ポロックや、同じ航空業界で働き、航空機の認証機関みたいなところで働く美人のやり手妻ノエミ(ルー・ドゥ・ラージュ)とか、航空大学時代の同僚で、航空機専門のセキュリティー会社を経営するルノーとか、いろんな人が絡んで謎が深まりながらがしゃがしゃ絶望的に崩壊したりして、なかなかおもしろいサスペンスだった。

面白いのは主人公マチューに対する印象をころころ転換させるところ。
主人公なんだしその圧倒的能力で獅子奮迅の活躍をみせるのかと思いきや、行動力が凄いというか結構やばいやつだったりもする。
彼の妄想はどこまで真実に近いのか?それともただの妄想なのか。評価のゆらぎが面白い。

以下ネタバレ

ラストはなんかあっけなかったな。
あと、あんなに厳重に開封したブラックボックスの中身を、最高権限持っていそうとはいえ簡単にすり替えられるならブラックボックスってなんなの?という気がしないでもない。