2023年9月30日土曜日

映画『孤狼の血 LEVEL2』

2021年 監督:白石和彌
製作国:日本
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『孤狼の血』の続編。
原作にはないオリジナルストーリーらしい。
にしてもめっちゃ面白かった。

今作では日岡秀一(松坂桃李)が主人公となる。
あれからかなり頑張ったらしい。完全に裏社会をコントロールしている。
そこに上林成浩(鈴木亮平)という五十子会長の右腕だった男が出所する。
なんか礼儀正しい人の良さそうなあんちゃん。
と思ったのもつかの間、、、悪魔や。。

この上林っていうのがマジで恐ろしい。
組長警察一般人、見境なさすぎる。頭悪いんだろうな。
それが押し通ったのは裏である思惑があったからなんだけど、一番野放しにしちゃいけない男に自由を与えたらそりゃあ秩序が崩壊するわ。
鈴木亮平ってこんなに耳が尖っていたっけ。
変な髪型含めて悪魔にしか見えん。
こんなところにスパイ送り込むとか正気の沙汰じゃないんだけど、見てるこっちは上林が次にどんな行動するのかビビりながら見ているから、緊張感がものすごい。
上林の過去を少し掘り下げたり等、キャラクターとしても大事にされている感があって、最後の方なんてなんか可哀想かっこよく見えてくる。

登場人物は多い。
印象的なキャラクターが多くて飽きない。
音尾琢真演じる成金ヤクザとかさ、前作では下っ端とはいえ結構イケイケなヤクザだったのにすっかりコメディ雑魚キャラにwww
腹黒な監察官(滝藤賢一)は、お前何様っていう凄みをきかせたりして大物ぶっているところでの最後の落差とか、痛快。こういう落差の演技できるのって凄いよね滝藤賢一。
中村梅雀、宮崎美子の胡散臭さとかさ、癖強い人達ばっかり。
吉田鋼太郎演じる会長の雑魚感とか三宅弘城演じる警部補の正義感だけの無能キャラとか大物なのか小物なのかわからない斎藤工演じる若頭とか。
あまり出番のない尾谷組組長代行役の渋川清彦の最後のシーンのクローズアップ顔はあまりに渋すぎて笑いそうになった。

あまりに素人でなんか違和感あると思ったクラブのママ役は柚月裕子だった。

ドキドキで最高に面白かったよ。上林は映画史に残る悪役。

2023年9月24日日曜日

映画『宵待草』

1974年 監督:神代辰巳
製作国:日本
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冒頭から床。
でも女性がさわさわするたびに男は「いてっ!」「いてっ!」とか言っている。おどけた伴奏まで付くし。
なにこれ、コメディ?
遊郭の朝5時。男は苛立ちながら慌てて出ていき、憲兵を襲う。えっ。。
ぶれっぶれっに揺れて酔いそうになるカメラ、刀がぶつかり合うキュぃーんっていうコントみたいな音、、なんか開始5分で大混乱だよ。

これは、実は傑作なのか、よく分からないけどかなり面白かった。
ストーリーは先があまりにも読めなさすぎる。
3,4本くらいの違う映画をつなぎ合わせて1本にしたのかと思うくらい。
コメディなのかシリアスなのかミュージカルなのかアメリカンニューシネマなのかwww

代議士の息子のぼんぼん国彦(高岡健二)は、やろうとすると頭が痛くなってできないという奇病を抱えていた。
いや、そこはあまり重要じゃないか。
国彦はノンポリだが、革命を起こそうとしているアナーキー集団に所属している。
あ、時は大正ね。
温泉宿で知り合った男が唐突にいなくなったり、なんやかんやで国彦と平田玄二(夏八木勲)と北条寺しの(高橋洋子)の逃避行ロードムービーが始まって映画撮影に参加したり気球に乗ったり3連串刺ししたり玄二の父(殿山泰司)が毒おにぎり食ったりでんぐり返ししたり。

コメディとシリアスのどっちともつかない狭間っていうのが結構怖い。
いつの間にか電車を降りた団員が吊り橋をえっほえっほと走っているのは追手が迫る恐怖というか走る姿が可愛らしいし、その後の気球を降りる平田たちを笑い声あふれる和気あいあいとした雰囲気で手伝うところとか、ハテナマークと共に不気味な恐怖がある。
萎んだ気球が覆いかぶさってくるのは演出通りなのかな。
3連串刺しとかギャグだよね。
気球の操縦士はこつ然消えたけど何処行った??怖い。

名シーンも多い。
雪解けのぐじょぐじょの未舗装道路を走る自転車を馬で追っかけるのはいいし、死者の前で大衆演劇みたいな舞踊シーン(巧みに避ける国彦)とか、後ろから迫りくる蒸気機関車をさして気にもせずに避けたり、汽車に乗った「しの」が降りるところが映っていなかったり、海沿いっぽい所にある竹柵に寄りかかっている二人がカメラが引くとすごい岸壁だったり等々。

脚本は長谷川和彦なのね。
監督作2作しかないけど二本とも傑作だったし長谷川和彦ファンなら脚本作も全部抑えていそう。(私は知らなかった)
このページみると結構演出で変えているみたいね。
音楽は細野晴臣。
牧歌的な曲が多い。
アップテンポ船頭小唄とか大正歌謡とか、常に口ずさむやつがいいんだけどその辺は神代辰巳の演出であって細野晴臣は関わっていないんだろうな。

そういえば国彦(高岡健二)が痛みで頭を掻きむしる姿が一瞬宮本浩次に見えたw

北条寺しの役の高橋洋子は可愛らしい顔立ちで、時々凄い美人でもある。
高橋洋子、書いた小説は芥川賞候補になって映画監督もやっている。めっちゃ多才。
NHK朝ドラのヒロインもやっていて、平均視聴率46.1%。めっちゃ有名。
文学座で松田優作と同期だったらしい。
高橋洋子っていうと、ああエヴァの。。ってなるけど、古い世代はこちらの高橋洋子さんになるんだろうな。

2023年9月17日日曜日

映画『恋人たちは濡れた』

1973年 監督:神代辰巳
製作国:日本
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自転車の車輪のアップから荷台にフィルム缶を積んだ自転車の後ろ姿。
漕ぐ男はしきりに後ろを振り返りながら坂道を登っていく。
潮風で錆びた倒れかけのようなガードレールの向こうには白波が立つ海。
こけて転がるフィルム。
男はフォルムを巻きながらこんにゃろー
『恋人たちは濡れた』ドン!
冒頭からとんでもなく引き込んでくる。

男(大江徹)は映画館でフィルム運びの仕事をしている。
3日前にこの町に流れ着いたらしい。
しかし「お前中川の克だろ」といろんな人に声をかけられる。
そんな奴知らねーよ人違いだよと。
この辺の設定がよく分からなかったけど、当時のプレス資料で「五年振りに故郷の土を踏んだ男」って書いてあるみたいだから人違いじゃないらしい。
最後まで見てなんとなくそうかなとは思ったが、はっきりそういう設定だと分かるとまたいろいろ見方が変わってくるな。母親シーンとかさ。

プレス資料から
「男が故郷に帰った時、生きる望みを失った男の死を待つ姿があった。女の誘いも、男の友情も、母も、それは遠く離れた過去の思い出しかなかった。そんな一青年の暗い青春を描く日活ロマンポルノ注目の話題作。」
怖いもの知らずな感じは未来に絶望しているからか。
喧嘩をふっかけ、またはふっかけられるようなことをよくするのに、恐ろしく喧嘩が弱い、ってところが愛しい。
喧嘩に負けてハイハイしながら家に帰る途中、喧嘩相手光夫(堀弘一)の彼女洋子(中川梨絵)に蹴られたり頭はたかれたりとかさ。
この光夫と洋子とはその後なぜか3人でつるむようになる。つるむって言い方は違うか。克があんな感じだから仲よさげな関係でもないし。
光夫は世話焼きのいいやつで、洋子はなにやら克に興味がある風なのね。
洋子ちゃんの70年代サイケなファッションが可愛い。

絵沢萠子の全力走りは絵になるなぁ。
かなり早いけど、若い男の全力には及ばない悲しみ。

3人で馬跳びのシーンが一番好きだった。
3人ともへろへろになってんの。脱いでるし。
洋子は克とやりたいんだけど、いつも近くには光夫がいるし、3Pでもいいやみたいなことか。

「本当はよ、俺だってあんたとしたいんだよ」「だけどな・・・」
すごいラストシーンだ。

絡みはエロさはあんまりない感じ。
砂が痛そう。

「まあね」と「こんにゃろー」がしばらく口癖になりそうだ。

神代辰巳は学生の頃映画館でやっていた特集で『四畳半襖の裏張り』と『赫い髪の女』を見たはずなんだけどあまり覚えていないからまた見てみたいな。

2023年9月10日日曜日

映画『うれしはずかし物語』

1988年 監督:東陽一
製作国:日本
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「ねえおじさん、あたしを愛人にして」
オープニングから引き込まれるよね。
殺風景なマンションの室内でおっさんと若い子がどことなくぎこちない感じで喋ってんの。
この人たちは何者なんだろうっていう興味からこのセリフww

寺田農と川上麻衣子主演。
今で言うところのパパ活みたいな関係。
企業の部長で妻と二人の子供がいるおじさん(寺田農)と純粋で奔放なチャコちゃん(川上麻衣子)がひと月15万毎週金曜に会う愛人契約を結ぶ。
おじさんは性欲だけじゃなくてチャコちゃんにめっちゃ夢中なのね。
チャコちゃん側はもちろんドライなんだけど微妙に謎な部分があって、最後に。。
だいぶ男視点の願望が詰まっているような気もしないでもないところ。
今だったらガチ恋客とかクソ客。
原作はジョージ秋山の漫画。読んでみたい。

エロ多めだけどなんか明るいのは全体的にコメディ要素が強いからか。
おじさんの妻(本阿彌周子)もよろしくやっていて、二人のすれ違いなんか緊張と緩和で笑える。
この本阿彌周子がまたエロい。川上麻衣子がきれいな体していてエロいんだけど、少しも負けてない熟年のエロス。

寺田農になんか憎めない愛嬌のあるおっさん演じさせたら強いよな。
それにしても女性側がノッていればいいけどそうでない場合は舐め回す男側の責めとかってキモいし滑稽よね。
ましてやおっさんと若い女性って組み合わせならなおさら。

日活ロマンポルノが終わった年に公開された日活ロマンポルノじゃない作品らしい。
なかなかの名作だった。