2004年2月14日土曜日

映画『カラマリ・ユニオン』

1985年 監督:アキ・カウリスマキ
BS2 録画


カラマリ・ユニオン

この映画を1回見てストーリーと登場人物を全て把握した、という人はいないだろう。
いや、何回見ても結局分からないと思う。

怪しげな会合を開いている10数人の年齢もまばらな男達。
彼らは皆貧乏で今いる街にうんざりしている。
だから彼らは祖父母から聞いた街の反対側にあるという理想郷エイラに向けて出発する。

とりあえず地下鉄を乗っ取って街の中央まで行き、そこからは各自ばらばらにエイラに向けて旅立つ。
この道程には危険がつきまとう。
なんだかよく分からんが彼らには敵が多い。
一体誰がエイラにたどり着くことが出来るのか?
街で繰り広げられる冒険ロードムービー。
と言ったらこの映画について少し勘違いされることは間違いない。

彼らは名前をフランクと言う。彼ら一人一人の名前が皆フランクなのだ。
しかも多くはサングラスをかけて怪しい雰囲気。
皆同じ名前の上サングラスをかけているもんだから本当誰が誰だかわかんない(サングラスを一度もかけない男もいるが)。
一回見終わってから再び再生して、髪形や服装や体形で特徴つかみながら人物の答え合わせした。
そうしないと分からない。

彼らは一人だったり二人組みだったり、三人、四人と組になって行動する。
この組は流動的で固定しない。
街は相当広いはずだが、彼らは街を歩いたり適当にカフェに入ったりすると偶然か必然か、遭遇する。
しかし彼らに偶然という驚きはない。「やあフランク」と、いたって自然。
彼らはゴキブリのように街のいたる所にいる。ように錯覚する。
朝になり、走る車のボンネットにグラサンの男が寝そべっていたかと思えば、その車が走り去った後にマンホールからこれまたグラサンの髭男がにょきっと現れ、その男が木の上を見上げるとそこには別のグラサン男がいたりする。
サングラスかけた男達は誰が誰でもどうでもいいのだろうか。
いや、フランクという同じ名前、そして同じサングラス姿だが彼ら一人一人には強烈な個性とドラマが付与されている。
ダンディなおっさん、変なおっさん、かっこいい男、孤独な男、変な喋り方する男、とかげみたいな男、素朴な男、等々。
彼らは皆社会の秩序に生きていないが、秩序通りに生き、ドアボーイをする男もいる。
人と人を識別する名前を封じられ、目がサングラスで隠されると、内面に目が行く。
たぶん一度見ただけでは、違う人物を同一人物と捉える勘違いを普通にする可能性もある。
あるシーンで得た男の印象と、後のシーンで得た別の男の印象が合わさって、一人の男の印象が出来上がるのもまた面白いし、気に食わなければ何度も見直してあそこでああいう行動していたやつが後のあのシーンでああいう死に方したやつだな、ときっちり一人一人を識別してもいい。
無個性と個性の融合っていうのは、なにか間近で人物を凝視している様でもあり、どこか遠い所から壮大なスケールで人間を包括的に見つめている様でもあって面白い。

ロックで詩的な映画と言えばいいか。
しかも結構笑える。おもろい。

冒頭の、おっさんが叩くドラムにいかれたらこの映画にはまるだろうな。

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