2004年2月17日火曜日

映画『めまい』

1958年 監督:アルフレッド・ヒッチコック
BS2 録画


めまい (ユニバーサル・セレクション2008年第5弾) 【初回生産限定】

映画って始まるとまず役者名やらプロデューサー、監督名などが出るじゃん。
黒い画面に白い文字で表れたり、導入シーンと共に文字が出たり。
タイトルクレジットって言うのかな。
『鮫肌男と桃尻女』のタイトルクレジットは最初っからぐいぐいいかしてたし、『秋日和』はちょっとした工夫でオーソドックスなくせに素晴らしいタイトルクレジットだったし、『燃えつきた納屋』は凍えそうなどきどきするタイトルクレジットだったし・・・
だけど、この『めまい』のタイトルクレジットときたらもう群を抜いて素晴らしすぎる。
むなしくなるからどんなタイトルクレジットか書かないけれど、タイトルクレジットから震えた映画なんて鈴木清順の『殺しの烙印』以来だと思う。

高所恐怖症の男スコティ(ジェームズ・スチュワート)が主人公。
ヒロインにキム・ノヴァクとバーバラ・ベル・ゲデス。

ヒッチコックは観客の感情を動かすのが上手い。
ヒッチコックの映画を見ていて沸き起こる感情は、楽しい、とか悲しい、と簡単に説明できそうでいて、とてもじゃないがこの感情を説明なんかできないと思いたくなる。
この映画には様々な感情が渦を巻いている。(くるくるカールしている)
様々と言っても主に感じる感情は"やるせなさ"。
怒りを伴ったやるせなさだったり、幸せになりたいのにその幸せには危険が伴ってしまうというやるせなさ、あと一歩を上手く踏み出せないやるせなさ、等々。
物語が展開するにつれやるせなさのニュアンスが微妙に、時に大胆に変化し、各登場人物の感情が複雑に絡み合いながら渦を巻く。
そしてヒッチコックの魔法で登場人物の感情が自分に乗り移る。
映画を見ている自分の中の感情が映画の中のぐるぐる回る渦に襲われる。
この時の感覚は不思議としか言いようがなく、映画でしか体験し得ない感動だと思う。

面白いのはラストで、映画の中のやるせない渦に唐突にストンと大きな石を落としている。
最後に一発観客と登場人物に対してのやるせなさのプレゼントで終わる、ということ。
少し呆けるが、ラストの余韻に浸るというより探り出せない意識の深部に渦が落ちた感じ。

この映画、結構ラストがどこか分からない。
あれ?終わり?と思うとまだ続きがあって…という連続で、つまりラストかな?と思った時点で自分の中で疑問と余韻に浸るモードに入りかけたところで、まだあんのかい!という具合にかき回される。

まあ、一言で言えばこの映画、面白い。

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