2005年5月20日金曜日

映画『片腕カンフー対空とぶギロチン』

1975年 監督:ジミー・ウォング
BS2 録画


片腕カンフー対空飛ぶギロチン

片腕ドラゴン師匠の講義によると、丹田に気を溜めると体が軽くなるらしい。
何も入っていない竹篭のふちを立って歩けるくらいに。
でもそれは初歩中の初歩で、次の段階に行くと壁を歩けるらしい。
・・・いや、無理でしょう。体が軽くなったところで壁はちょっと。
と思っていたら弟子たちの前で見事壁を歩いてみせた片腕ドラゴン!
しかも壁じゃあきたらず天井まで歩くという超絶技を見せてくれる。
体が軽くなって天井歩けるってつまり空を飛べるってことだよなぁ。凄いやつだ。

この作品は『片腕ドラゴン』の続編らしい。
前回倒した奴の師匠が空飛ぶギロチン使いの老人。
空飛ぶギロチンとはチェーンの先に付いた赤い帽子で、帽子の内側と外側には刃物が付いている。
チェーンで帽子をぶんぶん振り回してバヒューンと投げれば人の頭にすぽっと入り、チェーンを引っ張れば帽子と一緒に人の首がおまけに付いてくる仕組み。
最強の老人と最強の片腕宇宙人が激突する、のかと思いきや。

ストーリーの前半を占めるのが各国の腕自慢が集まった武道大会で、ムエタイの猿やらヨガ使いで腕が伸びるインド人やら奇人変人がたくさん出てくる。
この大会において片腕ドラゴンはただの観客。
その強さの披露は後の展開まで温存される。
一体天井まで歩いてしまうこの男はどれだけ強いのでしょう。期待が高まります。
武道大会では出場していた一人の男が、無刀流と名乗りつつ仕込み刀で相手を刺殺した。
それに気付いた片腕ドラゴンは「何が無刀流だ」と言いつつ続けて「やるな。参考にしよう」とのたまう。
この台詞に「ん?」と思いつつ大して気にしなかったのだけど、ここでとっとと気付くべきだった。
片腕ドラゴンって武術的にはそんなに群を抜いて強くはないのね。彼が強いのは知略(?)に優れていて・・・というか非常にせこいから強いのね。
せこいっていうのは片腕ドラゴンがというかそれを演じた監督でもあるジミー・ウォングという人がせこい。
この監督の美学やセンスは一般人には計り知れない。
『怒れるドラゴン 不死身の四天王』でもそうだったけど、この不自然さを不自然なまま強引に押し通す気概と、状況展開の繋がりにこだわらない大人ぶりと、見事なまでに繰り返す肩透かしと、姑息でも勝ちゃあいいんだよという勝利絶対主義と、残虐さとコメディーの融合による「はい?正義って何?」の問いかけは、はまると怖いものがある。
残虐非道な奴ら(敵も味方)を全て愛すべき人物に見せてしまうというただならぬ技術を持った博愛主義者。

サントラは70年代前半に活躍したジャーマンロックのNEU!(ノイ)。
ノイ!のアルバム曲を無断使用しているらしい・・・
ノイ!にしろギロチンの飛ぶ効果音にしろ、なかなか音に対してセンスのいい監督さんだ。

ジミー・ウォングという人は60年代末、『獨臂刀』で片腕剣士を演じてアジアのスーパースターになる。
しかしひき逃げ事件やら黒社会との癒着やらいろいろあって台湾に逃れる。
70年代には『片腕ドラゴン』や『スカイ・ハイ』等に出演し人気を回復。
80年代以降はプロデューサーとして活躍。黒社会の顔役となり、香港・台湾映画界の影のドンとしてかなりの影響力を持つ人物、らしい。

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