2008年4月29日火曜日

映画『ベティ・ペイジ』

2005年 監督:メアリー・ハロン
at ギンレイホール




ベティ・ペイジの半生を描いた映画。
ベティ・ペイジとは
1950年代に活躍した伝説のピンナップガール。またはボンデージ・クィーン。または裏マリリン・モンロー。

過激な世界に身を置いているのに、本人はいたって無垢なのね。
しかも敬虔なクリスチャンだし。
だからこそラストが感動的で結構泣ける。

日本版「PLAYBOY」誌(2008年1月号)にベティ・ペイジ本人のインタビュー記事が載っていたらしい。
ベティ・ペイジ本人はこの映画について、細かいところは嘘だらけだと文句を言っているらしい。
まあどっちでもいいけどこの映画で見たベティ・ペイジがベティ・ペイジなのだと無意識に思い込んでしまうのは注意しておくか。

映画『ヘアスプレー』

2007年 監督:アダム・シャンクマン
at ギンレイホール




ブロードウェイのミュージカルの映画化。
グッモーニングボーールチモアー
っていうオープニングナンバーの華々しいサビにはグワっと引き込まれる。
主人公はちびでおでぶな女の子トレーシー。
トレーシーはおしゃれや流行に敏感で「コーニー・コリンズ・ショー」というダンスと歌のTV番組が大好きだった。
彼女の夢はいつかこの番組に出演して憧れのリンク君と一緒に踊ること。

流行に敏感なトレーシーはヘアスプレーを使って流行のビッグヘアーにしている。
背が小さくて太っていてリベラルな発言をして流行の最先端を行く女の子、って「小生意気」っていってなんか同級生からいじめの対象になりそうな気がするけどそうはならない。
だってミュージカルだしね。
いじめはコミカルにならなきゃいけないんだから。学校のクラスのいじめじゃどうやっても陰湿にしかならないし。
いじめは「コーニー・コリンズ・ショー」のメインメンバであるアンバー(ブリタニー・スノウ)とその親で番組も仕切っているベルマ(ミシェル・ファイファー)によって行われる。
いじめというかチビでデブで可愛くない女の子に対する嫌悪(差別)なんだけど、なにしろこのいじめには味方がいない。
なぜならトレイシーは皆から愛されているから。
そんな差別するやつは許しませんって事でこの親子は最後にみじめになっちゃうんだけど。
かわいそうなのはアンバーで、番組のメンバーから嫌われていて、トレイシーよりむしろこっちの方が悲惨ないじめにあっているように見える。
こんなに可愛いのに。

トレイシーの両親役が凄い。
ジョン・トラヴォルタとクリストファー・ウォーケン。
トラボルタの方がママ。
トラボルタはともかくクリストファー・ウォーケンまで歌って踊っている!
でもそういえばスパイクジョーンズが撮ったFatboy Slimの「Weapon Of Choice」で一見奇妙だけど長年踊っている人のような見事なダンスを披露していたっけ。
と思ってちょっと調べてみたらクリストファー・ウォーケンは「幼い頃からダンサーとして舞台を経験。16歳の時、エリア・カザン監督の舞台でブロード・ウェイにデビュー」という経歴があるらしい。知らなかった。
多才だなぁ。
むぅ。それにしてもトレイシー役の新人ニッキー・ブロンスキーはトラボルタに似ている。

トレーシーのサクセスストーリーなんだけどそのトレーシーが非凡なダンスと歌の才能を見せ付けるシーンがあまりに少ない気がする。
そこを存分に見せないと番組のメンバになれたり人気の出た理由がお情けや物珍しさってことになっちゃうじゃん。

トレーシーの親友ペニー(アマンダ・バインズ)はいつもチュッパチャップスみたいな飴を舐めている。
目を見開いて驚く表情を「可愛い表情」として多用するんだけど、最近よくこの表情を見るなと思ったらソフトバンクのCMでキャメロンディアスがやっていたな。
流行ってんのか?というかアメリカ人がよくやりそうな表情ではある。

ハイテンションな音楽で楽しいことは楽しいしカメラワークも音楽のテンポに合わせて巧みなつなぎて面白いんだけど、さすがに少し疲れる。

2008年4月20日日曜日

映画『逃げ去る恋』

1978年 監督:フランソワ・トリュフォー
BS2 録画


逃げ去る恋〔フランソワ・トリュフォー監督傑作選4〕

あれ、回想シーンで『大人は判ってくれない』や『アントワーヌとコレット』が出てくるのだけど、見たことない回想シーンがある。
いくつか飛ばしているっぽい。
おお、『夜霧の恋人たち』と『家庭』が飛んでる。
『逃げ去る恋』は最後じゃん。まあいいやと思って見続ける。もう引き込まれちゃっているし。

ドワネルが恋人といちゃついている。
そしてこの恋人とは別に妻と息子までいるらしい。
と思ったらこの妻とは協議離婚の最中だった。
なんか飛ばした間にいろいろドラマがあったっぽい。
恋人も妻もいい女なのね。
そこに加えて偶然今や弁護士となったコレットと再会する。
3人の女。
でも逃げ去る恋だよ。3人の女の心はドワネルに向かなくなっている。
でもまあ一人とはよりをもどしてハッピーエンドだけど。

なんか今まで見た2本のドワネルものと感じが違う。
なんだろうと思うとドワネルが実によく喋るのね。
「いつも自分本位でちっとも変わっていないわ」「二時間も自分の話ばかりして」と言われる始末。
表情に暗い影を落とす少年、青年は大人になってちょっと変人のよく喋る男になった。
駄目な主人公だがよく喋ってかつ美女によくもてる、ってウディアレンじゃん。
設定が似ていても作品は全然違うけど。

どうも今までのドワネルものの集大成のようでこれはやっぱり順番に見ておけばよかったかなと少し後悔。
コレットと元妻が初めて会ってベンチで話すシーンがあるのだけど、過去の作品でそれぞれヒロインを務めた二人が会うっていうシチュエーションとかもっと面白かったはず。
二人は会ってお互い敵意を見せるわけでもなく。だって二人にとってドワネルはもう過去の人だから。
過去の人なんだけど「嫌い」というよりなんだか二人の会話にはドワネルに対する母親のような温かい眼差しが含まれているのね。
愛されているというか悲しいというか。
ちなみに『大人は判ってくれない』に出ていたドワネルの母親の恋人なんていうのも出てくる。

映画『アントワーヌとコレット』

1962年 監督:フランソワ・トリュフォー
BS2 録画


アントワーヌとコレット・夜霧の恋人たち〔フランソワ・トリュフォー監督傑作選2〕

2年くらい前にアントワーヌ・ドワネルものをいくつか録画していて、全部見てやろうと思ってまずはこれ。
『二十歳の恋』という5カ国の監督が撮ったオムニバス映画の一編らしい。
トリュフォーのものだけBS2で流すってことは他のは面白くなかったのかなと思って調べてみると、アンジェイ・ワイダも一編撮っているらしい。
そしてなぜか日本からは石原慎太郎。
なんだろう。経緯は知らないが『狂った果実』の原作脚本家として評価されたのかなぁ?

『大人は判ってくれない』のドワネル君が17歳に。
今じゃレコード工場でせっせと働く一人の社会人。
ある日コンサート会場で美しいコレットを発見する。
ベルリオーズの幻想交響曲そっちのけで後ろの席からちらっちらコレットを見つめるドワネル。
その後何度かすれ違った後、ドワネルはやっとコレットと話をすることができ、二人は友達になる。
本やCDを貸してあげたりしているうちにコレットの両親にいたく気に入られて夕食に度々招かれるようになる。
しかし、家族と親密になっても当のコレットはというと少しも進展せず。キスもさせてくれない。
焦るドワネル。

冒頭から遊び心が面白い。
ラジオの歌声から始まり、クラシック、そのクラシックはタイムカードの現実的なチーンという音で一瞬でかきけされ、ロッカールームではタイムカードの音を使った電子音楽みたいな音、それもロッカーを閉めたとたんにかき消されて続いてシャンソン、と目まぐるしいのに楽しい。
そんな軽快な感じでドワネルの初々しい恋が描かれていき、ラストは同時にふられたような3人の後姿が少しおかしげな哀愁を漂わす。

映画『あこがれ』

1958年 監督:フランソワ・トリュフォー
BS2 録画


あこがれ・大人は判ってくれない〔フランソワ・トリュフォー監督傑作選1〕

短編って怖いな。映画作家の力量がもろに出るし。
トリュフォーが『大人は判ってくれない』で長編デビューする前に撮った26分の短編。

小学校高学年くらいの少年達が若い女性を遠くから追いかける。
若い女性ベルナデッドは美しく、そして肉感的だった。
自転車で小路を爽やかに駆け抜ける彼女のスカートはひらひらと躍り上がり、肉感的な脚が惜しげもなく露になる。
思春期に入りかけの少年達のめざめ。
少年達はベルナデッドを追いかけ、ベルナデッドとその彼氏とのデートを遠くからひやかす。
ベルナデッドは少年達のあこがれであり、恋人であり、憎しみの対象でもあった。

エロティックで爽やかで。そして遊び心が楽しい短編。
ちなみにベルナデッドの恋人役にジェラール・ブラン。

2008年4月13日日曜日

映画『クワイエットルームにようこそ』

2007年 監督:松尾スズキ
at ギンレイホール




これ書いてるの一週間後なんだけど、もう蒼井優しか思い出せないな。
剥き出しのナイフのような危険な雰囲気を身に纏う蒼井優。
もう絶対こいつを怒らせちゃまずいって雰囲気。
でもラストの方ですーっと纏っていたものが剥がれ落ちて怯えた小動物みたいになる時がある。
女優は魅力的か魅力的でないかの二種類しかいなくて蒼井優は間違いなく魅力的。

映画『めがね』

2007年 監督:荻上直子
at ギンレイホール




家を出たときにたばこを買ったのだけど、ギンレイで席を確保したあとに吸おうを思ったらないんだよね。
どっかで落としたかな。
もう1時間以上吸ってないのにこっからさらに4時間吸えないのか。
確か前回ギンレイ来たときはたばこ買い忘れて4時間我慢したよな。


小林聡美主演。もたいまさこに市川実日子に光石研に加瀬亮。
ストーリーはあるけど特になくて、というのも「たそがれようよ」「まったりしようよ」というのがテーマ?らしいので人物の背景は特に描かれず、想像してね、って感じだから。
ああ、つらい。
特に絵が面白いわけでもないし。
とにかく思ったのは役者さんはのどかな南の島でまったりしたら仕事になって羨ましいな、と。
ああ、たばこ吸いたい。

2008年4月6日日曜日

映画『終電車』

1980年 監督:フランソワ・トリュフォー
BS2 録画


終電車〔フランソワ・トリュフォー監督傑作選6〕

ドイツ占領下のパリ。
女優で座長でモンマルトル劇場の支配人のマリオン(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、新作『消えた女』の上演に向けて忙しい日々を過ごしていた。
マリオンには夫ルカがいた。ルカは高名な演出家でモンマルトル劇場の支配人だったが、ユダヤ人であったために国外に逃亡している。
と思わせておいてルカは実は劇場の地下室に潜んでいたのだった。
そのことを知っているのはマリオンだけ。
マリオンは毎日ホテルに帰るとみせかけて、地下室のルカを訪問していた。

ナチス、ユダヤ、ときて戦争物かと思いきや、メロドラマ。いや、メロドラマじゃなくてカトリーヌ・ドヌーヴ。
そう、カトリーヌ・ドヌーヴなんだよ。
ストーリーも演出も全てがカトリーヌ・ドヌーヴという一人の女優のために用意されたと思われる映画、だからカトリーヌ・ドヌーヴ。

冒頭、街頭で男がある女を熱心に口説いている。
男は怪奇劇の役者ベルナール(ジェラール・ドパルデュー)でこの話の中心人物。
でも女のほうはただの脇役。
メロドラマの中心になるのはベルナールとカトリーヌ・ドヌーヴ演じるマリオンとその夫のルカの3人だが、ベルナールとマリオンの出会いには恋愛の兆しすら見えない。
ベルナールとマリオンはモンマルトル劇場の支配人と新しい劇に出演する男役が仕事として出会う、というただそれだけの関係しか匂わせない出会い。
むしろ、冒頭の口説いていた女性が実はモンマルトル劇場で美術を担当する女性で、モンマルトル劇場と契約したベルナールと偶然にも再会するというシチュエーションの方が恋の話の予感がする。
ベルナールはこの女性を口説き落とすことに夢中になっているし。
ベルナールとマリオンの間にあった感情は後半ではっきりと明かされるまで気づかない。
新作劇の初演成功で思わずマリオンがベルナールにキスした瞬間から、あれっとは思うのだけど。
明かされればそういえばマリオンがベルナールを盗み見していたシーンや触れられることを拒否したシーンの意味がしっくりくる。
それにしてもこの強引とも言える展開がなんか感動的なのね。
マリオンは地下室の夫をユダヤ人狩りから守るために匿いつつ、夫の代わりに劇場の切り盛りもしていかなければいけないという状況でベルナールへの感情をおくびにも出さないでいる。
でもマリオンの夫ルカは劇場の地下で新作劇の稽古の音を聞いているだけなんだけど、それだけでマリオンの気持ちに気づいている。
マリオンがベルナールに想いを募らせ押し殺しているモンマルトル劇場の舞台の地下には夫がいる、というシチュエーションがもう面白いよね。
マリオンの感情が明かされる瞬間は夫ルカのピンチで盛り上がったシーンが山を越してふっと安堵した瞬間で、ふいに明かされる事実は息つく暇なく今までの展開を別領域に押し上げて別種の山場として押し寄せてくる。
こっからは怒涛の展開。
ラストの仕掛けは「やられた」と思うと同時に解き放たれたカトリーヌ・ドヌーヴの魅力にさらに「やられた」って感じになる。