2009年9月12日土曜日

映画『フロスト×ニクソン』

2008年 監督:ロン・ハワード
at ギンレイホール


フロスト×ニクソン [DVD]

ニクソンがウォーターゲート事件で辞任した3年後、英国人TV司会者デビッド・フロストはニクソンとの単独インタビューに成功する。
後に「伝説のインタビュー」として語り継がれるこのインタビューにこぎつけるまでの双方の思惑や苦難などの舞台裏からインタビューまでを描く。
インタビュー自体は実際にあったのものだけど、舞台裏のエピソードなどは結構脚色されている模様。

ジャーナリストでもないただのお茶の間の人気司会者が挑むのは海千山千の巨人ニクソン。
国民はニクソンからの謝罪の言葉を求めている。
「君が闘っているのは、超一流の策士だ」

フランク・ランジェラが演じるニクソンは本当に揺らがない。
普通なら窮地に陥る追求も言葉巧みにかわし、すり替え、気づいたら逆に喝采を浴びている。
もう偉人のオーラすら見える。
そんな絶対に落ちないと思われたニクソンが陥落する瞬間は思いのほかあっけない。
放心したような顔のニクソンが映ると、なにか恐怖を伴った違和感を感じる。
昔のCGが「あ、なんかCG処理される」と絶対わかるくらい映像の質が変わるのに似て、実際ニクソンの顔のむくみがCG処理でふくれあがって怪物の顔に変形するか爆発するんじゃないかと思ってどきどきする。
SF映画じゃないのでもちろんそんな結果にはならないのだけど、この気持ち悪い恐怖は何だろうと見ていると、それまで巨大に見えていた風格が全て崩れ落ちて、生の男の顔がいきなり表出したから戸惑ったのではないかと思う。
フランク・ランジェラの演技なのか映像のマジックなのか。
全ての装飾を剥ぎ取った人間の生の顔なんて現実世界でも映画でもそうお目にかかれるもんではない。

ストーリーの方だけど、討論で少しずつ鉄壁の牙城が崩されていくのかと思っていただけに反省の念の全く見えないニクソンの心変わり模様が唐突な印象を受ける。
最終決戦日の前夜の電話がニクソンの本当の心のうちを表す伏線になっていたのだとしても、やっぱり唐突であっけないんだな。
白熱の心理的応酬の時間も短いので勝利の喜びはいまいちだけど、まあ全体的にはかなり面白かった。

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