2015年8月9日日曜日

映画『おやすみなさいを言いたくて』

2013年 監督:エリック・ポッペ
製作国:ノルウェー/アイルランド/スウェーデン
at ギンレイホール




戦場カメラマンのレベッカ(ジュリエット・ビノシュ)は紛争地帯を飛び回る生活を続けている。
たまに帰る家には、優しくイケメンの夫と二人の娘が待っている。
一見幸せそうな家族だが、夫や娘たちは、レベッカがいつ命を落とすかということに常におびえており、精神的に疲れ果ててしまっている。
それを知ったレベッカは、もう紛争地帯には行かないで家族と暮らすことを決意するのだったが。
っていう話。

見ていればわかるけど、レベッカはかなりやばいやつだ。
自分は崇高な仕事をしているという自負に基づいて、理解しない家族に当り散らさないところが救われると思っていたけど、難民キャンプのシーンを見たらそんなのすっ飛ぶ。
娘の安全は守られていたのかもしれないが、母親として側にいないでどうすんだ。
がんがん踏み込んで写真をとりまくるレベッカも、たまたまどっかの軍が助けに来たからよかったものの、あのままだったら確実に殺されていたよね。
その後国連軍が介入してきたのは写真のおかげみたいな流れになっているけど、証拠として判別できる程度の遠くからの写真一枚で十分だし、写真なんか無くても報告だけでもいいよね。

人にカメラを向ける行為って昔からさんざん議論がなされていると思うけど、この映画を見ていると、人の悲しみとか苦しさに平和な国の人間が無遠慮に土足で踏み込んでいくような印象しか受けなかった。
撮られた写真が世界に公開されて自分たちの生活がいい方向に変わるかも、なんて撮られる側は一ミリも考えていないはず。
娘が発表会で、最初は躊躇したけどだんだん抵抗はなくなった。なぜなら彼らは撮られたがっていると感じたから。みたいなことを言っていた気がするけど、大きな勘違いだ。
彼らが怒らないのは生きるのが苦しくてそれどころじゃないから。紛争地帯で、世界に訴えたい、知ってほしい!と思ってカメラに納まる人がいったい何人いるんだろうか。

でも、まあなんだかんだいってもつまらなかったわけじゃなくて、なかなか面白かったんだけどね。
ジュリエット・ビノシュは家庭と仕事の狭間に立たされる葛藤やら狂ったような使命感とか自然に表現して見ごたえがある。
で、そのジュリエット・ビノシュより目立っているのが長女ステフ役のローリン・キャニー。
この子凄いわ。
ビーバーっぽい口元がキュートで、なにより目がきれい。
そのきれいな目が悲しみや不安やあきらめ等、さまざまな感情をまっすぐに訴えてくる。
これが映画デビューらしい。

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