2004年 監督:テリー・ジョージ
at ギンレイホール
1994年にルワンダで起こった約100万人にも及ぶ大虐殺を扱った映画。
ルワンダでは長年フツ族の大統領が支配していたが、ツチ族を中心としたRPFがウガンダ側から進行して内戦勃発。
ルワンダのハビャリマナ大統領はRPFと和平交渉を進めるがフツ族至上主義者達は反発。
1994年にハビャリマナ大統領の乗った飛行機が撃墜される。
犯人は分かっていないがフツ族至上主義者達はこれをRPFの仕業にすりかえる。
こうしてフツ族によるツチ族の大虐殺が始まる。
主人公は外国資本の高級ホテルで支配人になったポール・ルセサバギナという人物。
彼はフツ族だが妻はツチ族だった。
彼にとって家族を護りぬくことが何よりも大事なことになる。
初め家族にのみ目を向けていたが、数々の悲惨な虐殺を目の当たりにし、ポールの眼差しはツチ族全体へと発展していく。
ポールは逃げ延びてきたツチ族を次々にホテルへと招き入れる。
海外資本で国連の兵士もいるホテルに暴徒と化した民兵達は簡単に手を出せなかった。
しかし国連はルワンダを見捨てて去っていく。
これが1994年なんだろうかというくらい凄まじい。
コックローチ野郎といってナタで切り刻んで次々に殺していくんだから。
ホテルの外に一歩でも出れば民兵によってあっけなく虐殺される。
もうゾンビみたいだよ。
えさの周りをうろうろして襲う機会を今か今かと待ち構えているし、トラックで道を走ればどこからともなくわらわら集まってきて襲い掛かる。
でも決してゾンビ映画じゃなくて、襲ってくるのは紛れもなく人間だった。
ホテルに非難した人達はもちろん武器なんて持っていないから戦うすべなんてないのね。
襲われたら一たまりもない危うい砦。
ルワンダは貧困水準がサハラ以南でもっとも高い国の1つらしい。
人間の倫理水準はどれだけの教育を受けているかによるのだろうか。
差別は生活環境が苦しければ苦しいほど簡単に発生するのか。
ポールの妻の人物像が面白い。
虐殺の始まり、ポールの隣家でツチ族の庭師がフツ族に暴行を受ける。
家の門の隙間から覗くポール。
隠れていろといったのにのこのこポールの側に来て一緒に覗く妻。
庭師への暴行を見た妻は夫のポールに「助けてあげて」と言う。
この状況把握能力の無さは一体なんなんでしょう。
後にも、ホテルの人を見捨てることが出来ずに留まることを決意したポールに対して一瞬だが「私達を見捨てたわね!」と取り乱して責める。
と、なんかこれだけ抜き出して書くとひどく頭の悪い妻に見えちゃうな。そんなでもないんだけど。
紹介文に「ホテルマンとして培った話術と機転だけを頼りに、虐殺者たちを懐柔し、翻弄し、そして時には脅しながら、1200人もの命を守り抜いた」と書いてある。
「話術と機転」と言われると口が達者で軽快な感じがするけど、本当に生きるか死ぬかのぎりぎりのところで行われる駆け引きなのね。
上手く相手を言いくるめたり乗せたりして、どうだと言わんばかりの得意気な風でもなく、一つ間違えばその場で自分と自分だけじゃなくてホテルの避難民の命もなくなる綱渡り。
緊迫感があります。
・・・なんだけど公式ページでポール・ルセサバギナご本人の顔を見たら実際はもっともっと生きるために必死だったんだろうなと思ってきて、映画がちょっぴり嘘くさくなってしまった。
エンターテインメントとしてもよく出来ているゆえに。
ポール役にドン・チードル。
妻にソフィー・オコネドー。
他ニック・ノルティやホアキン・フェニックス。