2007年3月11日日曜日

映画『ピアニストを撃て』

1960年 監督:フランソワ・トリュフォー
BS2 録画


ピアニストを撃て〔フランソワ・トリュフォー監督傑作選5〕

トリュフォーの長編2作目。
劇中に何度も流れ、そして冒頭とラストを飾って違った印象を与えてくれるあのピアノ曲は最高だな。
うきうきするように軽快なんだけどそこはかとなく哀愁も漂って。
深夜の町中で車に追われて逃げる男が登場する。
おお、なんかB級っぽい。
脇道にそれたところで男は電柱にぶつかって倒れてしまう。
追いつかれちゃうじゃん。
と、一人の男が近寄ってきて、倒れた男の頬を叩いて起す。
ああ、捕まったと思えば起してくれた男はただの通りすがりの紳士で、逃げていた男はこの初めて会った紳士とのんびり歩きながら結婚と女性について話し出す。
紳士と別れた後、男はまた走って逃げ出す。
なんでしょう、この脈略の無さというか必然性の無さは。
この後も様々な形で現れる逸脱「逸らし」が軽妙でそして最高に洒脱。笑えるし。

主役のシャルリという人物が面白い。
元有名なピアニストだが、今は場末のカフェでピアノを弾いている。
内気でうぶかと思いきや、親しくなった女性に対してはなんだか強気。
思いに反した行動を選択してしまうことでいつも大事なものを失っていく。
世間を遠ざけ、人を遠ざけ、暗い影と深い孤独に包まれているのだけど、それは過去の傷からじゃなくて、この人の持って生まれた性質っぽい。
過去の傷はこの性質をより深くさせるはずだが、あまりに繊細すぎて崩壊を避けるためか、どこか超越したところがある。
この超越は上辺だけ客観的に見れば薄情。
しかしその実は果てしない孤独。
全てが流されるまま過ぎていき、裏社会にも否応無く巻き込まれるだけで何の解決のアクションも起さない。
流されて大事なものを失ってその傷を抱えきることもできずにただピアノを弾いていく。

主演シャルル・アズナヴール。
軽妙な鼻歌を聞かせてくれる。

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