2007年4月28日土曜日

映画『ぼくの伯父さん』

1958年 監督:ジャック・タチ
BS2 録画


ぼくの伯父さん

超モダンな家からでっぷり肥えた小おやじが出てくる。
その佇まいや動きが外国の漫画のキャラクタとしてそのまま出てきそうで笑える。
この新築で自慢のモダン邸宅に住むのはプラスチック会社社長のアルペル一家。
同じく肥えた妻はそれが最高の生甲斐であるかのように甲斐甲斐しく家族の世話をし、自慢の邸宅の手入れを怠らない。
そして一人息子のジェラールはどこか無機質なこのモダン邸宅が気に入らない。
金持ちの息子でありながらジェラールは下町の悪がきどもとつるんでいたずらばかりする毎日。
洋服着せられた飼い犬もまた、こっそり家を抜け出しては近所の野良犬と一緒に残飯をあさったりして戯れるのだった。
ジェラールには伯父さんのユロ氏がいる。
ジェラールは両親よりもこの無職で気ままなユロが大好きだった。

最初の方誰も喋らないから無声映画風に最後までいくのかと思ったら、台詞がないわけではない。でもほとんど無いに等しいけど。
トーキー時代の無声喜劇映画といった感じ。
まるで四コマ漫画のようなフリとオチが繰り返される。
誇張しすぎない適度な擬音は見ていて楽しいし、流れる音楽は軽快だし、ギャグや構成に何気なく風刺がきいていたり、何より色使いや建造物、物の配置や動きのデフォルメ具合等々全てハイセンス。
あの超モダンな邸宅のセンスは一体どうよ。
悪趣味でありながら魚のオブジェの噴水や目玉のようになる丸窓がかもしだす愛嬌。
全くもって無駄に蛇行する門から玄関までの道。
庭に敷き詰められる小石はブロックごとに白や青やピンクに緑と色分けされて実に鮮やか。
こんな悪趣味かつ素敵なセンスの邸宅がフル活用されてギャグが展開するんだからそりゃ面白いさ。
建物で言えばユロの住むアパートも凄い。
一体何回増築したのかというくらいのつぎはぎ。
屋上のユロの部屋に行くまで建物間や手前と奥をいったりきたり。
のんびりしてるなぁ。つぎはぎだらけのくせに最高にかっこいい。

図式として新し物好きの上流階級と昔ながらの下町庶民階級の二つがあるのだけど、別にどちらがどうとか言ってる訳ではない。
二つの異質なものは同じフィールド上に並べられ、それぞれの生活の中からギャグが紡ぎだされていく。
どちらも楽しいじゃない。
ジャック・タチの視点は大らかっていうかスケールがでかいっていうか。

それにしても隣家のおばさんは凄いな。ファッションもさることながら、なによりよくこんな凄い女優を見つけたなっていう。

2007年4月21日土曜日

映画『クレージー作戦 くたばれ!無責任』

1963年 監督:坪島孝
BS2 録画


クレージー作戦 くたばれ ! 無責任

クレージーキャッツ総出演。
といってもメインは植木等とハナ肇、谷啓の三人。
犬塚弘が少し見せ場があるけど、安田伸と石橋エータローと桜井センリにいたってはちょろっと映ってなんか喋っているいう程度の扱い。

ハッスルハッスルハッスルホイ!っていって興奮剤のようなものが入ったハッスルコーラを飲んでハッスルした元無気力駄目社員の物語。
食品会社の社長を脅したり、銀行の頭取をさらったりとやってることは無茶苦茶なんだけど、骨子は結構真面目なサラリーマン喜劇。
ラストの箱根の宿で繰り広げられるキーマン総出演のドタバタぶりは喜劇の真骨頂でテンポもよくて楽しい。
方言で喋る社長を演じているのは一体どこのコメディアンかと思ったら、なんと上原謙。

2007年4月15日日曜日

映画『弓』

2005年 監督:キム・ギドク
at ギンレイホール


弓

なんですか、この美少女は。
船の上に少女(ハン・ヨルム)とじいさん(チョン・ソンファン)の二人が住んでいる。
じいさんがもう一艘の小型船で釣り客を連れてきて生計を立てる。
じいさんは客を連れてきたり買出ししたりで陸に上がっているようだが、少女はずっと船上にいる。
少女とじいさんに血の繋がりはない。
それどころかじいさんは少女が17才の誕生日を迎えた時に結婚する気でいる。
養父で養祖父で家族で男。
絶対的な信頼関係の二人だったが、少女は釣り客の若い男性に興味を持ち始め・・・

少女の笑みが凄い。
若い男の寝床にまるで子猫のようにするっともぐりこんだ時のあの目。
無垢な少女の愛らしい姿があの目によって一瞬で背筋も凍る妖艶さに変わる。
妖艶さっていうかただもう怖かった。
なんていうか、目が笑ってるんだよ。
「目が笑ってない」という時の目がどんな目なのかいまいち僕は分からないのだけど、「目が笑ってる」っていうのは(もしそんな言い方があるとすれば)この目のことに違いないと思う。
少女はいつも笑みを浮かべている。
じいさんをにらむ仕草ですら、結局は愛情を持った笑みの一種でしかない。
笑みが顔面にこびりつく、って前にもどっかで見たな、と考えていて思い出した。『サマリア』だ。
『サマリア』もキム・ギドクだったよな。
というか今調べたらこの『弓』のハン・ヨルムと『サマリア』のソ・ミンジョンって女優さんは同一人物じゃん。
この子はあと3年の内に健康損なわない程度に映画に出まくってその姿をフィルムに焼き付けておいた方がいい。もったいないから。

舞台は全て船の上で展開する。
小さな船なのになんでこんなに飽きないんだろうね。
年季の入った船体。釣り客用のちぐはぐなソファー。マストも船底も全てが表情を持って活用される。
そして弓。
円く揺れる船に縦横無尽に矢の直線が駆け抜ける。
時が止まったような微笑の前後を、刹那の速さで矢のくさびが打ち込まれる。
時間感覚の崩壊。
緩やかに揺れる時間に打ち込まれる瞬間の死の直線。
弓が何に使われるか。
少女にちょっかいを出すエロおやじどもを威嚇射撃。すげーあぶねえ。
弓占い。船腹に取り付けられたブランコを少女がゆっくりこぎ(水面に足を滑らせながら)、じいさんがブランコのある船腹に描かれた菩薩(?)に向かって3本矢を射る。ブランコには少女が乗っているので矢は少女すれすれを掠めて飛んで船腹に突き刺さる。矢の刺さった箇所で占うっぽい。
弓は楽器にも早代わり。
船と少女とじいさんの佇まいと表情、そしてそこに自由に動きを加える反則的な弓だけで作品になっているという映画。

最後の方、うわー、もっと楽に死ねるのに執念と執着から壮絶な死に方するなぁと思ったら、その後えっ!と肩透かしをくらうのだけど、本当のラストはもっとすごいことになる。
少女の膜を破るのはじいさんか、若い青年か、それとも別の何かか。
「あなたの汚い欲望のために」と非難されるが、じいさんに性の欲望はあったのか。
少女の体を洗うじいさんにいやらしさは無い。
ただ、少女と死ぬまで一緒にいたかっただけなのじゃないか。
若い少女をつなぎ止めるにはもはや結婚するだけでは足りない。
命を代価として魂で契る。
そして一体となった今、少女を囲っていた船は不要となる。
・・・ひとつ気になるのは船が少女を追いかけるように動いて、すぐ力尽きて悲しく沈んでいくように見えたこと。
この船がじいさんの姿そのものに見えてしょうがない。
使えない肉体を捨ててまで少女と契る一瞬間だけに強烈な執念を燃やした結果、そこにいる意味を失った少女は去っていってしまったということ?
まあいいや。
成層圏まで飛んでいたのですかというくらい忘れた頃に矢がズドンと突き刺さって第二の膣が現出する瞬間の官能と戦慄があればいい。

ちなみにじいさんと少女は言葉を発しない。
弓占いの時に少女もじいさんも耳打ちで占い結果を話したりするから喋れないわけではないようだが、一切喋らない。
小さい声しか出せないのか、それとも本当は普通に喋れるのか。(じいさんはともかく少女は普通に喋れそうなんだけど)
喋れないなら喋れない、でいいはずなのに、喋れるかもしれない、と曖昧な設定を加える。
こういう設定の曖昧さを意図してやっているのかは知らない。
じいさんに一体感ともいえる信頼を寄せる少女が、声を出せないじいさんと一緒に暮らしているうちに同じ症状に自然になったのかもしれないし、じいさんが少女を独り占めするために喋ることを禁止したのかもしれない。
とにかく二人が「喋らない」という事実と結果だけがあり、そしてその「喋らない」二人というのが恐ろしく映像にはまっている。
明示されない「喋らない」に至る過程は、映像の細部に不安定な揺らぎを加えて深みを増す。
この監督は瞬間瞬間の撮りたいイメージを撮るのが第一で、ストーリーや設定はイメージを膨らませたりつないだり、見えない奥行きを与えたりするための付属物のよう。
だからストーリーや設定は最低限の説明しかない。
また、あくまでイメージなので、この監督は細部にはこだわらない。
じいさんが弓を楽器として弾くとき、あまりにも音と絃の動きが合ってなさ過ぎて、明らかにじいさんが弾いてないのが分かる。
でもじいさんがこの場面でこういうポーズでこんな音を奏でたんだ!っていうイメージが大事で本当に弾いてる弾いてないなんてことはどうでもいい。っていう考え。
映画によっては気になるのだけど、この人の映画って一瞬と永遠のイメージが相克したスケールのでかい映像を作るから気になんないんだよな。

映画『トンマッコルへようこそ』

2005年 監督:パク・クァンヒョン
at ギンレイホール


トンマッコルへようこそ

山水画のような絵をバックに静かにタイトルロールが流れた後、突然カラーの人間の顔、しかもアホ面した少女の顔のアップが映されるからびびる。
インパクトがあるというか強引というか。

時代は朝鮮戦争の1950年代。
朝鮮半島の山奥にトンマッコルという村があった。
で、ここに連合軍のアメリカ兵士一人と韓国軍二人と人民軍三人が迷い込む。
トンマッコルの村人は戦争がおきていることを知らない。
しかも銃も手榴弾も見たことがない。
でも中国や日本など外国の存在は知っているらしい。
そんな村に迷い込んだ敵対する兵士達は次第にお互いを認めていく。

ファンタジーなのか戦争物なのか。
殺し合いの戦争時代にファンタジーを織り交ぜる。
戦闘機からの爆撃は本物みたいに見えたな。降下する爆弾と爆発の両方かどちらかはCGのはずだけど。

2007年4月13日金曜日

映画『いつも上天気』

1955年 監督:ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン
BS2 録画


スタンリー・ドーネンとアイデアマンジーン・ケリーの共同監督。
基本コメディだが、友情と人生を扱ったドラマになっている。

タップシーンはジーン・ケリーなのでそりゃあまあいろいろやってくれる。
面白かったのは、というか一番有名なシーンのローラースケート履きながらのタップは凄かった。
ジーン・ケリーが普通にローラースケート上手い。
フィギュアとタップを合わせた様なダンスが街中で所狭しと繰り広げられる。
ローラースケートの駆動性が人が集まる狭い空間で少しも制限されないところが興奮になる。
あと、なによりシド・チャリシー。
タップがワンシーンしかないのだけど、それがまた秀逸。
数十人の男性を従えながらのタップダンスがあまりに華麗でかっこよすぎて完全に「KO」。
しかし綺麗でエロティックな脚してるなぁ。

有名な振付師のマイケル・キッドが役者として出ている。

2007年4月8日日曜日

NHK歌謡コンサート:思い立ったら書くべし

家にはHDDレコーダーが2台あって、テレビの録画は新しい方のHDDレコーダーで撮るのだけど、撮りたいのが重なるとしょうがないから古い方のHDDレコーダーも活用する。
そういうわけで古い方に録画していた演歌番組を整理。
2006年1月31日のNHK歌謡コンサート。
司会がまだ阿部渉アナウンサー。
輝け期待の新星たちと題して新人歌手特集の回だった。
そういえば小田切アナになってからこの新人歌手特集は一切なくなったな。

まずは新人歌手がそれぞれ思い入れのある歌をワンコーラス歌う。
一人目丘みどりで「河内おとこ節」。
声は安定してよく出ているが歌(歌い方)自体が少し不安定。
二人目松原健之「夕焼け雲」。
この人どっかで見たことあるぞ。
確かなんだかずいぶんエピソードのある曲を新人歌手がまかされて歌っていて「えっ」と思った記憶があるようなないような。
三人目はずっとちらちら目に入って気になっていたバイオリン持った女の人と、ついでにその隣にいた女の人が一緒に前に出てくる。
バイオリンとボーカルのユニットらしい。
つきよみという名のユニットで「木綿のハンカチーフ」。
バイオリンのインパクトに負けないくらいのボーカリストなのだろうか。
わくわくして見ていると、歌いだしは声がなんだか馬鹿っぽくて下手くそに聞こえる。
でも暫く聴いていると結論としてはまあまあ上手い。
少し独特な歌いまわしするから下手なの?と思ってしまうが歌唱力は十分あって、ただ歌いまわしが若いゆえか味になりきれていないだけっぽい。
四人目は長谷川真吾で「よろしく哀愁」。
人気のないジャニーズの若い奴風の顔。
振り付けがのりのり。
五人目は田中アキラで「君恋し」。
この人若手?
30は間違いなく超えてるだろ。
歌い方もベテランの風格まであるし。
六人目は沢田美紀で「涙そうそう」。
涼やかないい声だけどインパクトはそんなにない。

っていうのはあくまで第一印象でもちろんたったのワンコーラスでそんなに分かるわけもなく、これから一人ずつ持ち歌をじっくり歌うのでそれを聴いたら印象がまたがらっと変わるのがこの新人特集の面白いところ。

丘みどり
子供の頃から民謡をやっているらしい。
一節披露された民謡は上手い。
その民謡聞いた後だとその後に歌った演歌もなんだか上手く聞こえてくる。

長谷川真吾
歌と同じくらいダンスが好き、らしい。
得意のダンスを交えて歌うのは80年代アイドル風の歌謡曲。
それにしてもこの安っぽいアイドル感は一体なんなんだろう。
かっこいいのかかっこよくないのかよく分からない顔立ち。
そもそもいかにもアイドルになりたそうなオーラを出していながらなんでジャニーズに入らなかったの?

つきよみ
目立つから、という理由でボーカル志望の子が音大目指していた友達のバイオリン弾きを誘ったのかと思っていたけど、二人はオーディションで出会ったらしい。
バイオリン弾きとボーカルが出会うオーディションって一体なんのオーディションだったんでしょう。
ボーカルの方は少し前のJ-POPでよくいた歌唱力のある女の子といった感じ。
バイオリンはよく分からない。いなくてもよくない?

松原健之
思い出した。五木寛之の秘蔵っ子だ。
男のくせに透明感のある声で爽やかに上手い。
しっかしまあ凄い「いい人」って感じの顔しているな。
それに凄い運動音痴そう。
いいとこのぼっちゃんなんだろうか。
ほっぺがまんまるでしかもつやつやしている。

沢田美紀
のど自慢出身だが一度夢をあきらめ帰郷。それでまた再挑戦でデビューしたらしい。
こういう人は強いしいいねぇ。

田中アキラ
やっぱり30過ぎているらしい。
作曲家のもとで修行を13年もやっていたとのこと。
内弟子、っていうの?
氷川きよしのように3年程度の修行期間でデビューする人もいれば、和田青児や北山たけしや田中アキラみたいに長い期間を経てやっとデビューする人もいる。
違いがわからん。

映画『真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章』

2006年 監督:今村隆寛
TV 録画


真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章 ディレクターズ版 初回限定版

うーん。
何も迫力のない声だったから初めラオウの部下の雑魚が喋っているのかと思ったら、そのつまらない声はラオウのものだった。
ラオウの声:宇梶剛士。
ラオウのあの体躯から出ているとはとても思えない声。
ケンシロウの声は阿部寛だし。
まあ、それは我慢するとしても、そもそも絵柄がなんか馴染めない。
ケンシロウの腕太すぎない?
体とバランスが全然取れてない。
それとラオウの体がでかいのはいいのだが、ラオウがケンシロウを持ち上げた時ケンシロウが赤ん坊並の大きさってどうなのよ。
ラオウのでかさをそんなに過剰表現することに意味があるシーンでもないでしょう。
ラオウには女がいるし、最強の覇道を突き進んだラオウが実は愛と情けに満ちた人物でしたっていうへなちょこ意味づけをこれでもかと押し付けてくるし。

結論としては
主役陣の声優が悪い。
作画が悪い。
原作以外で付け加えられたストーリーが悪い。
でも、途中で挿入されたyouはshock!だけは感激。

ちなみに昨日BS2で始まった『精霊の守り人』っていうアニメはそこらのアニメ映画より数倍クオリティ高くて面白かったな。

2007年4月3日火曜日

映画『東京キッド』

1950年 監督:斎藤寅次郎
BS2 録画


東京キッド

美空ひばり第2作目。
喜劇映画、なんだけど実は容赦なく人が死ぬ。
でも立ち直りは早い。
薄情というより戦後のバイタリティ溢れる喜劇。

美空ひばりが可愛くないのだけど愛らしい。
そして、少女なのに信じられないくらい歌が上手い。
声がもう子供のそれじゃなくて熟練の歌い手の声になっている。
エンターテイナーとしても最高で、2回目の「悲しき口笛」なんか歌いながら廊下にひょこっと出てきてぱっとポーズ(振り付け)を取ったりして、思わず戦慄が走る。

脇を固める喜劇役者がまた豪華で川田晴久、堺駿二、花菱アチャコに榎本健一。
濃い。
金に目がなかったり身寄りのない子供を平気で捨てたり等、結構俗悪なんだけど全てはコメディに包まれて笑いとなる。

2007年4月1日日曜日

映画『歌麿をめぐる五人の女』

1946年 監督:溝口健二
BS2 録画


歌麿をめぐる五人の女

流行絵師歌麿に想いをよせる五人の女かと思いきや、歌麿はあくまで傍観者なのね。
歌麿をめぐると言えばめぐるではあるのだけど、歌麿をめぐって五人の女が取り合うとかじゃない。
歌麿と関わり合いのある五人の女はそれぞれ歌麿じゃない別の男に恋する。
前半、間違いなく物語の中心は歌麿の粋なんだけども、気づいたら五人の女、特に田中絹代が見せ場をかっさらっていく。
男がしっかし馬鹿で弱いね~。

縦の構図の手前や奥で絶えずいろんなものが動くからその流動性が面白い。うちわだったり蝋燭の火だったり通行人だったり。
縦の構図が生み出す想像だけでは満たしきれない「見たい」という横の広がりへの渇望は、程よく(というか最低限)挿入される移動撮影やパンが自然に満たしてくれる。

さて、この映画を見た目的は溝口だからというより五人の女の中の一人に川崎弘子がいるからだったのだけど、どの人だったか分からず。
調べてみると、五人の中で一番綺麗じゃないと思ったお蘭が川崎弘子だった。
ん~ん。確かに『朗かに歩め』や『淑女と髭』の時からオカメ顔でそんなに綺麗じゃなかったが、ふっくらして妙な愛くるしさがあったのだけどなぁ。
この映画1946年といっても『淑女と髭』が1931年だから15年も経っているのか。

げげ、川崎弘子の夫って邦楽に少し興味がある人なら名前くらい知っているあの福田蘭堂だったんだ。
しかも福田蘭堂のWikipediaによると結婚の理由が

映画撮影の為ロケ地である大島へ向かう途中の船上で女優川崎弘子をレイプして世間の指弾を浴びたことがある。しかし、松竹蒲田撮影所の所長城戸四郎に責任を迫られ、彼女と結婚することとなった。

ってやばくない?
あと、川崎弘子と結婚するために別れた前妻の子供はクレイジーキャッツの石橋エータローで、さらに福田蘭堂自身は青木繁の息子だった。
知らなかったことが多すぎて一気に知ったからびっくりです。