at ギンレイホール

うって変わってこれはここ数年で稀に見る傑作かもしれない。
ベルリンの壁崩壊前の旧東ドイツ。
国家保安省のヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)は、反体制の疑いのある劇作家ドライマン(セバスチャン・コッホ)を監視するように命じられる。
家のあらゆる箇所に盗聴器をしかけ、アパートの屋根裏で監視を開始。
ドライマンは舞台女優のクリスタ(マルティナ・ゲデック)と同棲している。
二人の生活の何から何までヴィースラー、国家に筒抜けだった。
しかし二人の愛と信頼に満ちた生活。そして自分が身を置くあまりに対照的で無機的な国家を感じて、監視を続けるヴィースラーの心が変化していく。
ヴィースラーを演じたウルリッヒ・ミューエが凄い。
まったく笑わず、表情を一切かえない鉄の男。
なのに心の微細な揺れや変化が痛いほど伝わってくる。
温もりを求めて初めてコールガール(おばさん)を呼び、「もう少しいてくれないか」と言ってみたり、ドライマンの部屋から盗んだブレヒトの本を感動と共にソファーで寝そべりながら読んだり。
ドライマンとクリスタ、美男美女のベストカップル。
この二人によって実は濃密な恋愛映画にもなっている。
二人は揺ぎ無い信頼で結ばれていたが、国家の絶望的な圧力を受けて精神が疲弊した末・・・
ドライマンを演じたセバスチャン・コッホは『ブラックブック』でムンツェを演じた人。
クリスタのマルティナ・ゲデックはもう覚えてないけど『悦楽晩餐会/または誰と寝るかという重要な問題』に出ていたらしい。
抑制された無駄のないカメラワークと演出に最後まで引き込まれ、ラストではその集大成として否応なしに涙を流せさせられる。
0 件のコメント:
コメントを投稿