2012年1月4日水曜日

映画『木洩れ日の家で』

2007年 監督:ドロタ・ケンジェジャフスカ
製作国:ポーランド
at ギンレイホール




モノクロの病院のドアの窓ガラスににょきっと現れる老婆の顔。
人生が刻みこまれたような深い皺が寡黙に美しい。
この老女の対応をする太った中年女医が横柄な態度な分醜く見えるため、一層この老女が引き立つ。
全編モノクロ作品ということであまり見る気がしなかったけど、この出だしを見る限り結構面白いんじゃないかと期待する。
中盤少し眠くなったけど、全体的には50年代前半辺りの佳作を観ている感じでなかなか面白かった。

ワルシャワ郊外の緑豊かな土地にひっそり佇む木造の古いお屋敷。
91歳になるアニェラ(ダヌタ・シャフラルスカ)はこのお屋敷で愛犬フィラデルフィアを話し相手に静かに暮らしていた。
アニェラは結婚して市街に住んでいる息子の家族と一緒にこの屋敷に住みたかったが、アニェラと違い息子はこの屋敷に何の執着も無かった。
隣人を双眼鏡で覗き見し、フィラデルフィアに話しかける毎日。
たまに息子が孫娘を連れて顔を見せに来るが、ぷくぷく太った孫娘はわがままで祖母に対する愛情のかけらも無い。
仕舞には信じていた息子が。。

冒頭の市街地のシーンで車のブレーキの音が鳴り響いたので、実はアニェラはこの時死んでいて、それに気付かず幽霊のまま生活している、というM・ナイト・シャマラン落ちなんじゃないか?ばればれだぜ、と途中まで信じていたけど、ちゃんと生きていたらしい。
始まって20分くらいはアニェラの事を皆無視している風だったので意図的にやっている気もするが、ただの孤独な老人という演出だったのかな。

登場人物はそれなりにいるけど、8割方アニェラとフィラデルフィアだけとなる。
アニェラを演じたダヌタ・シャフラルスカは1915年生まれで、世界現役最高齢の女優さんらしい。
ちょっとした表情の変化やさりげない仕草にこの役と本人の積み重ねてきた人生が詰まっているようで目が離せない。(途中うとうとしたけどね)
このダヌタ・シャフラルスカと対等に張り合っているのがフィラデルフィアで、本当どういう調教しているのだろう。
両者の演技合戦が見物になっている。
主演犬優賞をあげたいもんだ。

ラストの方のブランコのシーンはもっと感動シーンになるはずだと思うのに、変にカメラが動きすぎて気持ち悪かった。
それ以外に不満は特に無い。

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